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ROTH BART BARON×若林恵 21世紀のバンドはどうあるべきか?

ROTH BART BARON×若林恵 21世紀のバンドはどうあるべきか?

ROTH BART BARON
テキスト
天野史彬
撮影:タイコウクニヨシ 編集:山元翔一

左から:若林恵、三船雅也(ROTH BART BARON)

音楽は空気の振動でしかない。でも、なぜそれに、人は感動するのか……その正体を知りたいんです。(三船)

若林:「P A L A C E」のことを「学校のような場所」と形容してましたよね。

三船:スクエアな学校じゃなくて、吉田松陰的な、寺子屋的なものっていうニュアンスですね。僕、『お~い!竜馬』(原作・武田鉄矢の漫画)が好きなんですけど、寺子屋で勉強しているシーンって、生徒たちは先生のほうを向いていないんですよね。それぞれ別々の方向を向きながらいろんなことをやっていて、見出した答えを先生に提出しに行く。

そういう、もっと委ねられた要素がある学校にできればいいなと思うんです。本来の意味で「学び」とはなにか? ということを考えると、それはやっぱり、外の世界を知ることであり、内側を見ることであるじゃないですか。

若林:そうだね。

三船:ただ、僕らミュージシャンがやっていることって、結局、空気を振動させているだけなので。楽器を鳴らそうが、パソコンで鳴らそうが、声を出そうが、空気の振動でしかない。そういう意味で、すごくフィジカルなんですよ。でも、なぜそれに、人はグッときたり感動したりするのか……その正体を知りたいんですよね。

三船雅也(ROTH BART BARON)

若林:これ、自分の最近の見立てなんですけどね、20世紀ってエンターテイメントの世紀だったって言われるじゃないですか。それって、そのとおりだと思うんです。特に20世紀の後半になると、家の真ん中にテレビというものが置かれて、それを中心にして、エンターテイメント消費は、経済にとっても、とても重要なものとなっていったわけですけど、そういうエンタメ消費が重大事としてあった社会においては、それを支える概念として、「余暇」というものが大事だったはずなんですね。労働に対置されるものとしての「余暇」。

この「余暇」っていうものは、「労働」っていうものの補完物としてとても重要な意味を担っていて、そこをめがけてたくさんのレジャーやエンターテイメントが開発されていったんだと思うんです。いい「余暇」を過ごすことで、いい「労働」がもたらされるという。

若林恵

若林:昔は、だから会社は社員を旅行に連れていったし、社員の飲み代や、キャバクラ代だって面倒見てたわけですよね(笑)。もちろん音楽っていうものも、一種のそうした「レジャー」として産業としても大きくなっていったんだと思うんですけど、ただ、そうした社会構成自体が、20世紀後半にもなるとだいぶ変わりはじめて、労働と余暇の区分みたいなものとかが曖昧になっていくんですよね。

となってくると、なんか、映画を見たり、音楽を聴いたりすることの、意味合いも変わってきちゃうということになるような気がするんですよ。「それって、なんのためにやってるんだっけ?」みたいな(笑)。

三船:超わかります(笑)。

若林:20世紀のある時期までは、映画っていうのは確実にエンターテイメントで、それはおそらく「現実逃避のためのファンタジー」であるという意味に限りなく近かったはずなんですけど、「余暇」ってものが意味を失っていくと同時に、それを埋めていた「エンターテイメント」ということの意味合いも変わってきたんように見えるんですよ。

で、特に最近だと、もちろんエンタメはエンタメでありながら、それが極端にジャーナリスティックなものになってきてるように見えるんですよね。音楽もそうなんですけど。

若林恵

三船雅也(ROTH BART BARON)

若林:たとえば『ブラックパンサー』(2018年公開の映画。マーベル初の黒人ヒーロー作品で、監督のライアン・クーグラーをはじめキャストと制作スタッフの大半が黒人であったことでも知られる)に対する期待って、もはや「現実逃避のファンタジー」に対する期待ではなくて、それ自体が一種のアクティヴィズムであるようなものになってたじゃないですか。

『ワンダーウーマン』(2017年公開、監督はパティ・ジェンキンス)もそうでしたし、こないだ『アナと雪の女王』(2013年公開、監督はクリス・バック、ジェニファー・リー)を見直してたら、#MeTooの源流ってこれか、って思うくらいにポリティカルなアジェンダが含まれてるんですよね。今のハリウッドって、とにかくポリティカルで社会性の強いものになっていて、気晴らしで見るようなものじゃもうなくなってるんですよね。

『WIRED』をやっていたときに、ウェブやソーシャルメディアってやっぱり限界があるなって思ったんですよ。(若林)

若林:音楽も、たとえば『Lemonade』(2016年)から今年の『コーチェラ』でのパフォーマンスから、THE CARTERS(ビヨンセとJAY-Z夫妻によるユニット)のアルバムの投下まで続いてきたビヨンセの動きって、基本的にはメガエンターテイメントではあるんだけど、同時にポリティカルなステートメントであり、ある種のジャーナリズムなんですよ(参考記事:ビヨンセがコーチェラで魅せた「Beychella」の歴史的意義。紋章を解読)。

