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チェン・ティエンジュオに訊く、中国新世代は自由を獲得した?

チェン・ティエンジュオに訊く、中国新世代は自由を獲得した?

『フェスティバル/トーキョー17』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊島望 通訳:池田リリィ茜藍 編集:川浦慧、宮原朋之

途方もなく落差のある2つの世界を知ったことで、ポジティブなものも、考えなければいけないことも増えた。

—これがもっとも聞きたいんですが、仏教を信じるようになったきっかけは何だったんですか?

チェン:簡単に言っちゃうと「焦り」と「心配」。というのは、中国にいた頃は何を信じればよいのか全然わからなかったのに、海外に出た途端、何でも信じられる自由を得たから。

途方もなく落差のある2つの世界を知ったことで、ポジティブなものも得たし、同時に考えなければいけないことも増えた。あとは、自分の祖父母や親戚が亡くなっていくと、普通に「命ってなんだろう?」と思うようにもなった。

チェン・ティエンジュオ

—実存的なアイデンティティーの模索として、仏教があった?

チェン:うん。死について考えたり、死に向かって生きていることを思うと、そこには当然焦りと心配が立ち現れてくる。一方で、仏教は「悟り」によってそこに一種の調和をもたらそうともするでしょう。その間で揺れ動く気持ちが、直接的に作品に表れているってことなんだと思う。

僕がいちばん重点を置いていたのは、来てくれたオーディエンスの感情なんだよね。

—『忉利天』はどんな形態のパフォーマンスになりますか?

チェン:作品そのものは、過去にコペンハーゲンやベルリンで発表した旧作なんだ。でも今回は再アレンジする。なぜって『F/T』は演劇祭だからね。コペンハーゲンでは音楽フェスティバルでの発表だったし、ベルリンではクラブを舞台にしていたから、それらよりも僕なりに演劇に寄せた作りになると思う。

—それは物語性が増すという意味?

チェン:どうだろう。これまで僕は物語性を重要視してこなかったから。僕がいちばん重点を置いていたのは、来てくれたオーディエンスの感情なんだよね。パフォーマンスが行われる場における感情の揺れ、爆発。というのも、僕は仏教と同じくらいクラブカルチャーを愛するパーティーアニマルだからね! 僕の作品を観るときは、みんなパーティーに参加するように体験してほしい。

チェン・ティエンジュオ

— 日本にもパリピはたくさんいるから大丈夫だと思います(笑)。でもチェンさんの好むイベントって、かなり特殊じゃないですか? 日本だとSMやラバー趣味などの人が集まる『デパートメントH』ってイベントがありますけど、わりとそっちに近い印象。

チェン:中国でも一般的とは言えないね(苦笑)。上海だと2年前くらいから徐々にシーンが盛り上がってきているけれど。そういう場所だとお酒なんかが入るから、オーディエンスのテンションもかなり特殊。

でも、今回の日本公演は「劇場」が舞台になるから、もう少し異なるレイヤー、異なる体験の積み重ねを狙っていくことになるかな。でも、それはやっぱり物語にはならないと思う。あえて言えば「儀式」に近いもの。舞台と客席の境界が明確に二分してしまって、感情移入を阻害することは避けたい。期待していてほしいな。

チェン・ティエンジュオ

—楽しみにしてます。ところで、今回の『F/T』のテーマは「新しい人 広い場所へ」です。現在の中国や東南アジアは本当にパワフルで、戦後日本の経済成長期、あるいはバブル景気を思わせるようなスピード感で動いていて、その渦中で成長し、また活躍しているアーティストやクリエイターこそが「新しい人」の名に相応しい気もします。

チェン:そのテーマは、僕にとっても面白い。歴史や時代を前提として「古い」「新しい」を考えるためには、まず対立関係が必要になる。そこで掲げたのが「新しい人」ってことだよね? それはまさに、今の中国で起きていることそのもの。

中国で生きるうえでたぶんいちばんエキサイティングなのは、伝統や政治体制が築いた壁や境界に対して、絶え間なく戦いを挑み、そして打ち破っていくことだと思っています。その戦いの構図を実現するためには「旧なる基盤」が必要で、すべてが自由では挑戦自体が成立しなくなってしまう。

