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シュリスペイロフ、好きすぎる漫画『春と盆暗』の熊倉献とご対面

シュリスペイロフ、好きすぎる漫画『春と盆暗』の熊倉献とご対面

シュリスペイロフ『聞えた』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:豊島望 編集:矢島由佳子

札幌出身の4人組ロックバンド・シュリスペイロフの通算7枚目となるアルバム『聞えた』が、10月4日にリリースされた。日常と幻想が交錯する歌詞世界は今までの作品の延長線上にあるものだが、ボーカル・宮本英一の書く歌詞はこれまで以上に抽象的で、意味を考えるより先に瞬間のイメージが連なっていく。言葉がより「音楽的」になり、メロディーとの結びつきが強固になった本作は、彼らのひとつの到達点といえよう。

今回、宮本が対談相手に選んだのは、漫画家の熊倉献。今年1月に出版された彼女にとって初の単行本『春と盆暗』は、冴えない男子が不思議な魅力を持つ女子と出会う4編の恋愛譚。どこか社会に馴染めない人々を優しい視点で描いたその世界観は、宮本の歌詞ともどこか通じ合うものがある。

宮本も、今回が人生初のインタビュー取材となる熊倉も、お互い根っからの人見知りとあって、対談はぎこちなく始まった……。

……てっきり男性だと思っていたので、今ちょっと想定外で戸惑っています。(宮本)

—CINRA.NETで宮本さんの対談をやらせてもらうのは、これで3回目なのですが(1回目:シュリスペイロフ×前田司郎対談 / 2回目:シュリスペイロフ×真造圭伍対談)、今回の相手に熊倉さんを選んだのはどうしてだったのでしょう?

宮本:シュリスペイロフ(以下、シュリス)の最新作『聞えた』に入っている“水の中”という曲の歌詞を書いているときに、ちょうど熊倉さんの『春と盆暗』を購入したんです。1行目<タバコの煙追いかけて 星をみた 嘘つき>と、サビの<汚れている水の中で 溺れながらあの娘といた>だけしか書けていなかったタイミングで、短編『水中都市と中央線』に出てくる女の子が、金魚が水面に口を出して呼吸しているみたいに、上を向いてスーハー呼吸しているシーンが飛び込んできて。

そこから、その世界観が曲に入ってきて、自分でも想像していなかった方向へと広がっていったんです。それもあったし、作品全体としても好きだったから、ぜひ作者の方にお会いしたいなと。……ただ、てっきり男性だと思っていたので、今ちょっと想定外で戸惑っています(笑)。

熊倉:すみません、女です(笑)。

宮本:人見知りモードがいつもの倍くらいになっています……。

熊倉:私も人見知りで、今とても緊張しています。

宮本英一
宮本英一

熊倉献
熊倉献

—(笑)。宮本さんは、『春と盆暗』のどんなところに惹かれたのかを、もう少し教えてもらえますか?

宮本:なんか、不思議な余韻が残るというか、最近の漫画にはない雰囲気があって。女の子がちょっと不思議なんだけど、ありがちな不思議さとはちょっと違っていて、そこが面白いと思いました。

たとえば、この表紙の女の子(短編『月面と眼窩』に登場するサヤマさん)は、接客していてストレスが溜まってくると、頭のなかで道路標識を月に向かって投げる想像をするんですよ。そういう、読み手の予想をはるかに超えた外側に発想があるのが好きです。それに、どの話に登場する女の子もみんな可愛いですよね(笑)。

熊倉:男の人にそう言って貰えると嬉しいですね。

『春と盆暗』
『春と盆暗』(試し読みする

—こういう不思議な女の子を、熊倉さんはどんなふうに作り上げていくんですか?

熊倉:自分ではそんなに不思議とは思っていなくて……(笑)。第一話の『月面と眼窩』を書く前に、中年男性と女の子が主人公のSFを描いたんですけど、それを担当の編集者に渡したら、2人の関係性を気に入ってくれて。「主人公の男の子が、ちょっと変わった女の子と出会う、ボーイミーツガールの連作にしませんか?」って提案してもらったんです。それで、1話ずつ順番に考えていったという感じです。

—登場する女の子たちは、熊倉さんの理想の女の子像なのか、自分自身なのか、あるいはなにか他の作品からインスパイアされるのでしょうか?

熊倉:女の子だけでなく男の子もそうですけど、「実際にこういう子たちがどこかにいて、友達になれたらいいな」という感じで描いていますね。

—なるほど。設定やプロットには実体験も混じっていますか?

