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ミヤケマイ×石井美加対談 アートが誘うホリスティックな美の体験

ミヤケマイ×石井美加対談 アートが誘うホリスティックな美の体験

資生堂
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊島望 編集:川浦慧 撮影協力:SHISEIDO THE TABLES

お客さまが密やかに資生堂に求めてくださっている何かをかたちにするのが、「SHISEIDO THE TABLES」のチャレンジです。(石井)

—今日、お話を伺っている「SHISEIDO THE TABLES」(総合美容施設「SHISEIDO THE STORE」4階に新設されたカフェ&コミュニティースペース)にも、ミヤケさんと石井さんは共に関わっていますね。

石井:このビルが建っているのは資生堂創業の地。弊社にとって重要な場所です。ここにこれまでにない機能をもつフロアを新設するのですから、他とは違うメッセージを発していく必要があると感じていました。

全体の外装・内装を担当していただいたnendo/onndoさんは、花椿のシルエットのモチーフや化粧品に使うマテリアルを多用されています。

SHISEIDO THE STORE外観の様子(Photographer : Takumi Ota)
SHISEIDO THE STORE外観の様子(Photographer : Takumi Ota)
SHISEIDO THE TABLESの様子(Photographer : Takumi Ota)
SHISEIDO THE TABLESの様子(Photographer : Takumi Ota)
店内のテーブルのモチーフにも椿があしらわれている(Photographer : Takumi Ota)
店内のテーブルのモチーフにも椿があしらわれている(Photographer : Takumi Ota)

—テーブルの足の曲線も花椿風で、驚きました。

石井:お店の内装が完成して、私が最初に抱いたのはお寺のような雰囲気でした。外の雑踏から距離を置いて、西洋的な都市の明るさとも違う空気感がある。資生堂の哲学も、東洋思想と西洋医学を結びつけるものです。カフェスペースも日常の空間とは違った体験を味わえる場にしたいと話し合っていたところ、ウィンドウアートのパートナーとしてマイさんのお名前があがりました。

—ミヤケさんがテーマにされている陰陽五行の世界観とSHISEIDO THE STOREについて教えてください。

ミヤケ:最初は世界を構成する要素である木火土金水(もっかどごんすい)を示す「五行」を「5つの季節」として提示しようという話でしたが、東洋の成り立ちを考えると五行だけでなく陰と陽も欠かすことはできないと考えました。

これは、異なる要素のあいだで還流していく大きな流れを意識する考え方ですから、「SHISEIDO THE STORE」の中にあるウィンドウギャラリー、そしてカフェ&コミュニケーションスペースが連動することで、ある世界観を構築させることに意味があると思ったんです。

—お店では、それらをテーマに実際にどんなことをされてきたのですか?

ミヤケ:「木」がテーマのときは、ギャラリーではトネリコを撮影する写真家の作品を鑑賞し、カフェでは野菜の根っこまで食べられるお膳を出す。店内の本棚も、ウィンドウの展示も木に関係するものセレクトされてます。

2シーズン目の「火」を経て、そのつぎは「土」のシーズン。ローカリズムやプリミティブアートに関わるブックを並べたり、ウィンドウギャラリーでは陶芸家の植松永次さんに土の作品を展示していただいています。

植松永次の作品『空に舞う』が展示されたウィンドウギャラリーの様子(撮影:繁田 諭)
植松永次の作品『空に舞う』が展示されたウィンドウギャラリーの様子(撮影:繁田 諭)
植松永次の作品『収穫』が展示されたウィンドウギャラリーの様子(撮影:繁田 諭)
植松永次の作品『収穫』が展示されたウィンドウギャラリーの様子(撮影:繁田 諭)

石井:他の銀座の商業施設が基本春夏秋冬の4シーズンにクリスマスのような特別イベントを加えたサイクルで動くのに対し、ここにはもっと独自な時間の流れが感じられるよう「五季」にしようと企画チームで話し合いました。

資生堂は創業以来銀座に根をおろしてきた会社です。単純に季節や年月という時間感覚では区切れない、目に見えないさまざまな関係をこの街と人々と丁寧に結んできたのだと想像しました。そういったお客さまが今この時代に密やかに資生堂に求めてくださっているのではないかと思われる何かをかたちにするのが、「SHISEIDO THE TABLES」のチャレンジ。

