インタビュー

mabanuaがプロデューサー視点で語る、「流行」を無視すべき理由

mabanuaがプロデューサー視点で語る、「流行」を無視すべき理由

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:池野詩織 編集:山元翔一

アーティストとして、世間の要望に添い過ぎるのはすごく危険。

—音楽的な幅の広さがここ数年のプロデュースワークでは強みとして作用した一方で、逆に言うと、ソロ作を作るにあたっては、改めてアイデンティティーを問われた数年でもあったと思うんですね。途中で一度作り直した理由も、そこにあるのかなと想像するのですが。

mabanua:そうですね。いろんな音楽を聴いて、幅広くやってる分、人にしてあげられることはいっぱいあるんですけど、自分のことになると「広げすぎちゃってたな」と感じて。今回ソロを作ってみて、自分の作品はもうちょっとパーソナルな意識で作ってよかったんだなって思いましたね。

mabanua
mabanua『Blurred』収録曲

—「広げるんじゃなくて、自分の好きなものを」という意識の転換は、もちろん一晩でガラッと変わったわけではなく、徐々に変わっていったのだと思いますが、そのなかでも、何か大きなきっかけとなるような出来事はありましたか?

mabanua:自分がアーティストとして日々暮らして音楽を聴くなかで、トレンドを意識しすぎたアルバムって、あんまり聴いてないことに気づいたんですよ。SpotifyとかApple Musicで聴いていた音楽を見てみると、そのアーティスト自身がとにかく夢中で作ったものとか、パーソナルな欲求だけで形作られた作品しか聴いてなくて。

—具体的な作品名を挙げていただくことはできますか?

mabanua:今作に参加してもらったCharaさんを例に出すと、一番ヒットしたのは『Junior Sweet』(1997年)だと思うんですけど、僕はCharaさんが一度メジャーを離れたときに作ったアルバム(2005年リリースの『Something Blue』)を一番聴くんですよ。

やっぱり、「最近のトレンドに、これとこれをちょっと取り入れてみました」じゃなくて、時代とか一切関係なく、その人の想いにフォーカスされたものを一番聴いてきたし、そういうもののほうが5年経っても10年経っても残る気がするんです。だから、自分もそういうアルバムを作るべきだなって気づいたんです。

—トレンドに近い場所にいた数年間だったからこそ、逆に自分自身であることの重要性を改めて感じた数年間だったとも言えそうですね。

mabanua:そうですね。やっぱり、アーティストとして、世間の要望に添い過ぎるのはすごく危険だと思っていて。逆に、聴いてくれる人が想像してないようなことをやるのが、アーティストとして本来あるべき姿だと思います。

自分がやりたいことをどんどんやって、アルバムごとにスタイルを変えたとしても「あの人、何やるかわかんないけど、そこがワクワクする」みたいに言われ続けるアーティストが、一番いいなと思う。たとえば、BECKって、『Morning Phase』(2014年)と新しいアルバム(2017年リリースの『Colors』)だと全然違うけど、それでも両方支持されているじゃないですか?

BECK『Morning Phase』を聴く(Apple Musicはこちら BECK『Colors』を聴く(Apple Musicはこちら

mabanua:あとは、ミシェル・ンデゲオチェロもそうですよね。ジャズだったり、ファンクだったり、ロックだったり、アンビエントだったり……あの人も何をやるかわからない面白さがある。自分が理想とするアーティストは、そういう感じなんです。

mabanua
ミシェル・ンデゲオチェロ『Ventriloquism』(2018年)を聴く(Apple Musicはこちら

今は、カラーをより明確にするべき時代。

—今って、プロデューサーの存在感が大きい時代でもありますよね。さっき話に出た、BECKの『Colors』はグレッグ・カースティンの存在が大きかったし、もちろん、mabanuaさんご自身も近年はプロデューサーとして大活躍をされていた。そういった時代感をどう捉えていますか?

mabanua:The Weekndのアルバムみたいに、「曲ごとにプロデューサーも録ってる場所も全然違う」という例もあれば、BECKとグレッグ・カースティンみたいに、一緒に1枚のアルバムを作る例もあったり、プロデュースとか作り方の流行りや傾向って、あるようでない気がする。ただ、今の時代感でいうと、よりカラーがあるもののほうが強い気がするんです。

—それはプロデューサーとしての立場から感じることですか?

