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燃え殻インタビュー。もしSNSがなかったとしても、僕らは出会う

燃え殻インタビュー。もしSNSがなかったとしても、僕らは出会う

『SNS展』
インタビュー・テキスト
宮田文久
撮影:豊島望 編集:宮原朋之

「しみったれさせてくれよ」と思いますよ。元気なときはSNS開かないから。

—『SNS展』で燃え殻さんが表現したいものは、どんなことですか?

燃え殻:SNSって、それこそ別に残すほどのことでもない、「今日は疲れたな」みたいな話を投稿しますよね。それに対して、離れて住んでいる誰かが、「私も疲れた」と呟く。そうやって、「みんなで生きている」ことがわかった瞬間に、自分も「まあ、別に生きていてもいいな」と思えるんじゃないか。発信する内容はポジティブでもネガティブでもいいんです。ただ「自分と同じようなことを思っている人がいるんだ」と思うことでその日は乗り切れるというか。

燃え殻

—そうですよね、だから疲れたときにSNSを開くわけですし。

燃え殻:そういうSNSの使い方をするから、よく「しみったれたこと呟いてるんじゃねえよ!」といわれるんです。でも、「しみったれさせてくれよ」と思いますよ。「元気なときはSNS開かないから」と(笑)。

—お話を伺っていると、すごく根本的なところで、燃え殻さんはSNSのことを信用しているんだと思います。

燃え殻:これはよく話すことなんですけど、僕が一番SNSに入り込んだのは、東日本大震災のときなんです。普段はテレビの美術製作の仕事をしているわけですが、そのときは行方不明者に関するものとか、精神的にとても厳しいテロップ(字幕)の発注がたくさんきたんですね。まともに眠ることもできずに作業していて、ツイッターを見ても、「この地域が大変だ」「それはガセだ」と、みんながささくれ立っているのが手にとるようにわかった。

そんなときに、「フィッシュマンズの“ナイトクルージング”という曲があるから、それを聴くとよく眠れるんじゃないか」と呟いたんです。そうしたら、「フィッシュマンズって知らない」という人がいたり、YouTubeを貼りだす人がいて……、みんなでフィッシュマンズを聴く夜があったんです。

燃え殻

—みんなで、一緒にフィッシュマンズを……。

燃え殻:「クラムボンのカバーもいいよ」と僕に教えてくれる人もいて。あの殺伐とした、余震も続く夜に、“ナイトクルージング”を聴いていたんですよ……。あのときは涙が出てきましたね。それが僕のSNSの原点なんです。だから、僕にとってはSNSが悪いものに思えないし、今もそういう繋がり方ができるといいなと思っているんです。

SNSがなかったら出会えなかった人も、たしかにいる。でも「SNSがなかったとしても俺は君に会ってたよ」というべきだと思うんです。

—SNSを介して同時にいろんな人が聴いていた、というところが大事かもしれませんね。今回の『SNS展』の会場も、きっと多種多様な人たちが集まる場になるでしょうし。

燃え殻:ある種の混沌を、どう作れるか、ということなのでしょうね。いろんな人がいる場所に自分もいて、そこで話しかけてみる、とか……。だから、SNSって「最先端」という気はしないんですよ。公立高校っぽいっていえばいいのかな(笑)。

—(笑)。いろんな人がいる、多様性があるということですね。

燃え殻:僕が高校生や中学生だったら、この『SNS展』に行くと思う(笑)。1991年に鳥栖で行われた、FMW(かつて存在した日本のプロレス団体)のロックジョイント興行みたいなものですよ!?

燃え殻

—そのたとえは、プロレス好きにしかわからないのでは(笑)。

燃え殻:プロレスのイベントに、ブルーハーツや筋肉少女帯が出てきて。ロックバンドとプロレスが融合しちゃうんですよ!

—観に行って、混沌具合にビックリする(笑)。でもそれは、福島さんの先程の想いともどこかで繋がっているのかもしれません。

福島:混沌の海を泳いでみることで、通信の会社の人間も受け止められることがあると思うんです。壮大な話になりますけれど、そうした混沌から、より良い価値が生まれていき、社会全体が良くなっていくんじゃないかな、と思います。

通信というのは、そうした環境を支えるものだと思うんです。表面的なビジネスではなく、「通信って何なんだろう?」ということに、『SNS展』を通じて改めて正面から向き合ってみたいと思っています。

福島広大(LINEモバイル)
福島広大(LINEモバイル)

—いろんな人たちが一緒にいることを、SNSのなかと、リアルな場を行き来しながら体感する場が『SNS展』なのかもしれません。

燃え殻:SNSがなかったら生きていられない、ということもあるでしょうし、SNSがなかったら出会えなかった人も、たしかにいるんです。でもそこで自分の太ももをつねって、「いや、SNSがなかったとしても俺は生きていた」し、「SNSがなかったとしても俺は君に会っていたよ」というべきだと、僕は思います。

—そうした姿勢こそが、SNSがある現在を豊かにするのでしょうね。

燃え殻:そうだと思います。そのうえで、「SNSがあるから、出会えてよかったね」といえる……、そういうことなんじゃないかな。

燃え殻

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イベント情報

『SNS展 #もしもSNSがなかったら』
『SNS展 #もしもSNSがなかったら』

2018年5月19日(土)~5月27日(日)
会場:東京都 秋葉原 3331 Arts Chiyoda メインギャラリー

時間11:00~20:00
参加アーティスト・キュレーター:
のん
菅本裕子
小山健
能町みね子
燃え殻
濱田英明
たなかみさき
最果タヒ
塩谷舞
UMMMI.
藤原麻里菜
東佳苗

プロフィール

燃え殻(もえがら)

神奈川県在住。テレビ美術制作会社で企画・人事担当として勤務。会社員でありながら、コラムニスト、小説家としても活躍。『文春オンライン』にて人生相談コーナーを担当。雑誌『CREA』にエッセイを発表。2017年6月30日、小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)が発売された。

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