熊倉:混じっています。吉祥寺に、もう閉店してしまったけど「竹田製麺所」というお店がかつてあって、そこでレジを打ってたんです。『月面と眼窩』は、そこでの経験をもとにしました。サヤマさんみたいに、月面に向かって標識を投げたことはないですけど(笑)。お店の感じとか、ワケわからないお客さんが来たときの、「どうしよう……」っていう気持ちとかは反映させていますね。

—ワケわかんないお客さんに絡まれそうですよね……?(笑)

熊倉:なんか、70歳くらいのおじいさんにスカイツリーの写真を見せられて、「これなんだかわかる?」って聞かれたことがあります(笑)。「スカイツリー、ですよね?」って答えたら、「よくわかったねえ」って……あれはなんだったのか未だによくわからない……。

熊倉献

—(笑)。さっき宮本さんが「読み手の予想をはるかに超えた」とおっしゃってましたけど、主人公がサヤマさんにクリームパンを握らせるシーンなども、ものすごく唐突だし、なんでこんなこと思いつくんだろうと思いました。

熊倉:日頃から、ふとした瞬間に、変なものとか不思議なものに出会うと嬉しいんですよね。『水中都市と中央線』に登場する女の子は、出会い系で知り合った男性とカラオケボックスによく行くのですが、その話を描く参考に「出会い系」の掲示板を見ていたんです。そうしたら、「いないと思いますが、一緒にサイクリングしてくれる女性を探しています」っていう書き込みがあって。なんでこんな場所で、そんな人を探しているんだろうって不思議に思ったんです(笑)。そういう、不思議な経験を求めているのかもしれません。

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リリース情報

シュリスペイロフ『聞えた』
シュリスペイロフ
『聞えた』(CD)

2017年10月4日(水)発売
価格:2,500円(税込)
QECD-10005 / BUMP-069

1. きみのマンガ
2. わたしをみつけて
3. ななし
4. シェア
5. スクラップ
6. 水の中
7. 愛された日々
8. 退屈な夢
9. グリード
10. ガール

イベント情報

『シュリスペイロフ NEW ALBUM「聞えた」発売記念インストアイベント』

2017年10月9日(月・祝)
会場:大阪府 タワーレコード難波店 5Fイベントスペース

2017年10月21日(土)
会場:東京都 タワーレコード池袋店 6Fイベントスペース

2017年11月2日(木)
会場:北海道 タワーレコード札幌ピヴォ店 イベントスペース

『聞えたツアー』

2017年11月24日(金)
会場:愛知県 名古屋 CLUB ROCK'N'ROLL

2017年11月26日(日)
会場:大阪府 心斎橋 AtlantiQs

2017年12月16日(土)
会場:東京都 新宿 red cloth

2017年12月22日(金)
会場:北海道 札幌 COLONY

料金:各公演 前売2,700円 当日3,240円(共にドリンク別)

『Eggs×CINRA presents exPoP!!!!! volume102』

2017年10月26日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
MINT mate box
NIHA-C
シュリスペイロフ
羊文学
and more
料金:無料(2ドリンク別)

書籍情報

『春と盆暗』
『春と盆暗』

2017年1月23日(月)発売
著者:熊倉献
価格:637円(税込)
発行:講談社

プロフィール

シュリスペイロフ
シュリスペイロフ

宮本英一(Vo,Gt)、澁谷悠希(Gt)、野口寛喜(Ba)、ブチョー(Dr)。札幌出身のオルタナティブロックバンド。1999年結成。以降、5年間「ライブハウスが怖い」という理由でスタジオでの曲作りのみの活動を続ける。2004年に勇気を出しての初ライブ。2008年1stアルバムリリース。2013年より山中さわお(the pillows)が主宰する「DELICIOUS LABEL」へ移籍。東京に拠点を移し活動を始め、コンスタントにリリースを続ける。2017年10月4日、長年サポートメンバーだった澁谷(Gt)が正式加入後、初めてとなるアルバム作品『聞えた』をリリース。11月からは、名古屋を皮切りに、大阪、東京、札幌でバンド史上初のワンマンツアーを開催する。

熊倉献(くまくら こん)

アフタヌーン四季賞『2012年夏のコンテスト』で佳作受賞。2014年、『good!アフタヌーン』5号に読み切り『盤上兄弟』が掲載されデビュー。『春と盆暗』が初連載。

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