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ユアソン吉澤成友×松田岳二 カクバリズムらしさを担う絵の美学

ユアソン吉澤成友×松田岳二 カクバリズムらしさを担う絵の美学

吉澤成友『The Essential』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:鈴木渉 編集:山元翔一、川浦慧

常に音楽と美術の間を気持ちが行き来していたんです。(モーリス)

―CHABEさんによると、モーリスさんのアートワークもカクバリズムらしさの要素のひとつなのでは? というお話でしたが、ご自身のイラストレーターとしてのルーツはどこにあるのでしょうか。

モーリス:子どものころから音楽も、絵を描くことも、どっちも好きだったんです。時期によって「俺は絶対、ミュージシャンになるんだ」って強く思っているときもあれば、「やっぱり音楽はダメだ、絵描きでやっていくしかない」っていうモードのときもあって(笑)。

—早い段階から音楽とイラストの活動は並行していたんですね。

モーリス:常に音楽と美術の間を気持ちが行き来していたんです。高校を卒業して武蔵野美術大学への進学を選んだのは、そのときがちょうど美術モードだったからだと思います(笑)。

吉澤成友

モーリス:もちろん大学でもバンドを組んでいたんですよ。あのころは気の合う仲間たちとスタジオに入って音を鳴らすだけでも心底ワクワクしてましたし、音楽は自分にとって特別なものだった。でもバンドが仕事になるとは全く思ってなかったんですね。

―美術にもいろいろな道があるなかで、イラストレーションに興味が向いたのは?

モーリス:高校時代は美術部に所属していて、暇があれば図書館に行っていろんな画集を見ていたんです。そのなかで、ベン・シャーン(20世紀アメリカを代表する画家)の絵がとにかく衝撃的で。ファインアートというよりは、イラストやデザインに近いというか、文字が入っていたりするところとかポスターっぽくもあったんですよ。そんな絵が「美術全集のなかにある」ということにまず驚いたし、何より絵のカッコよさに痺れてしまったんです。

―武蔵美では基礎デザイン学科に入学して、イラストレーターについて本格的に学んだわけですね?

モーリス:基礎デザイン学科では、テクニカルなことよりもデザインに対する考え方、視点や伝え方など「本質」と「真髄」の部分を教えてもらいました。授業が終わるとファミレスに行って、そこにいるお客さんをクロッキーしたりして技術を磨いていましたね。

吉澤成友

モーリス:卒業してもすぐにイラストレーターになれるわけではなく、最初は看板屋に勤めて、シルクスクリーンの職人さんの下で修行していたんですよ。社長が古い人で、現場に同行させてもらうとまっさらな看板に、独特のぶっとい明朝体を下描きもなくいきなり描きはじめるんです。しかもきっちり正確に。「文字」を「絵」として描いているのがとにかく新鮮で、それを見てかっこいいなと思いました。その社長からは相当な影響を受けていると思います。

「なりたいもの」がふたつあると、そこを行き来するなかで生まれるものってあるのかもしれない。(CHABE)

―CHABEさんは、モーリスさんのイラストのどこに魅力を感じますか?

CHABE:僕は、雑誌『Olive』でずっとやられていた飯田淳さんとかのイラストレーションが刷り込みのように好きで。モーリスとはそういう好みが似通っているので、作品を見ると「モーリスのフィルターを通すとこんなふうにアウトプットされるのか」って感動してしまうんです。

『The Essential』より
『The Essential』より

『The Essential』より
『The Essential』より

CHABE:それってきっと、ユアソンの音楽を聴いて「カリプソもユアソンのフィルターを通すとこんな音楽になるのか!」みたいな、新鮮な驚きがあるのに近いというか。

―モーリスさんの作品を見ていると、絵から音楽が聴こえてくる感じがあるんですよね。それは、ミュージシャンや楽器を描いた作品だけでなく、抽象的なイラストについても同じで。筆致や色使い、モチーフの並べ方などにリズムや音階があるような。

モーリス:好きなモチーフが音楽に関連するものだったり、考え方自体が音楽寄りだったりするからかもしれないですね。逆に、音楽をやるときは絵画的な発想でやっているところもあるんです。たとえば曲を作るとき、キュビズム的な手法を音楽に変換したらどうなるか? っていうふうに考えたり。絵を描くときも、構築された重厚なオーケストラか、それともインプロ主体のジャムセッションか、みたいに音楽的な発想を持ち込むようにしていますね。

