
ユアソン吉澤成友×松田岳二 カクバリズムらしさを担う絵の美学
吉澤成友『The Essential』- インタビュー・テキスト
- 黒田隆憲
- 撮影:鈴木渉 編集:山元翔一、川浦慧
YOUR SONG IS GOODのギタリストであるモーリスこと吉澤成友の初のイラストレーション集『The Essential』が刊行された。発行は安孫子真哉(ex.銀杏BOYZ)によるレーベル「KiliKiliVilla」、編集は「kit gallery」の主宰にしてCUBISMO GRAFICOのCHABEこと松田岳二。CDジャケットやロゴのデザイン、雑誌の挿絵などを手がけてきた、モーリスのイラストの数々が収められた本書は、眺めているだけで音楽が聴こえてくるよう。
今年で発足15周年を迎えた「カクバリズム」の第1弾アーティストであり、レーベルの象徴的存在でもあるYOUR SONG IS GOODのモーリスと、「渋谷系」という大きな流れのなかでマルチな才能を発揮してきたCHABE。二人はどのようにして惹かれあい、今回のコラボを実現させたのだろうか。
まだ音源を発表して世に出たばかりのころに、視野をぐっと広げてくれた先輩がCHABEくんや田上くんでした。(モーリス)
―もともとお二人の交流は、どのようにして始まったのですか?
CHABE:2002年に出たYOUR SONG IS GOOD(以下、ユアソン)の1stミニアルバムを買って、FRONTIER BACKYARDの田上くん(TGMX)とライブを観に行ったのが、そもそものきっかけですかね。
モーリス:わりとすぐ仲よくなりましたよね。それこそカクバリズムと「Niw! Records」(CHABEやFRONTIER BACKYARDらが所属するレーベル)が、そのころほぼ同時期に立ち上がって。まだ音源を発表して世に出たばかりのころに、視野をぐっと広げてくれた先輩がCHABEくんや田上くんでした。
―CHABEさんは、1990年代には「Crue-L Records」(瀧見憲司が主宰するインディーズレーベル。カヒミ・カリィ、藤原ヒロシが所属)や「ESCALATOR RECORDS」(YUKARI FRESHやHARVARDなどが所属したインディーレーベル。主宰は現・BIG LOVEの仲真史)という「渋谷系」を代表するレーベルに所属し、Freedom SuiteやNEIL & IRAIZAはじめ、LEANERS、CUBISMO GRAFICOの活動で知られています。それ以外にも、コンポーザーやDJ、パーカッションプレーヤーなど様々な肩書きをお持ちですよね。
CHABE:なんだか多重人格者みたいですよね(笑)。
モーリス:確かに(笑)。実際に会うまでは僕にとってCHABEくんは「レゲエDJ」という認識でした。出会ってからは、バンド仲間としていろんなところで一緒に演奏するようになるのですが、聞けばギターは最近弾きはじめたっていうし、ギター以外にも面白い楽器をいろいろ演奏しているし。「この人、一体何者なんだろう?」と思っていましたね。知れば知るほど多彩さに驚きました。
―激動の1990年代を駆け抜けてきたCHABEさんから見て、2000年代以降の音楽シーンの一端を担ってきたカクバリズムやユアソンの魅力は、どこにあると思いますか?
CHABE:カクバリズムもユアソンもそうですけど、「男子の部室っぽさ」や部活ノリみたいな感じがすごくあって、そこが魅力だなっていつも思うんですよね。自分たちの流行りやモードをすごく大事にしている感じがあるというか。そういうノリを少し離れたところから見て、「面白いなあ、僕も仲間に入りたい」っていつも思っています(笑)。
モーリス:そもそもカクバリズムは、僕たちの音源を出すのが目的で立ち上げたレーベルだったので、最初は仲間も全然いなかったんです。でも、MU-STARSが入って来てもうひとつ色がついて、次にSAKEROCKが入って来てさらに色が加わり、「インスト寄りのレーベル?」と思いきや、キセルやイルリメ、二階堂和美さんのような歌モノも増えていった。もちろんceroもそのうちの1組ですね。
CHABE:この15年の間に所属アーティストの出入りもあったと思うけど、どのバンドにもカクバリズムっぽさがあるよね。音楽だけじゃなくてモーリスや大原大次郎くんのアートワークを含めて、トータルでカクバリズムらしさがある。
モーリスが手がけた『YOUR SONG IS GOOD』(2004年)のジャケット
モーリスが手がけた『Extended』(2017年)のジャケット
モーリス:俯瞰で見ると、やっぱりカクバリズムとしか言いようのない空気感があるんですよね。どこか家族みたいな親密さを保っているところがカクバリズムらしさなのかなと思います。
CHABE:それってレーベルとしては理想的なことだよね。あとはやっぱり、ジュンジュン(サイトウ"JxJx"ジュン。ユアソンのリーダー)の面白さじゃないかな(笑)。
彼は相当マニアックな趣味をしているけど、アウトプットするときには絶対にキャッチーで面白いものにするんですよね。そういう姿勢が、レーベル全体に影響を与えているような気がします。ceroにしてもジュンジュンのことが大好きだし、所属バンドはみんなジュンジュンとユアソンを慕っているんだと思うんですよ。だから外から見ていて一族っぽいのかも(笑)。
リリース情報

- 『The Essential』
-
2017年9月27日(水)発売
著者:吉澤成友
価格:2,700円(税込)
発行:KiliKiliVilla
イベント情報
- 『「The Essential」発売記念 吉澤成友 オン・ザ・コーナー』
-
2017年10月1日(日)~2017年10月15日(日)
会場:東京都 代官山 蔦屋書店2号館 1階 ブックフロア
時間:7:00~26:00
- 作品集『The Essential』刊行記念 『吉澤成友×松田CHABE岳二 トーク・ライブ大阪』
-
2017年11月27日(月)
会場:大阪府 Loft PlusOne West
プロフィール
- 吉澤成友(よしざわ まさとも)
-
イラストレーター/ミュージシャン。1974年生まれ、栃木県出身。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。雑誌、CDジャケット、ロゴ、ファッションなど多岐にわたり活動を行う。YOUR SONG IS GOODのギター担当としても活動中。
- 松田“CHABE”岳二(まつだ ちゃーべ がくじ)
-
ソロ・プロジェクトのCUBISMO GRAFICO、バンド・スタイルのCUBISMO GRAFICO FIVE、堀江博久とのユニット“NEIL&IRAIZA”、そしてDJ、リミキサーとしても活動。また、FRONTIER BACKYARD、LOW IQ 01&MASTERLOWのサポートも務める。2001年には、映画『ウォーターボーイズ』の音楽を手掛け、第25回日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞。渋谷Organ Banでのレギュラーナイト「MIXX BEAUTY」をはじめ、三宿web他、CLUBでのDJで現場を大切にした活動を展開。様々な音楽活動を経て、楽曲提供やリミックス、さらに音楽やファッションのプロデュースも行い、セルフプロダクトのファッションブランド、kit galleryも主宰。現在は、時代の若者を躍らせたダンスナンバーを蘇らせるロックンロールバンドLEARNERSを精力的に活動中。