THE CARTERSの“Apeshit”のPVなんかも、西洋文化の頂点であるルーブル美術館をブラックカルチャーが侵犯して、西洋美術史のなかに、暴力と服従といったテーマを見出しては、それを現代のコンテクストにおいて上書きする、みたいなことやってるわけですよね。

参考記事:ビヨンセとJAY-Zによるルーヴル美術館ジャックと「黒人の身体」への眼差し(記事を読む

若林:カニエ・ウェストもそうですし。といっても、彼の場合は、それを逆張りでやる感じなんですけど(笑)。つまり、音楽は、もはやエンターテイメントというよりも、非言語によるジャーナリズムみたいなものになってきているように見えるんですよ。

三船:アメリカは本当に面白いアップデートが起こりましたよね。Chance the Rapperやビヨンセのような人たちがドンッといて、それとは違った場所に、ソーシャルでも繫がれないフランク・オーシャンのような人がいる。でも、ライブではそんなフランクの曲を、みんながiPhoneで撮りながら大合唱するんですよね。その映像を見たとき、すごく感動したんです。

そう思っていたら、今度はChildish Gambinoが“This is America”(2018年)っていう強烈な曲をリリースした。でも、日本はDA PUMPの“U.S.A.”(2018年)がウケるっていう……本当に、いろんなことをよく表しているなぁって思いましたけど(苦笑)。

若林:ははははは(苦笑)。

三船:日本は、マジレスが嫌いですからね。昔は、もうちょっとマジレスしていた気がするけど、いまはみんな疲れている。でも、表では言わなくても、ネットを見れば、本気で考えている人たちがいるなってわかるんですよね。そういう部分を見ると、日本もまだ面白いなって思えるんですけど。

若林:ソーシャルの面白さはもちろんあるんだけど、マスメディアにはマスメディアの面白さも当然あって、日本だと、極端にそこがダメになっているんですよね。たとえば、Cardi Bって、ソーシャルメディアで広まったラッパーだけど、それが『ザ・トゥナイト・ショー・スターリング・ジミー・ファロン』(アメリカで放送されている深夜トーク番組)みたいなテレビ番組に出ると、彼女の名前は関係ない人たちにまで波及するじゃない?

『WIRED』をやっていたときに、ウェブやソーシャルメディアってやっぱり限界があるなって思ったんですよ。ソーシャルを使って拡散して、フォロワーを増やして、その輪がどれだけ大きくなったところで、それってどこまでいっても閉じた輪なんだ、と思わざるを得なかった。

若林恵

若林:たとえば皇居の周りをぐるぐる回っている、「安倍総理に死を」とかデカく書いてあるトラックが4台連なった右翼のトラックがあるじゃないですか? あれって、本当にあの4台しか走っていないと思うんですけど、その4台を、だいたいみんなが知っているわけです。

別に、知っているからって共感するわけではないけど、でも「社会的な認知」というものがあったとしたら、あの4台のトラックは極めて大きな認知をもってるはずなんです。なので、閉じた輪のなかでフォロワー数を増やすことよりも、そういう意味での社会性を獲得していかないと「情報」って意味ないんだな、と思うようになったんです。

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プロジェクト情報

作品
『ROTH BART BARON「P A L A C E (β)」』

3年ぶりのフルアルバムを多くの人達に届けたい、バンドとあなたが繋がる新しい場所『P A L A C E』を作るプロジェクト。

ライブ情報

『ROTH BART BARON Live at FEVER』

2018年9月16日(日・祝)
会場:東京都 新代田FEVER
開場 16:15 / 開演 17:00
料金:前売り3,000円(ドリンク別)

バンドメンバー:
三船雅也(Vo,Gt)
中原鉄也(Dr)
岡田拓郎(Gt)
竹内悠馬(Tp,Perc)
大田垣正信(Tb,Key)
西池達也(Key,Ba)

リリース情報

ROTH BART BARON
『HEX』

2018年7月25日(水)配信

プロフィール

ROTH BART BARON
ROTH BART BARON(ろっと ばると ばろん)

三船雅也(Vo,Gt)、中原鉄也(Dr)から成る2人組フォークロックバンド。2014年、米国フィラデルフィアで制作されたアルバム『ロットバルトバロンの氷河期』でアルバムデビュー。続く2015年のセカンドアルバム『ATOM』は、カナダ、モントリオールのスタジオにて現地のミュージシャンとセッションを重ねレコーディングし、「felicity」よりリリース。2018年現在は、待望のフルアルバムをこの秋にリリース。発表に向けたクラウドファンディングを開始し、バンドとお客さんの新しい世界を作る『P A L A C E (β)』プロジェクトを立ち上げた。

若林恵(わかばやし けい)

1971年生まれ。編集者。ロンドン、ニューヨークで幼少期を過ごす。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業後、平凡社入社、『月刊太陽』編集部所属。2000年にフリー編集者として独立。以後、雑誌、書籍、展覧会の図録などの編集を多数手がける。音楽ジャーナリストとしても活動。2012年に『WIRED』日本版編集長就任、2017年退任。2018年、黒鳥社(blkswn publishers)設立。

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