mabanua:この前、藤原さくらちゃんの作品に全曲プロデューサーとして参加したんですけど(2018年6月リリースの『green』)、さくらちゃんだったらいろんなプロデューサーを立ててもいいかもしれないけど、「振り切る」っていう意味でも、1人のプロデューサーで作りきる意味は大きかったと思うんです。

さくらちゃんが自分と丸々1枚やることで、ファンにとっては一番好きなアルバムにもなり得るし、もしかしたら、一番嫌いなアルバムにもなるかもしれない。でも、いろんなものが生まれては消費されるなかで、より個のカラーを全面に出すためには、1人のプロデューサーで作るほうがいい気がするんです。

mabanua
藤原さくら『green』を聴く(Apple Musicはこちら

—ここ数年ではmabanuaさん以外にも、Kan SanoさんやMichael Kanekoさんなど「origami PRODUCTIONS」のメンバーが注目を集めましたが、それもやっぱり個の色があったからだと思うんですよね。職人的なアレンジャーとかサポートミュージシャンではなく、それぞれがアーティストであり、色を持っているからこそ、多くの人に求められたのかなと。

mabanua:各自が自分のアルバムを作っているのもあって、origamiには音楽を俯瞰で捉えられるアーティストが集まっているんじゃないかなと思います。プレイヤーに徹し過ぎると、音楽を俯瞰で見られなくなってしまう気がする。

マイクとか機材の質問をもらうことがよくあるんですけど、究極的なことを言うと、自分にとって別にマイクは音が録れたらどれでもいいんです。自分は「こういう曲にしたいから、あのスネアを使おう」って曲ありきで考えるんですけど、プレイヤーに徹してしまうと「いいドラムセットを買ったんで、これ使いたいんですよ」みたいなことになりやすいなと。

mabanua

mabanua:でも、アーティストとして作品をトータルで作るときには、全体を見据えて、よりリスナーが聴きやすい形を第一に考えるんですね。origamiだと、誰かに単曲で依頼がきたときに、「アルバム全体をプロデュースすることも全然できますよ」みたいな提案をするんですよ。で、アルバムができたら、「ちなみに、ライブもできるんですよ」って提案する。そうすると、アルバムからツアーまで、全部が1つのカラーでまとめられるんですよね。そうやって、アーティストや作品のカラーをより明確にするべき時代に合わせた提案ができるのがorigamiの強みだと思います。

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リリース情報

mabanua『Blurred』限定盤
mabanua
『Blurred』限定盤(2CD)

2018年8月29日(水)発売
価格:3,240円(税込)
OPCA-1039

[DISC 1]
1. Intro
2. Blurred
3. Heartbreak at Dawn
4. Night Fog feat. Achico
5. Fade Away
6. Overlap
7. Cold Breath
8. Tangled Up
9. Call on Me feat. Chara
10. Scent
11. Imprint
[DISC 2]
DISC 1のインストゥールメンタルバージョンを収録

mabanua『Blurred』通常盤(CD)
mabanua
『Blurred』通常盤(CD)

2018年8月29日(水)発売
価格:2,700円(税込)
OPCA-1038

1. Intro
2. Blurred
3. Heartbreak at Dawn
4. Night Fog feat. Achico
5. Fade Away
6. Overlap
7. Cold Breath
8. Tangled Up
9. Call on Me feat. Chara
10. Scent
11. Imprint

イベント情報

『mabanua tour 2018“Blurred”』

2018年11月1日(木)
会場:福岡県 BEAT STATION

2018年11月14日(水)
会場:東京都 渋谷 WWW X

2018年12月14日(金)
会場:大阪府 心斎橋 CONPASS

料金:各公演4,000円

プロフィール

mabanua
mabanua(まばぬあ)

日本人ドラマー、プロデューサー、シンガー。ブラック・ミュージックのフィルターを通しながらもジャンルに捉われないアプローチで全ての楽器を自ら演奏し、国内外のアーティストとコラボして作り上げたアルバムが世界各国で話題に。また、プロデューサーとして100曲以上の楽曲を手がけ、多数のCM楽曲や映画、ドラマ、アニメの劇伴も担当。またToro Y Moi、Chet Faker、Madlib、Thundercatなど海外アーティストとも多数共演。さらに、Shingo Suzuki、関口シンゴとのバンド “Ovall” としても活動し、大型フェスの常連となる。また、ビートメイカー・Budamunkとのユニット「Green Butter」、タブラ奏者・U-zhaanと共に「U-zhaan × mabanua」、ASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文のソロプロジェクト「Gotch BAND」のメンバーとしても活動中。

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