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資生堂CMを手がけた小島淳二が映画に初挑戦。その理由とは?

資生堂CMを手がけた小島淳二が映画に初挑戦。その理由とは?

『形のない骨』
インタビュー・テキスト
麦倉正樹
撮影:湯浅亨 編集:久野剛士

最終的に、目の前に本当に困った人がいたときに、それを助けるのは女の人なんじゃないかと考えているんです。

—主人公「良子」のディテールは、どうなんでしょう?

小島:主人公の良子と彼女の旦那は、1970年代、1980年代のポップカルチャーを浴びながら青春期を過ごしてきた夫婦なんですよね。そういうものにすごく影響されてきたから、リアルな生活よりもカルチャーのほうが大事っていう。

だから、物やファッション、カッコいい生活をすごく大事にしているところがある。ただ、彼女らは年齢的にも時代的にも、それではうまくやっていけないところがあって。時代の価値観が大きく変わっていく中で、取り残されたような人たちなんですよね。

『形のない骨』主人公の良子/ ©teevee graphics,inc
『形のない骨』主人公の良子/ ©teevee graphics,inc

—それは小島監督自身の経験が反映されているんですね?

小島:そうですね。自分が佐賀で過ごした頃は、パンクロックだったり、YMOに代表されるテクノの世界、あるいはグラフィックの広告とかを、雑誌などのメディアで知って、すごい憧れを抱いていたんですよね。

ただ、自分の周囲を見ると、地方ならではの古いしきたりとか、守るものを持った大人たちに囲まれていて、その人たちとのギャップっていうのもやっぱりすごくあったんです。なので、そうした摩擦が、この映画の根底にあるんですよね。

『形のない骨』場面写真 / ©teevee graphics,inc
『形のない骨』場面写真 / ©teevee graphics,inc

—ただ、どこか大人になり切れない良子を、監督は突き放すことなく見つめていますよね。

小島:自分の本質的な部分で、女性の「母性」みたいなところを信じているのかもしれないです。最終的に、目の前に本当に困った人がいたときに、それを助けるのは女の人なんじゃないかと考えているんです。結局、争いごとをいろいろ起こしてるのは男性であって、女性はそれに巻き込まれているだけだと思っているんですよね。

もちろん、良子には浅はかなところだったり、現実的過ぎるところもあるとは思うんです。でも、その根底には母性愛みたいなものがあるんじゃないかと思います。それをどこかで信じているのかもしれません。

 

—彼女を取り巻く状況は、精神的にも経済的にも非常に厳しいものになっていきますが、そこをあえて見つめようというのは、是枝裕和監督の『万引き家族』(2018年)をはじめ、ある種の時代性を反映しているところもあるのでしょうか?

小島:そうかもしれないですね。たとえばSNSひとつとってみても、みんな華やかで、見てもらいたいことしか書かないじゃないですか。Instagramでも、「こんなに美味しいものを食べました」とか「こんなに美しい場所に行きました」とか、そういうことばっかりをアップしている。だから結局、その裏側にある生々しい部分がいまの時代、全然見えなくなってしまっているような気がするんですよね。

華やかな部分だけではないから、それはちょっと危険なんじゃないのって感じますよね。それぞれが持っている生々しい部分を全然気にしなくなっているんじゃないでしょうか。そこに何かひずみのようなものを感じているんです。

『形のない骨』場面写真 / ©teevee graphics,inc
『形のない骨』場面写真 / ©teevee graphics,inc

小島:CMに関しても、どんどんどこか嘘っぽくなってきている気がします。リアルに使った人の感想が書かれたSNSの口コミのほうが、CMよりもよっぽど伝わっていくのは、それも一因かもしれません。その2つの関係性が、ここ何年かでガラッと変わったような感覚があるんです。

小島淳二

—これまでのCMなどと比べて、そうした小島監督のいまの社会に対する考えが色濃く出せるのが映画だったんでしょうね。

小島:そうですね。今回の『形のない骨』という映画は、「仕事」ではなく、あくまでも自分の「表現」になっていると思います。CMと違って、必ずしもわかりやすいものではないかもしれませんが、これはこれとして、多くの人に受け止めてもらえたらうれしいですね。

『形のない骨』ポスター『形のない骨』ポスター(サイトを見る

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リリース情報

『形のない骨』
『形のない骨』

2018年7月28日(土)からユーロスペースほか全国で順次公開

監督・脚本:小島淳二
出演:
安東清子
高田紀子
田中準也
熊谷太志
杉尾夢
ジョーイシカワ
渡邊ちえ
上映時間:104分
配給:エレファントハウス

プロフィール

小島淳二(こじま じゅんじ)

1966年6月12日生まれ。佐賀県出身。文教大学教育学部美術科卒。1989年よりデジタル編集のエディターとして活躍後、ディレクターに転向する。資生堂、Honda、ユニクロ、全日空などのTVCM、ミュージックビデオ、ブロードキャストデザインなどジャンルを越えて多くの印象的な映像作品を輩出している。海外のクライントからのオファーも多い。また、映像作家としてオリジナルショートフィルムの制作にも積極的に取り組み、その作品は『RESFEST』(USA)や『onedotzero』(UK)など海外の映画祭でも注目を集めている。『Jam Films 2』の1本として劇場公開された『机上の空論』では、『RESFEST2003』にて「AUDIENCE CHOICE AWARD」を受賞。『第57回ベルリン国際映画祭』の「短編コンペティション」部門に『THE JAPANESE TRADITION ~謝罪~』が出品された。部門への日本作品の出品は31年ぶりとなる。

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