『The Essential』より
『The Essential』より

『The Essential』より
『The Essential』より

CHABE:手塚治虫も「漫画家にもなりたかったけど、医者にも同じくらいなりたかった」と言っていたらしいじゃないですか。「なりたいもの」がふたつあると、そこを行き来するなかで生まれるものってあるのかもしれない。

僕も、「『なりたいもの』は、別にひとつじゃなくていい」と思っているんですよ。もちろん、職人さんがひとつのことを極めるのはものすごいことだなって思います。でも、僕自身はいろんなチャンネルを持っている人になりたかったし、モーリスもきっとそうなのかなって。話を聞いていてそう思いました。

松田岳二

やっぱり「お題」があるのは面白いですよ。(モーリス)

―イラストレーターの仕事は純粋に作品を作るのとは違って、クライアントの意向などを考慮に入れつつ制作していくことが多いわけですよね。それゆえの醍醐味というのもありますか?

モーリス:それはあります。やっぱり「お題」があるのは面白いですよ。クライアントから「こんな感じでお願いします」って言われたとき、それに対してどうアプローチするのか、「お題」からどのくらい逸脱してみるか、いろいろ考えるのが楽しい。そこは音楽も同じで、たとえばカバー曲を演奏するときは、原曲に対して直球でいくのか、変化球を投げるのかっていう考えでやります。

CHABE:クライアント仕事だと、やっぱり「ダメ出し」もあるでしょ?

モーリス:ありますよ。でも、それを見越して最初はラフの状態のものを提出することはしていなくて、ほぼ完成形に近い形で作品を出すようにしていますね。というのも、ラフを送っても、こちらの完成形のイメージがクライアントに伝わらないこともあるし、ラフの時点で細かく直しが入ってしまうと最初の案とは全く違う不本意なものになることがあるんですよね。そうなるくらいだったら、イチから作り直したほうが、いいものができる気がするんです。もちろん、どこがダメだったのかは検証しますけどね。

左から:松田岳二、吉澤成友

CHABE:なるほどね。僕は一時期CM音楽を作っていて、当時は自分のプロフィール欄に「好きなもの:唐揚げ、嫌いなもの:ダメ出し」って書いていたくらい、ダメ出しが嫌いだったんですよ(笑)。ダメ出しされるたびに、「俺のこの2日間の労力はなんだったんだ」って傷ついていました。特に最初の頃は、「うわ、こんなにサクッとダメ出しされるんだ」ってびっくりしましたし。でも、曲作りのスキルが上がっていくにつれて、ダメ出しに対する対処スキルも上がっていくんですよね。

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リリース情報

『The Essential』
『The Essential』

2017年9月27日(水)発売
著者:吉澤成友
価格:2,700円(税込)
発行:KiliKiliVilla

イベント情報

『「The Essential」発売記念 吉澤成友 オン・ザ・コーナー』

2017年10月1日(日)~2017年10月15日(日)
会場:東京都 代官山 蔦屋書店2号館 1階 ブックフロア
時間:7:00~26:00

作品集『The Essential』刊行記念 『吉澤成友×松田CHABE岳二 トーク・ライブ大阪』

2017年11月27日(月)
会場:大阪府 Loft PlusOne West

プロフィール

吉澤成友(よしざわ まさとも)

イラストレーター/ミュージシャン。1974年生まれ、栃木県出身。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。雑誌、CDジャケット、ロゴ、ファッションなど多岐にわたり活動を行う。YOUR SONG IS GOODのギター担当としても活動中。

松田“CHABE”岳二(まつだ ちゃーべ がくじ)

ソロ・プロジェクトのCUBISMO GRAFICO、バンド・スタイルのCUBISMO GRAFICO FIVE、堀江博久とのユニット“NEIL&IRAIZA”、そしてDJ、リミキサーとしても活動。また、FRONTIER BACKYARD、LOW IQ 01&MASTERLOWのサポートも務める。2001年には、映画『ウォーターボーイズ』の音楽を手掛け、第25回日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞。渋谷Organ Banでのレギュラーナイト「MIXX BEAUTY」をはじめ、三宿web他、CLUBでのDJで現場を大切にした活動を展開。様々な音楽活動を経て、楽曲提供やリミックス、さらに音楽やファッションのプロデュースも行い、セルフプロダクトのファッションブランド、kit galleryも主宰。現在は、時代の若者を躍らせたダンスナンバーを蘇らせるロックンロールバンドLEARNERSを精力的に活動中。

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