今日の記者会見で、遠藤麻衣さんというアーティストが『アイ・アム・ノット・フェミニスト』という作品について語っていて、とても興味深かった。彼女は日本の婚姻制度や家族のあり方について疑問を持っていて、それに挑戦するプロセスを作品化しているんだと理解しました。

遠藤麻衣『アイ・アム・ノット・フェミニスト』メインビジュアル
遠藤麻衣『アイ・アム・ノット・フェミニスト』メインビジュアル

でもこれは、現在のヨーロッパではなかなか成立しないテーマだと思うんです。というのは、西欧ではある程度の自由・平等の成熟があるから。けれども中国や日本をベースにする僕らであれば、その挑戦を共有し、そこで得た何かを分かち合えると思う。それは、『F/T』のようなアジアで行われる演劇祭においてとても重要なことじゃないかな。

チェン・ティエンジュオ

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イベント情報

『フェスティバル/トーキョー17』

2017年9月30日(土)~11月12日(日)
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場、あうるすぽっと、千葉県 松戸 PARADISE AIR、ほか

アジアシリーズ vol.4 中国特集「チャイナ・ニューパワー ―中国ミレニアル世代―」
『忉利天(とうりてん)』

2017年11月10日(金)、11月11日(土)全2公演
会場:東京都 池袋 あうるすぽっと
構成・演出・美術:チェン・ティエンジュオ
料金:一般前売3,500円 一般当日4,000円 学生2,300円

『パレスチナ、イヤーゼロ』
2017年10月27日(金)~10月29日(日)全3公演
会場:東京都 池袋 あうるすぽっと
作・演出:イナト・ヴァイツマン
料金:一般前売4,000円 一般当日4,500円 学生2,600円

アジアシリーズ vol.4 中国特集「チャイナ・ニューパワー ―中国ミレニアル世代―」
『恋 の 骨 折 り 損 ―空愛①場―』

2017年10月28日(土)、10月29日(日)全2公演
会場:東京都 六本木 SuperDeluxe
作・演出:スン・シャオシン
料金:一般前売2,500円 一般当日3,000円 学生1,600円(全てドリンク別)

アジアシリーズ vol.4 中国特集「チャイナ・ニューパワー ―中国ミレニアル世代―」
『秋音之夜』

2017年11月3日(金・祝)、11月4日(土)
会場:東京都 六本木 スーパー・デラックス
出演:
リー・ダイグオ
シャオ・イエンペン
ワン・モン
Nova Heart
料金:一般前売2,500円 一般当日3,000円 学生1,600円(全てドリンク別)

まちなかパフォーマンスシリーズ

まちなかパフォーマンスシリーズ
『アドベンチャーBINGO!!』

2017年10月27日(金)~11月11日(土)
会場:東京都 池袋あうるすぽっと ホワイエ
作・演出・出演:福田毅
料金:一般前売1,500円 一般当日2,000円 学生1,000円
※おみやげ付

まちなかパフォーマンスシリーズ
『アイ・アム・ノット・フェミニスト!』

2017年10月26日(木)~10月29日(日)全8公演
会場:東京都 赤坂 ゲーテ・インスティトゥート 東京ドイツ文化センター
作・演出・出演:遠藤麻衣
料金:一般前売2,000円 一般当日2,500円 学生1,300円

まちなかパフォーマンスシリーズ
『Family Regained: The Picnic(ファミリー・リゲインド:ザ・ピクニック)』

2017年11月3日(金・祝)~11月12日(日)
構成・演出・出演:森栄喜

映像上映
2017年11月4日(土)~11月12日(日)
会場:東京都 池袋西口公園
料金:無料

トーク
2017年11月3日(金・祝)
会場:東京都 池袋 あうるすぽっと 会議室B
料金:500円

まちなかパフォーマンスシリーズ
快快
『GORILLA ~人間とはなにか~』

2017年11月12日(日)全1公演
会場:東京都 池袋西口公園
作・演出:北川陽子
料金:無料

プロフィール

チェン・ティエンジュオ

1985年北京生まれ。2009年セントラル・セント・マーチンズを卒業。10年チェルシー・カレッジ・オブ・アート修士課程終了。現在は北京を拠点に、ダンサーやミュージシャン、フランスのアートグループなどとのジャンルを超えた協働作業を続ける。17年にはウィーン芸術週間やドイツの世界演劇祭へも招聘されているなど、世界的なアーティストとして注目されている。

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