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自主規制が生まれる理由とは? 表現の自由に関わる心理を考える

自主規制が生まれる理由とは? 表現の自由に関わる心理を考える

『Interdisciplinary Art Festival Tokyo17/18』
インタビュー・テキスト
杉原環樹
撮影:豊島望 編集:宮原朋之

日本を飛び出してアートの世界に入る人が少なかったり、国外で活躍するための世界的な視野の乏しさはどうしても感じます。

—ラインナップで言えば、東アジアのアーティストを中心にしている点もユニークです。2017年に森美術館で開催された『サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで』展など、近年ではアジア圏の現代アートが紹介される機会も増えてきていますが、まだ日本や欧米のアーティストに比べると少ないように感じます。

:私は、アジアのアーティストがそこまで扱われていないという意識はないです。だけど単純な話、紹介されたとしても日本では注目されないんですよね(笑)。

—それはなぜだと思いますか?

:日本と世界のあいだに、認識のギャップがあるんじゃないでしょうか。今回の展覧会では韓国、台湾、マレーシアのギャラリーと共同キュレーションをしていますが、日本では知られていないアジアのアーティストが欧米でとりあげられることは結構あります。

日本を飛び出してアートの世界に入る人が少なかったり、国外で活躍するための世界的な視野の乏しさはどうしても感じます。欧米の有名アーティストの作品にはありがたさを感じるけど、近隣の国には興味を抱かない。言い方は悪いですが、「日本の方がいつまでも上だ」という意識がどこかにあるのかなとは思います。

『Interdisciplinary Art Festival Tokyo 16/17 Performance, Screening and lecture in Singapore』での韓成南のパフォーマンス『Blue on the face』
Interdisciplinary Art Festival Tokyo 16/17 Performance, Screening and lecture in Singapore』での韓成南のパフォーマンス『Blue on the face』

『Interdisciplinary Art Festival Tokyo 15/16』での瀧健太郎のパフォーマンス Photo by Miyuki Iwasaki
『Interdisciplinary Art Festival Tokyo 15/16』での瀧健太郎のパフォーマンス Photo by Miyuki Iwasaki

—でも、その認識は現状とズレている。

:マーケットは中国の方が大きいですし、欧米の大手ギャラリーがアジアに進出する場合、日本を飛ばして中国や韓国に行く状況がありますね。2016年にスイスの『アート・バーゼル』に行きましたが、海外のアートフェアでの存在感も中国や韓国の方が目立っている気がします。

韓国の場合、国を挙げてアートを応援しているということもありますね。国も狭いし人口も少ないので、危機感が強い。それに比べると、日本は文化予算の配分を平等にしようという意識が強いので、突出することが難しいのかもしれませんね。

自分の国を持たない存在だという意識は原点にあります。そういう存在だからこそできることをやりたい。

—東南アジアでは、アーティストが自ら発表の場を運営する「アーティスト・ラン・スペース」が増えているとも聞きます。その背景には、公共の美術館などが少ないという状況もありますが、そうした自主的な動きは世界的に見ても面白い傾向ですよね。

:変な表現ですが、東南アジアのアーティストはみんな意外としたたかなんです。内容的にも、自分たちの文化的な背景を踏まえたアプローチが多い。たとえば、今回出品しているアイシャ・ビンティ・バハラディンというマレーシアのアーティストは、イスラム圏の国として、その民族衣装を着てパフォーマンスをしています。彼らはバックグラウンドを見せずに洗練されたものを作ることもできるけど、むしろアイデンティティーを利用しようとしている。

:もちろん、これは欧米主体の価値観によるエキゾチズムと表裏一体ですが、そこに添いつつも、価値を転倒させるためには、アジアの国々で相互に盛り上げて、意識し合う努力は必要だと思うんです。欧米とアジアのどちらが上ではなく、面白いものは面白いという状況を醸成するためにも、何十年かけても虎視眈々とやらないといけない。

—その考えには韓さん自身のアイデンティが関わっているのでしょうか?

