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「究極の一瞬を表現できる」loundrawが明かすイラストの強さ

「究極の一瞬を表現できる」loundrawが明かすイラストの強さ

アースダンボール
インタビュー・テキスト
杉原環樹
撮影:黑田菜月 編集:久野剛士、宮原朋之

イラストに描かれたものは全て理由があり、説明可能です。

—お話を聞いていると、「ロジックとエモーションをいかに共存させるか」にとても意識的ですよね。普通、その2つは相反するもののようにも考えられますが。

loundraw:もちろん、その2つは衝突するんですけどね。いつも、まずはロジカルに描くんです。でもそうすると、見栄えが悪い場所が出てくる。たとえば手を上げてものを持つ姿勢では、影が目にかかってしまうとか。それなら、ありえなくても違う影を描いたりする。理詰めで人が矛盾を感じないベースを作った上で、そこに感性で調整する感じです。

loundraw

—理詰めだけでは到達できない瞬間が、作り込む中で訪れる。

loundraw:そもそも、シーンがパッと思い浮かぶというのは感覚の部分なので、それを理屈に落とし込む段階で、最初の誤差が生じています。だから、ロジックで正しいと思って描くけれど、うまくいかない。

そのとき、最初に思い描いたものとロジックで考えたものがどう違うのか、ふたたび頭で考えるんです。基本的に、イラストは画面上にある光や影、物や人物の姿勢まで全てに理由があり、説明可能だと考えています。

—たとえば『ILLUSTRATION 2018』には、表紙の最初の案も掲載されていましたが、完成版は見違えるほど良いですよね。どんなことを考えて修正されたのですか?

『ILLUSTRATION 2018』表紙の初期案
『ILLUSTRATION 2018』表紙の初期案

loundraw:抑えた絵柄にしたいというのが最初にあり、そこは変えていないんです。その上で、広がりやダイナミックさを与えるため、場所をより開けたビルの屋上に設定し、背景の建物群をシルエットにして大きな雲も描きました。ただ、そうすると人、ビル、雲の要素はハッキリするんですが、背景とキャラクターとの間の距離が遠すぎたんです。前景の人物と後ろの風景が、二分された感じになってしまう。

—書き割りみたいになっちゃったと。

loundraw:そこで前後の距離感を伝える要素として、写真を宙に舞わせることにしました。そうすることで、単純なレイヤー構造に陥らず、人物の周囲の空間を意識させることができる。そして風の向きなどを決め、それに合わせて人物の髪の動きや姿勢も決定してきました。

『ILLUSTRATION 2018』表紙の変更案
『ILLUSTRATION 2018』表紙の変更案

—それぞれの細部に理由があるんですね。制作中、手が止まることはない?

loundraw:構想を決める段階ではけっこうあります。でも、1回決まれば、基本的にすぐ描けますね。僕の場合、なんとなく描き始めることはあまりなくて。ある程度構想が固まったらまずはノートに描き、それをスキャンして使います。その意味でノートは一番パーソナルな道具ですが、今回のダンボールのトレーもその中のスケッチを使いました。

loundrawのノート
loundrawのノート

—そもそも、なぜトレーを選ばれたのでしょうか?

loundraw:「ダンボールという素材で何を作ろうか」と考えて、それなら机周りの道具入れがほしいなと思ったんです。というのも、普通のトレーの場合、ペンを置いていると底が汚れてしまうのが嫌で。使い終わったあと、簡単に捨てられるのがダンボールの良さかなと。

アースダンボール社とloundrawがコラボしたプロダクト作品

アースダンボール社とloundrawがコラボしたプロダクト作品
アースダンボール社とloundrawがコラボしたプロダクト作品

—1枚のダンボールが複雑に折られてできた形態もユニークですが、とくにこだわった点はどこですか?

