
小山健×たなかみさき、SNSを語る。いいね!の数より大事なこと
『SNS展』- インタビュー・テキスト
- 麦倉正樹
- 撮影:鈴木渉 編集:木村直大
共感してもらおうと思って、何か適当に話を作ったりするのは、ちょっと違うと思う。(小山)
—いまの話ではないですけど、SNSとの付き合い方に悩んでいる人って結構多いように思います。そんな人たちに何かアドバイスをするなら?
たなか:誰にどう思われたいかを、あらかじめ明確にしておくことだと思うんですよね。それは、ただひとりの人だけでもいいし。私は、「大好きなあの人にどう思われてるか」ということだけを気にするタイプなので。
—不特定多数の人に好かれたいと思わないというか、数字ではない自分の軸みたいなものを、ちゃんと持っているべきだと。
たなか:そうですね。「誰でもいいわけじゃないのよ」って感じというか、ちょっと「いい女」でいたいみたいな(笑)。そういう意識はやっぱり持っておいたほうがいいなと思います。
—小山さんは、何かありますか?
小山:まあ、僕はさっき言ったように、一度のめり込んでしまった立場なので(笑)。だから、当時の僕に言うとしたら、「SNSに期待し過ぎるな」「SNSで何かを変えられると思うな」ですかね。
—虚勢を張ることなく、自分のやりたいことをやると。小山さんの場合だったら、自分の描きたいものを、正直に描くということでしょうか?
小山:そうですね。僕の場合、自分が面白くて、ホントに笑ったことを描こうと思っていて。奥さんがこんな変なことをしたから笑ったとか、そういうのを思い出して描いていくのを、ひとつのルールにしているかもしれないです。共感してもらおうと思って、何か適当に話を作ったりするのは、やっぱりちょっと違うと思うので。
—そう、お2人とも作品のモチーフは、現実世界で起こったこと、あるいは起こり得ることであって、そうやって現実世界に片足を置いておくことは、やっぱり大事なのかなって思いました。
たなか:何かひとつのことに執着するのって怖いじゃないですか。それがSNSだったら、なおさら怖いというか。自分の中にあるもの、思い出とか感情が、すべてだって思っているのはいいと思うんです。でも、SNSがすべてってなっちゃうと、やっぱりちょっと怖い。SNSはあくまでもツールだっていう、ちょっとだけ乾いた目でSNSを見ることは、自分を客観的に見る上でも、結構大事なのかなって思います。
「もしもSNSがなかったら」というテーマで描くときに、私自身はやっぱりSNSに振り回されたくないと思ったんです。(たなか)
—お二方には、5月開催の『SNS展』に参加してもらうことも決定していますが、この展覧会の話を聞いたとき、どんなことを考えましたか?
小山:オシャレそうって思いました(笑)。
—小山さんは、オシャレそうなものを警戒しがちですよね(笑)。
小山:そうですね。そんなんじゃない感じで育ってきたので、オシャレなことをやってると、「自分、何してんねん?」って、思わず自分で突っ込んでしまうところがあるのかもしれないです。
—今回の『SNS展』のメインビジュアルを、たなかさんに書き下ろしていただいたのですが、この「こちらを向いている男女」という構図には、どんな意味合いが込められているのでしょう?
たなかみさきによる『SNS展』のメインビジュアル(『SNS展』のサイトを見る)
たなか:「もしもSNSがなかったら」というテーマで描くときに、私自身はやっぱりSNSに振り回されたくないというか、地に足をつけていたいと思ったんですよね。そういう意味で、スタンダードな男女が正面を向いている構図がいいんじゃないかと思ったんです。余白が多いもののほうが、いろいろ問題提起になるんじゃないかとも思って。
—なるほど。「SNSもまた、こちらを見ている」みたいな感じもありますよね。
たなか:そうですね。そんなふうに捉えていただいてもいいし……だから敢えて、どう捉えていただいてもいいようなものにしたんですよね。解釈は、人それぞれっていう。
—小山さんには、キュレーターとしても入っていただきますが、どんな作品が応募されることを期待していますか?
小山:やっぱり、何か笑えるような、面白いものが見たいですよね。普通に考えたら、「SNSがなかったら、こんな友だちとも会えなかった」みたいな流れになりそうですけど、そういうものじゃないほうが目立つんじゃないかな。僕は漫画家なので、できれば漫画が読みたいですけど。
—ちなみに、小山さん自身は、どんな作品を発表する予定なのでしょう?
小山:まだ考え中なんですけど、あんまり重い感じにはせず、いい話ふうのものでもない、単純に面白いものを作りたいなって思っているところですね。
イベント情報
- 『SNS展』
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主催:CINRA, Inc
特別協賛:LINEモバイル
参加アーティスト・キュレーター:
のん
菅本裕子
小山健
能町みね子
燃え殻
濱田英明
たなかみさき
最果タヒ
塩谷舞
UMMMI.
藤原麻里菜
東佳苗
ほか2018年4月10日(火)まで公募作品の受付中。詳しくは公式サイトへ
プロフィール
- 小山健(こやま けん)
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東京都在住。 会社員時代に趣味でブログに描いていたマンガ「手足をのばしてパタパタする」をきっかけにマンガやイラストを様々なところで執筆。 2013年に独立以降、雑誌・書籍・ウェブなどで幅広く活動中。 ときどきイベントに出て絵を描いたりしゃべったりもします。
- たなかみさき
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1992年11月14日生まれ。埼玉県出身。日本大学芸術学部を卒業後、熊本に移り住みフリーランスのイラストレーターとして活動。2017年春からは東京に拠点を移し主にグッズ制作、出版物に関わりながら活動中。お酒、歌謡、哀愁をこよなく愛し、それらは作品の中で色気を匂わせている、誰もが感じた事のある、あの青春を追い求めて。