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長谷川新×森純平 アートに関わる二人が驚いた、松戸の街の寛容性

長谷川新×森純平 アートに関わる二人が驚いた、松戸の街の寛容性

『PARADISE AIR EXHIBITION“TRANSIT”』
インタビュー・テキスト
牧浦豊
撮影:鈴木渉 編集:久野剛士 写真提供:PARADISE AIR/撮影:加藤甫

本来、相反するものではないはずの「地域」と「アート」。しかし見知らぬ人間の表現活動は、地域に規制されたり、住人から批判の的になったりする不幸なケースもある。

「宿代を払う代わりに作品を作ってください」と、地域で創造的な活動を行なったアーティストには、無償で宿泊場所を提供している、松戸のプロジェクト「PARADISE AIR」。そのアーティストインレジデンスに関わる建築家・森純平と、キュレーター・長谷川新の話から、「街とアート」の幸福な関係を探っていく。

世界との距離の近さというものは、アーティストインレジデンスでしか感じられないものなんです。(森)

—お二人の出会いはどういった経緯だったのでしょう?

長谷川:PARADISE AIRにゲストキュレーターとして誘ってもらって、もう2年目になりますか。森くんと知り合ったのは、たしか僕が企画した京都の展覧会でしたよね。

:そうでした。長谷川くんに声をかけようと思ったのは、国内外を問わず本当に多くの展覧会に足を運び現場をしっかり見ているからなんですね。それで頼まれもしないのに、感想をウェブにあげていたんです(笑)。PARADISE AIRに来る海外のアーティストもそうですが、やっぱり現地に出かける人、現場を知っている人は信頼できます。

また、長谷川くんのフットワークが産んだ経験やネットワークを活かして、PARADISE AIRの拠点、松戸にある種の軸足を置いてもらうことで何かが始まるのではないかなと。

左から:建築家・森純平、キュレーター・長谷川新
左から:建築家・森純平、キュレーター・長谷川新

長谷川新(左)。旧徳川家住宅松戸戸定邸にて、アーティストともにリサーチもおこなう。
長谷川新(左)。旧徳川家住宅松戸戸定邸にて、アーティストともにリサーチもおこなう。

長谷川:僕はひとつの所にじっとしていることが子どものころから苦手で、だから引っ越しばかりしています(笑)。本当に落ち着きがない。「キュレーターなんだから、オルタナティブスペースなどの拠点を持ったら?」と言われたりもするのですが、絶対向いてないと断言できる。

そんな自分にとって、ゲストとして関わることのできる大切な居場所を与えてもらったのだから、とても嬉しかったです。

—PARADISE AIRという場所は、森さんにとってはどんな意味があるのでしょう?

:僕は建築家として働く一方で、建築を「芸術や文化をつなぐもの」と考えていて、学生時代から音楽や演劇などのアーティストとも一緒に仕事をしてきました。そんな僕にとって素直にうれしいのは、PARADISE AIRには、世界中のいろいろな国のアーティストが、言ってしまえば勝手に街に来てくれることです(参考記事:『「宿代の代わりに作品を作ってください」松戸にある芸術家の楽園』)。しかも、美術だけでなく、音楽、映像、デザイン、ダンスなど、ジャンルも多岐にわたります。

PARADISE AIRでの森純平トークイベントの様子。
PARADISE AIRでの森純平トークイベントの様子。

:彼らを受け入れる中で気づいたのは、ロンドンとアフリカにアトリエがあるとか、カナダと韓国とを行き来しているといったように、世界に複数の活動拠点を持っていることが当たり前なこと。そうした拠点に加えてふらりと松戸に滞在しているわけで、その世界との距離の近さというものは、アーティストインレジデンスでしか感じられないものなんです。

松戸のPARADISE AIR外観
松戸のPARADISE AIR外観

長谷川:拠点というか、帰ってこれる場所、「準ホーム」みたいな場所がいくつかあって、そのひとつにPARADISE AIRがあるというのはいいですよね。熊谷晋一郎さんの至言だと思いますが、「自立とは、依存先を増やすこと」という、自立のあり方。

僕はキュレーターといっても、美術館やギャラリーなどに属さないインディペンデントのキュレーターなのでこの方面への「自立の技術」みたいなものには深く関心があります。また、以前あるキュレーターから「インディペンデントのキュレーターは、展覧会を開催すること自体をゴールにしてはいけない、インスティテューションを作ることを考えろ」と言われたことがずっと指針のひとつになっています。

インスティテューションを訳すと、「機関」や「制度」といった意味になります。展覧会はそうした言わば「土台」の上にあるもので、あくまでキュレーションとはインスティテューションへの働きかけが重要なのだ、と。自分が良いと思ったアーティストの作品を並べてセンスを競う、みたいなことではないんですね。

でも先ほど言ったみたいに、僕はインスティテューション(機関・制度)をゼロから立ち上げるみたいなことは苦手なんです。PARADISE AIRを、僕は絶対作れない。だからゲストキュレーターとして僕がPARADISE AIRに関わるとき、念頭にあるのは「アーティストインレジデンス」という仕組み、制度をどう風通しよくするか、松戸における人とアートの関わり方それ自体をどうラディカルに問い直すか、ということなんです。

長谷川新
長谷川新

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イベント情報

『PARADISE AIR EXHIBITION“TRANSIT”』
『PARADISE AIR EXHIBITION“TRANSIT”』

2018年4月17日(火)~4月29日(日)
会場:東京都 渋谷ヒカリエ aiiima 1
時間:11:00~20:00(最終日は17:00まで)
料金:無料

プロフィール

長谷川新(はせがわ あらた)

1988年生まれ。キュレーター。京都大学総合人間学部卒業。専攻は文化人類学。2013年から2014年にかけ、大阪、東京、金沢にて開催された「北加賀屋クロッシング2013 MOBILIS IN MOBILI-交錯する現在-」展においてチーフキュレーターを務める。同展は2014年カタログを出版(constellation books)。主な企画に「無人島にて―「80年代」の彫刻/立体/インスタレーション」(2014年)、「パレ・ド・キョート/現実のたてる音」(2015年)、「クロニクル、クロニクル!」(2016-2017年)、「不純物と免疫」(2017-2018年)など。

森純平(もり じゅんぺい)

1985年マレーシア生まれ。東京藝術大学建築科大学院修了。在学時より建築から時間を考え続け、舞台美術、展示、まちづくり等、状況を生み出す現場に身を置きつづける。2013年より千葉県松戸を拠点にアーティスト・イン・レジデンス「PARADISE AIR」を設立。今まで100組以上のアーティストが街に滞在している。主な活動に遠野オフキャンパス (2015-)、ラーニングをテーマとした「八戸市新美術館設計案(共同設計=西澤徹夫、浅子佳英)」(2017-)、東京藝術大学美術学部建築科助教(2017-)。

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