loundraw:ビジュアル面で言うと、いくつか線の太さや箱の色の案を出させていただいて、一番線画が映えるものを選ぶようにしました。線画が合う色というと、明度は高い方がいいんですけど、そういう意味で選んだ黄色は垢抜けていて、良い色だなと思います。

やる中では、難しさや発見も多かったです。立体的なプロダクトに印刷されると、その絵は柄として認識されるので、写実的ならいいというわけではない。線で語らないといけないという点で、このトレーはloundraw×ダンボールとして良い着地点に至ったと思います。

一方で、もしもまたプロダクトを作る機会があれば、より記号的な表現も試してみたい。そうしたことは形にして初めて気づくので、勉強になりましたね。

コラボレーション作品について、制作の裏側などがまとまった「UNBOX」パンフレットの表紙
コラボレーション作品について、制作の裏側などがまとまった「UNBOX」パンフレットの表紙(サイトを見る

イラストの魅力は、完璧な一瞬を表現できること。

—プロダクトに限らず、さまざまな可能性が開けていると思います。今後、力を入れていきたいことは何でしょうか?

loundraw:ほかの人と何かを作ることに、腰を据えて取り組みたいと思っています。昨年、大学の卒業制作として、「架空のアニメの予告編」という体裁の『「夢が覚めるまで」予告編』を制作したんです。初めてアニメ制作に挑戦して、いろんな発見があったのですが、そもそもなぜこれを作ろうと思ったかというと、ディレクション業に興味があって。

でも、アニメ制作の経験がなければ、誰にも信用してもらえない。そこで、不安もありましたが、いちから自分ひとりで制作しました。これから自分の世界をもっと遠くまで届けようと思うと、感性の齟齬を乗り越えて、大勢の人と良いものを作ることを考えないといけない。もし賛同してくださる方がいれば、チームも作りたいと思っています。

loundrawの卒業制作作品『「夢が覚めるまで」予告編』場面写真
loundrawの卒業制作作品『「夢が覚めるまで」予告編』場面写真

—その意味では、イラストにこだわらず自分の世界観を形にしたい?

loundraw:そうですね。でも、それができる理由は、イラストレーターとしてのloundrawにあることは間違いありません。そこは裏切らずにやっていきたいと思います。

—あくまでもコアにあるのはイラストだと。多くの可能性がある中で、loundrawさんにとってイラストという表現の一番の面白さとは何ですか?

loundraw:完璧な一瞬を捉えることができることですね。アニメの1コマは一瞬で流れてしまいますし、カメラはイラストほど融通が効かない。描かれる要素を自分の感性に基づいて変えられるのは、イラストならではのことだと思います。短時間で、自分の思う完璧さを相手に伝えられる。それは、今後の仕事でも意識したいところですね。

箱職人集団であるアースダンボールが、クリエイターとコラボする取り組み「UNBOX」
箱職人集団であるアースダンボールが、クリエイターとコラボする取り組み「UNBOX」(サイトを見る

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プロジェクト情報

「UNBOX」
What is「UNBOX」?

「箱から出す」という意味を持つこの言葉。「UNBOX(アンボックス)」は、箱職人集団であるアースダンボールが新たにスタートした取り組みです。「UNBOX」では、アースダンボールが箱職人として大事にしているこだわりや思いを、クリエイターとのコラボレートを通して発信していきます。

プロフィール

loundraw(らうんどろー)

イラストレーターとして10代のうちに商業デビュー。透明感、空気感のある色彩と、被写界深度を用いた緻密な空間設計を魅力とし、様々な作品の装画を担当する。声優・下野紘、雨宮天らが参加した卒業制作オリジナルアニメーション『夢が覚めるまで』では、監督・脚本・演出・レイアウト・原画・動画と制作のすべてを手がけたほか、小説『イミテーションと極彩色のグレー』、漫画『あおぞらとくもりぞら』の執筆、アーティスト集団・CHRONICLEでの音楽活動など、多岐にわたる。2017年9月に自身初の個展『夜明けより前の君へ』を開催。

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