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ユアソン吉澤成友×松田岳二 カクバリズムらしさを担う絵の美学

ユアソン吉澤成友×松田岳二 カクバリズムらしさを担う絵の美学

吉澤成友『The Essential』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:鈴木渉 編集:山元翔一、川浦慧

「ギャラリーなんて作っちゃって、これからどうしよう」って本気で後悔しました。(CHABE)

―CHABEさんがkit galleryを立ち上げようと思ったのはなぜだったのですか?

CHABE:僕は「恵文社」っていう京都のセレクトショップの人と仲がよくて。確か2007年だったかな、「CHABEくん、今度個展でも開かない?」って声をかけてもらったんです。

―それで開催したのが、2009年の架空のデモ隊が持つプラカードをモチーフにした展示だった。

CHABE:そうです。それがすごく楽しくて、東京でも個展をやりたいなって思ったのが最初のきっかけでした。東京のギャラリーの相場を調べたら、とてもじゃないけど払える額ではなかったので、「自分の事務所をギャラリーにしたらどうだろう?」と(笑)。それで立ち上げたのがkit galleryです。

松田岳二

CHABE:それに僕がギャラリーをはじめたら、絶対に需要があると思ったんですよ。周りにデザイナーやフォトグラファー、ファッションデザイナーの知り合いがたくさんいたし、「個展はやってみたいけど、経済的に難しい」という人は多いだろうし。僕としても、「家賃さえ支払えればやっていけるはず」と、ものすごく甘い考えではじめたんですよね(笑)。

―若い人たちに、発表の場を提供したいという気持ちもあったんですか?

CHABE:それもありましたね。ただ当時は10年後、自分が同じように仕事を続けられるとは思ってなかったんです。「50歳になっても、今みたいにツアー周れんのかなあ」って。今、47歳で全然周れますけどね(笑)。ともあれ、「将来のために何か作っておいたほうがいいんじゃないか?」っていう気持ちも強くあり、それでオープンしたのが2010年の12月でした。

でも実際、ワクワクしてたのは最初の3か月だけ。すぐに東日本大震災が起きてしまって……。最初の1年間はまあ、つらかったですね。しばらくは自粛ムードもあって、「個展をやりたい」と思える人もほとんどいなくなってしまったし、「ギャラリーなんて作っちゃって、これからどうしよう」って本気で後悔しました。

左から:吉澤成友、松田岳二

―そのときは、「撤退する」という選択肢はなかったんですか?

CHABE:撤退するお金もないし、もう前に進むしかないなと。オープン早々、使われてないのが一番やばいじゃないですか。タダでもいいから、何かやってもらわないともったいない。そんな捨て身の時期が2年くらいあったんですけど、結果それが種まきにもなっていたんです。モーリスに会えたのもそうだし、デザイナーとかそれぞれの分野で活躍している友達のなかには、その頃に頼んで個展をやってもらった人がたくさんいますから。

モーリスが2013年5月にkit galleryで行った個展『ON PAPER』のフライヤー
モーリスが2013年5月にkit galleryで行った個展『ON PAPER』のフライヤー

モーリスをよく知らない人が手にとってもワクワクしてもらえるような感じにしたかった。(CHABE)

―kit galleryでのモーリスさんの個展『ON PAPER』(2013年5月)が、この『The Essential』につながっていると。CHABEさんは本書の編集も務めたわけですが、具体的にはどのように作業を進めたのでしょうか。

CHABE:基本的にはモーリスとのキャッチボールで作っていきました。まず、僕が好きな絵をアーカイブのなかから選び、それをランダムに並べていきます。それに対してモーリスが、「もっとレイアウトを細かくしていいですよ」「ここは、こういう順番にしたい」みたいな感じで返してきて、そこからまた僕が考えて……っていうふうに、何度かやりとりしていくなかで徐々に決まっていきましたね。

―参考にした画集などありました?

