インタビュー

北野武×西田敏行 現実が映画を凌駕しつつある世界に向けて

北野武×西田敏行 現実が映画を凌駕しつつある世界に向けて

インタビュー・テキスト
柴那典
撮影:タイコウクニヨシ 編集:山元翔一

想像力というものは、もう現実には敵わないんじゃないかって思うようになったんだよね。(北野)

—国のトップ同士のやりとりも、実はヤクザ同士が「バカヤロー!」とか「なんだコノヤロー!」と言い合っているのとそう変わらない、と。

西田:そうそう。まさに「アウトレイジ」ですよ(笑)。

北野:現実の事件も激しいことになってるよね。ちょっと前までは、漫画や映画はかなり想像力豊かに時代の先端をいっているものだと思ったけど、9.11(アメリカ同時多発テロ事件)でツインタワーにジャンボジェットがドンとぶつかった瞬間に逆転されてしまったというか。

北野武

北野:9.11の前は、ああいうことを映画とかアニメでやったら「いくらなんでも、こんな馬鹿なテロはないだろう」なんて言われてたと思うんだよね。「貿易センタービルが潰れて何千人も死ぬなんて、あり得る?」って。でも現実のほうがすごかった。

地震や津波もあったし、最近は公開で人の首を刎ねたりもしてる。想像力というものは、もう現実には敵わないんじゃないかって思うようになったんだよね。いくら新しいものを想像しても「あるよ、それ」って言われちゃうような気がする。

西田:「事実は小説より奇なり」ですね。

西田敏行

—そういった時代であるがゆえに、より想像の世界、表現の世界に託される役割もあるんじゃないかと思いますが、そのあたりはどうでしょうか。

北野:だから、『最終章』では、たとえば「ここで裏切った」というのは台詞で言わないようにしてる。ただ黙ってて、なんで急に撃ったかわからなくて驚いたりするような作りにしてるんだよね。中田が西野に「こういうことを言われたけど、どうします?」なんて言うような場面はない。ただ、いろんな葛藤がある。

—そういった内心の逡巡や葛藤の部分が重要になってきている。

北野:映画を観た客が「そうか、裏でこんなことを言ったんだ」って考えてくれればいいね。

西田:あと、この映画のなかには不思議と忖度もありますしね。

『アウトレイジ 最終章』ポスタービジュアル ©2017『アウトレイジ 最終章』製作委員会
『アウトレイジ 最終章』ポスタービジュアル ©2017『アウトレイジ 最終章』製作委員会(サイトを見る

『ノーベル賞』とってソープランドに行くとか、最高だと思うよ。そういうことをやりたくてしょうがない。(北野)

—ここ最近の政治状況を見ていると、権力というものの持つパワーや存在がとても大きくなっていると感じています。ざっくりとした質問ですが、お二人は権力というものをどんなふうに捉えてらっしゃいますか。

西田:権力というのは、持つ人の人柄、人格によって変わりますよね。よくも使われるし、イッちゃってるやつが使えばとんでもないことになる。そのあたりは本当に難しいですね。あとは、権力というものを長く持ちすぎるのはどうかなって思います。やっぱり権力者が絶えず循環していくことは必要だと思う。

北野:俺は、権力があることは認めるけれど、そこに対して悪口を言うことも認めてほしいっていうのはあるね。たとえば圧倒的な権力者がいたら、あまり露骨にそういうことを言うと罰せられる可能性があるじゃない。だけど、お笑い芸人だったら「馬鹿なこと言ってるよ、このオヤジ」って総理大臣に言っても大丈夫だという。

北野武

—権力に対する風刺は、笑いとは切り離せないものですよね。

北野:そうだね。あと、自分自身を笑いにするために自分が偉くならなきゃいけない、というのもあるのよ。ホームレスがバナナふんずけてスベっても笑えなくて、偉い人がスベって転ばなきゃダメ。そう考えると、俺は笑いのために偉くならなきゃいけないんだよね。そうやって偉くなって、立ち小便とか万引きで捕まりたいっていうのがある。

—映画監督として世界的な権威になって、そして万引きで捕まると(笑)。

北野:たとえば『ノーベル賞』とってソープランドに行くとか、最高だと思うよ。そういうことをやりたくてしょうがない。だから俺は「偉くなりたい」って平気で言うの。映画の賞もたくさんもらいたい。

西田:なるほど。面白い。

北野:芸能界で権力を持っちゃったら、とにかく自分でそれを壊しにかからないといけないんだ。だから、森繫さん(森繁久彌)が生きてるときは、よくケンカしたからね。「森繁、順番を守れ!」って。「人の葬式ばっか出やがって、お前が葬式に出されろ」って言ったら怒ってた(笑)。「人の棺桶ばっか担いでるから、足腰強くなっちゃうんだよ!」って言ったら、「なんだ、たけしコノヤロー!」って。

西田:楽しいねえ、そういう逆らい方(笑)。

北野:ああいう権力者がいるから、悪口が言えるんだよ。そういう人がいてほしい。

—監督自身、若手から茶々を入れられたり悪口を言われるのも歓迎だ、と。

北野:そう。だから、わざといびったり、わざと金借りに行ったりしてるね。そういうことばっかりしてる。

西田:ははははは!

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作品情報

『アウトレイジ 最終章』

2017年10月7日(土)から全国公開
監督・脚本・編集:北野武
音楽:鈴木慶一
ビートたけし
西田敏行
大森南朋
ピエール瀧
松重豊
大杉漣
塩見三省
白竜
名高達男
光石研
原田泰造
池内博之
津田寛治
金田時男
中村育二
岸部一徳
配給:ワーナー・ブラザース映画/オフィス北野

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プロフィール

北野武(きたの たけし)

初監督作の『その男、凶暴につき』(1989)以降、『3-4×10月』(1990)、『あの夏、いちばん静かな海。』(1991)、『ソナチネ』(1993)、『みんな~やってるか!』(1995)、『キッズ・リターン』(1996)と続けて作品を発表し、『HANA-BI』(1997)では第54回ベネチア国際映画祭金獅子賞受賞の他、国内外で多くの映画賞を受賞、評価を不動のものにした。その後、『菊次郎の夏』(1999)、日英合作の『BROTHER』(2001)、『Dolls』(2002)に続き、『座頭市』(2003)では自身初の時代劇に挑戦し、第60回ベネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞。芸術家としての自己を投影した三作『TAKESHIS'』(2005)、『監督・ばんざい』(2007)、『アキレスと亀』(2008)を発表。「全員悪人」のバイオレンスエンターテイメント『アウトレイジ』(2010)と続編の『アウトレイジ ビヨンド』(2012)が大ヒットを記録、シリーズ完結編『アウトレイジ 最終章』が10月7日より全国公開。

西田敏行(にしだ としゆき)

1947年11月4日生まれ。福島県郡山市出身。中学卒業後、上京、明大中野高校から明治大学進学。その後中退し、1970年、劇団青年座入団。同年「情痴」で初舞台。1971年、舞台「写楽考」初主演。以降、舞台、テレビ、映画など出演多数。2003年12月31日、劇団青年座退団。

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