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小山田圭吾と中村勇吾が谷川俊太郎を想う。長い人生どう生きる?

小山田圭吾と中村勇吾が谷川俊太郎を想う。長い人生どう生きる?

『谷川俊太郎展』
インタビュー・テキスト
杉原環樹
撮影:萩原楽太郎 編集: 川浦慧、宮原朋之

学生時代、友達の家に遊びに行くと、谷川さんもいたんですよ(笑)。(小山田)

—今回、お二人は展覧会の最初の部屋で、『いるか』『かっぱ』『ここ』という3つの詩に音楽と映像を作って、空間的に体験できる作品を展示しています。お二人ととても相性がいい組み合わせだと感じたのですが、今回どんな経緯で関わることになったのでしょうか?

小山田:僕は、谷川さんと学生時代に会ったことがあるんです。一緒にバンドをやっていた中学の同級生のお母さんが、『100万回生きたねこ』という絵本を書いた佐野洋子さんで、それこそ年表にもあったけど、谷川さんと一時期結婚していて。だから友達の家に遊びに行くと、谷川さんもいたんですよ(笑)。

—すごいエピソードですね。そのころから詩人として認識されていたんですか?

小山田:当時から誰でも名前を知っているような人だったからね。『マザー・グースのうた』とか、『鉄腕アトム』の主題歌とか、翻訳した『PEANUTS』とか、そういうものには自然に触れていました。

それから20年近く会っていなかったんだけど、谷川さんがたまたま、僕と勇吾さんが関わった国立新美術館の『MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事』を見て、興味を持ってくださって。それでお話が来たんです。

左から小山田圭吾、中村勇吾

—選ばれた作品を見ると、「かっぱかっぱらった / かっぱらっぱかっぱらった」と続く『かっぱ』や、「いるかいるか / いないかいるか / いないいないいるか」と続く『いるか』のように、意味より言葉のリズムや韻が際立った詩が多いですね。

小山田:『かっぱ』と『いるか』はいわゆる言葉遊びですよね。こういうタイプの谷川さんの詩は、僕も以前からすごく好きで。そこにもうひとつ、言葉の意味の強い作品も入れたいねという話になって選んだのが、文章的で叙情的な『ここ』です。

中村:『いるか』はずっと単語が連続していて、どこで切れるのかよく分からない詩。『かっぱ』は発したときのスタッカートみたいなリズムが楽しい詩。で、『ここ』はそれらの中間どころというか。要素が異なる詩を選んだ、という感じかなと思ってました。

『POINT』を作っているころ、谷川さんが『かっぱ』を朗読するパフォーマンスを見て、近いものを感じたのは覚えています。(小山田)

—『ここ』は、「どっかに行こうと私が言う / どこ行こうかとあなたが言う」と、韻がありながらたしかに散文的な響きがあります。話を広げてしまいますが、こうした谷川さんの詩とコーネリアスの歌詞のあり方にはどこか共通性も感じて。とくに2001年の『POINT』以降は、センテンスを細かく分けて、意味より響きを見せるような実験をいろいろされていたかと思うのですが、そこにはどんな背景があったのでしょう?

小山田:当時、音楽の作り方がガラッと変わって。それ以前はいろんなところからサンプリングしてきたものをレイヤー状に重ねる作り方だったんですけど、『POINT』から自分のプライベートスタジオで制作を始めて、まったく真逆に、空間とか音の隙間とかを重視した音作りに変化したんです。そこで、言葉も変わっていったんだと思う。

あと『POINT』を作っているころ、NHKで谷川さんが、まさにこの『かっぱ』を息子の賢作さんのパーカッションと一緒に朗読するというパフォーマンスを見て。すごく近いものを感じたのは覚えていますね。

中村:言葉に触れるときや歌詞を書くときは、主に音韻を見るんですか? たとえば『Mellow Waves』も、「メ」と「ウェ」って気持ちのいい響きですよね。

小山田:響きと、やっぱり意味とかたちのバランスだよね。『Mellow Waves』も「M」と「W」の視覚的なかっこよさとかね。言葉ってどんなに少なくしても絶対に意味があるから。意味の焦点をより絞るというか、あまり余計なことは言わないようにしていたのはあるかも。

谷川の詩『自己紹介』(2007)より、1行ごとに「歴史」や「音楽」などテーマを設けてさまざまなものを展示
谷川の詩『自己紹介』(2007)より、1行ごとに「歴史」や「音楽」などテーマを設けてさまざまなものを展示

展示室にある等身大の谷川俊太郎の写真
展示室にある等身大の谷川俊太郎の写真

中村:小山田さんにも谷川さんにも、言葉の原点に立ち返るような魅力が共通してありますよね。ある文字のかたちに、なぜかある音や意味が伴っている、その不思議さに立ち返ってしまうような。今回の展示室にも、りんごが置いてあって、谷川さんがりんごという言葉についていろいろ書いた文章があったけど、これまで慣れ親しんでいた言葉が急に新鮮に見えはじめるところが似ているなと。

谷川の実験詩集の中から『りんごへの固執』より
谷川の実験詩集の中から『りんごへの固執』より

—シンプルにされた言葉が、なぜかよりエモーショナルに感じられる、というのが面白いですよね。それで言うと、中村さんのデザインにも、幾何形態を多用したり、漢字を一画ごとに分解したりと、似た側面があると感じるのですが。

中村:僕の場合、そもそもメッセージを表現するという思考がないんです。自分で映像をつける音楽も、もともと歌詞を読まなくて。メッセージを受け止めたりそれを伝えたり、という感性がそもそもない(笑)。

—METAFIVEのライブVJをされたときも、「“TURN TURN”ってタイトルだからまあとりあえず回しとこうか」という発想から映像を作られたとお話されていましたね。

中村:昔、友だちが「尾崎豊みたいな、ちゃんとしたメッセージのある音楽が本当の音楽だ。いまの日本の音楽は間違っている」と言っていたことがあって。

小山田:そういう人、たくさんいたよね(笑)。

中村:でも僕は、ポカーンとしていたんですね。いままで歌詞の存在とか歌詞を読むという発想が頭になかったから。だからいまも、メッセージの意味を捉えるという意識がないんです。きちんとした構造さえあれば、意味を操作しなくてもブレないし、伝わるという作り方ですね。

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イベント情報

『谷川俊太郎展』

2018年1月13日(土)~3月25日(日)
会場:東京オペラシティアートギャラリー
開館時間:11:00~19:00(金、土曜は20:00まで)
休館日:月曜(2月12日は開館)、2月11日、2月13日
料金:一般1,200円 高大生800円
※中学生以下無料

プロフィール

小山田圭吾(おやまだ けいご)

1969年東京都生まれ。1989年、フリッパーズギターのメンバーとしてデビュー。バンド解散後、1993年、Cornelius(コーネリアス)として活動開始。現在まで6枚のオリジナルアルバムをリリース。自身の活動以外にも、国内外多数のアーティストとのコラボレーションやリミックス、プロデュースなど幅広く活動中。

中村勇吾(なかむら ゆうご)

1970年奈良県生まれ。ウェブデザイナー/インターフェースデザイナー/映像ディレクター。東京大学大学院工学部卒業。多摩美術大学教授。1998年よりインタラクティブデザインの分野に携わる。2004年にデザインスタジオ「tha ltd.」を設立。以後、数多くのウェブサイトや映像のアートディレクション・デザイン・プログラミングの分野で横断/縦断的に活動を続けている。主な受賞に、カンヌ国際広告賞グランプリ、東京インタラクティブアワードグランプリ、TDC賞グランプリ、毎日デザイン賞など。

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