CHABE:特にないんですけど、僕はこういうペーパーバック的な画集を読むのが昔から好きなんです。なので、僕の感覚で作ればみんなが見たいもの出来るはずっていう、漠然とした自信はありました。

松田岳二

CHABE:絵の並び関しては、脈絡がなければないほうがいいなと思っていましたね。もちろん、年代で並べていくのも正攻法だし、いいとは思うんです。でもなんというか、整然としているよりはゴチャッとしているほうが僕は好みで。飽きさせない作りというか、モーリスをよく知らない人が手にとってもワクワクしてもらえるような感じにしたかったんですよね。

―確かに、重厚な作品集というよりは、雑誌を読む感覚でパラパラとめくれる感じがいいですよね。

CHABE:そうなんです。kit galleryを立ち上げたときから、こういう本を出版するのが目標だったし、しかもそれをKiliKiliVillaっていう音楽レーベルから出すことができてすごく嬉しいです。

吉澤成友『The Essential』書影
吉澤成友『The Essential』書影(Amazonで見る

CHABE:これからも、無名の作家や、この形態で出して意味のある作家の作品を収めた手軽なペーパーバックをシリーズ化してどんどん出していきたいですね。実を言うと、「VK DESIGN WORKS」のVERDYくんとか、3人くらいの作家から「僕も出したいです」って言われているんですよ。

モーリス:それはすごい。僕は今、カクバリズムの15周年記念でデザイナーの大原大次郎くんと二人でBEAMS(TOKYO CULTUART by BEAMS)でも展示しているんですが(10月11日に終了)、それをきっかけに大原くんと、「NEW co.」(入稿)っていうユニットを結成したんですよ。

CHABE:へえー、面白そうだね!

モーリス:実は、10月7日に早速1冊めの本をリリースしたんです。カクバリズムのグラフィックアーカイブ集なんですが、表紙が白紙で、そこに二人でドローイングしてお客さんに渡すっていうイベントをBEAMSでやって。

NEW co.が今後、どんな形で動いていくのか、具体的な活動内容はどうするのかはこれから決めていくんですけど、とにかく楽しみでしかないですね。まるで二人でバンドを組んだ気分で盛り上がっています!(笑)

左から:松田岳二、吉澤成友

代官山 蔦屋書店で10月15日まで展示会を開催中
代官山 蔦屋書店で10月15日まで展示会を開催中(サイトを見る

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リリース情報

『The Essential』
『The Essential』

2017年9月27日(水)発売
著者:吉澤成友
価格:2,700円(税込)
発行:KiliKiliVilla

イベント情報

『「The Essential」発売記念 吉澤成友 オン・ザ・コーナー』

2017年10月1日(日)~2017年10月15日(日)
会場:東京都 代官山 蔦屋書店2号館 1階 ブックフロア
時間:7:00~26:00

作品集『The Essential』刊行記念 『吉澤成友×松田CHABE岳二 トーク・ライブ大阪』

2017年11月27日(月)
会場:大阪府 Loft PlusOne West

プロフィール

吉澤成友(よしざわ まさとも)

イラストレーター/ミュージシャン。1974年生まれ、栃木県出身。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。雑誌、CDジャケット、ロゴ、ファッションなど多岐にわたり活動を行う。YOUR SONG IS GOODのギター担当としても活動中。

松田“CHABE”岳二(まつだ ちゃーべ がくじ)

ソロ・プロジェクトのCUBISMO GRAFICO、バンド・スタイルのCUBISMO GRAFICO FIVE、堀江博久とのユニット“NEIL&IRAIZA”、そしてDJ、リミキサーとしても活動。また、FRONTIER BACKYARD、LOW IQ 01&MASTERLOWのサポートも務める。2001年には、映画『ウォーターボーイズ』の音楽を手掛け、第25回日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞。渋谷Organ Banでのレギュラーナイト「MIXX BEAUTY」をはじめ、三宿web他、CLUBでのDJで現場を大切にした活動を展開。様々な音楽活動を経て、楽曲提供やリミックス、さらに音楽やファッションのプロデュースも行い、セルフプロダクトのファッションブランド、kit galleryも主宰。現在は、時代の若者を躍らせたダンスナンバーを蘇らせるロックンロールバンドLEARNERSを精力的に活動中。

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