:それはすごくありますね。私は在日コリアン3世で、日本で生まれ育ちましたが国籍は日本ではない。隙間の存在であることが、『IAFT』の取り組みにも自分の作品にもつながっていると思います。

活動や生活の中では、助成金に応募するとき「日本国籍を有する者」という表記に困ることもあるけど、より小さなことで違いを感じることが多くて。サッカーの日韓戦のときに、「日本と韓国どっちを応援するの?」と聞かれたり(笑)。

韓成南

—ベタな質問ですね(笑)。

:私は「弱い方」と答えるんです。弱い方が勝った方が面白いから。自分の国を持たない存在だという意識は原点にあります。でもそれを乗り越えて、そういう存在だからこそできることをやりたいですね。

『Interdisciplinary Art Festival Tokyo 16/17 Performance, Screening and lecture in Singapore』での西山修平のパフォーマンス『Audio-Visual Konfusion 』
Interdisciplinary Art Festival Tokyo 16/17 Performance, Screening and lecture in Singapore』での西山修平のパフォーマンス『Audio-Visual Konfusion 』

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イベント情報

『Interdisciplinary Art Festival Tokyo17/18』
『Interdisciplinary Art Festival Tokyo17/18』

2018年3月16日(金)~3月25日(金)
会場:東京都 小金井アートスポット シャトー、Musashinoはけの森カフェ、美術の森、他
料金:800円
※3会場と特別エリア共通、再入場不可

参加作家:
飯村隆彦
二名良日
岡田裕子
西山修平
韓成南
イ・ヨンジュ
ヨ・イニョン
リオル・シャムリッツ
リン・イーチ
ツァイ・ウェイティン
リン・ウェイルン
アイシャ・ビンティ・バハラディン
ゴー・リー・クァン

オープニングパーティ

2018年3月16日(金)18:00~20:00
価格:1000円(軽食・ドリンクあり、入場料別)
参加アーティストと共にリラックスした雰囲気でお楽しみください。

海外アーティスト、ギャラリストによるトーク

2018年3月17日(土)18:00~20:00
1ドリンク制(入場料別)
韓国、台湾、マレーシアのアーティストやギャラリストが、アットホームな雰囲気で作品を解説します。

IAFTセレクションのアーティストによるトーク

2018年3月21日(水・祝)18:00~20:00
1ドリンク制(入場料別)
IAFTディレクターの韓成南氏や出品作家である岡田裕子氏等、作家自身が展示作品を中心に様々なことをお話します。

主催:インターディシプリナリー・アート・フェスティバル・トウキョウ

プロフィール

韓成南(はん そんなん)

記号論(言語・色・音・映像)を踏襲し、映像作品やアート作品を制作。人間 / 性愛 / 宗教といったコードに対して暴発的なエフェクトで彩った作品を発表している。また、スーパーリニアという概念をもとに映像x演劇xダンスのアートパフォーマンスを上演している。Audio Visual作品、インスタレーション、アートパフォーマンス、ウェブアート等、活動は多岐に渡る。日本、韓国、オーストラリア各地で個展多数。2009年12月にアジア圏唯一のaudio visual festivalを大阪で主催、オーガナイズし、2014年よりInterdisciplinary Art Festival Tokyo代表を務める。ソウル国際実験映画フェスティバル、ローザンヌ・アンダーグラウンド・フィルム&ミュージック・フェスティバル、デトモルド国際フィルムフェスティバル等での上映や、ソウル国際ニューメディアフェスティバルにてメディア・アーティスト賞、マリックビル・コンテンポラリー・アートプライズでの受賞、Asia Anarchy Alliance(渋谷ワンダーサイト)でのオープニング・パフォーマンス等、MORI YU GALLERYやAsia Culture Center Creationでのグループ展等、個展・グループ展も多数。

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