ウェブマガジン「THE TABLES」でご紹介していますが、カフェのメニュー、本やグッズのセレクト、メイクアップレッスン、読書会、食のイベントなどの企画と運営は、いろんな方にご協力いただいて思考錯誤しながら進めています。ミヤケさんがおっしゃってくださったように、世の中の変化を捉えてお客さまのライフスタイルの半歩先を提案でき、大事な価値をちゃんと守るという姿勢を大切にしたいですね。

ミヤケ:「木」では、私がウィンドウギャラリーを担当したのですが、根付きの植物を板の間に挟んで、押し花ならぬ「押し木」みたいなものを作りました。そこで使われている椿や松はすべて常緑樹で、冬枯れすることなく長く繁栄しますように、という祈りの意味を込めています。

椿はもちろん資生堂のシンボルですし、松は神が降臨するのを待つから「まつ」と呼ばれているように、神と関連した樹木です。例えば能舞台の背景に松林が描かれているのはそういう理由で、日本人にとって木、そしてそこから作られる紙はとっても縁深いもの。

石井:「木」のシーズンを終えた後に印象的だったのが、展示していたミヤケさんの作品が大分県立美術館の企画展「アート&デザインの大茶会」にも巡回して展示されたこと。そして、今度は韓国の釜山にも移っていきますよね?

ミヤケ:『釜山ビエンナーレ』期間中、釜山市美術館でボタニカという企画展に出させていただくことになりました。

ウィンドウギャラリーに展示された後、『釜山ビエンナーレ』に出展した作品『西王母の庭』
ウィンドウギャラリーに展示された後、『釜山ビエンナーレ』に出展した作品『西王母の庭』

石井:通常はワンシーズンで終わってしまうウィンドウアートが、その常識から離れて旅するように息づいていく様子は、ミヤケさんが大事にしている世界観、流動性を体現しているように思うんです。

「SHISEIDO THE TABLES」でも、古来種野菜の一生を食べる体験、1冊の本を皆で味わう体験、プロからメイクアップアドバイスを受ける体験、最先端の美のサイエンスをお試しいただく体験……なんらかの入り口からお客さまがこれまでとは異なる美の体験に興味をもって参加してくださって、気づいたことをメモや写真で日常に持ち帰って、自宅でまた試したり周りの方にお話ししてくださったり。そしてまたご友人と一緒に来店してくださるという流れが起こりはじめています。

ミヤケ:一度使ったら全部捨ててしまうっていうのは、やっぱり美術家としては抵抗ありますから、この一連の流れはとても幸運で、ありがたく思ってます。お金があるから、作って捨てちゃえばいいんだよ、で思考を止めるのではなくて、その次にも考えを広げていきたいですよね。あらゆるものには、それを必要としている人が必ずいるんです。

海外のように、ゴミ削減に熱心な企業の課税率が下がるといった制度が日本には残念ながらありません。でも、みんな心の隅っこのほうで大量生産・大量廃棄が続く社会に罪悪感を感じて、疲弊している。そういった心や社会のねじれを変えていく指針を、アーティストとして示していきたいです。

石井:「SHISEIDO THE STORE」が大事にしているのは、どれだけお客さまの肌、身体、心に寄り添って対話できるか、美しく生きるための手立てを提案できるか、というコミュニケーションです。それはマイさんが嗜んでいる茶道の世界にも似ていて、信頼関係を結ぶことで、お互いに高め合うことを理想としているように感じます。

フラッグシップストアの空間で私たちが行おうとしていることは、世の中の大きさと比べれば些細なこと。でも、ここで心新らたにお客さまや、マイさんなどパートナーの方々と一種の家族的な関係を結んでいくことが、よりきめ細やかに美や知を提供するための一歩になるのではないでしょうか。

左から:ミヤケマイ、石井美加
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サイト情報

『こちら、銀座 資生堂 センデン部』

『こちら、銀座 資生堂 センデン部』は、資生堂の「美」を世界に発信することを目的に、資生堂 クリエイティブ本部が中心となり、運営しているサイトです。私たちはテレビや雑誌の広告だけでなく、世界各地で販売されている化粧品のパッケージから、お店の空間デザイン、商品のブランドサイトまで、さまざまな「美」のクリエイションを手がけています。アイデアからフィニッシュワークまで手がけるそのスタイルは、企業の中にありながら、まるで一つの工房のようでもあります。この連載では、私たちのサクヒンが世の中に誕生するまでのストーリーや、作り手の想いを語るハナシなどを、次々とご紹介しています。

店舗情報

SHISEIDO THE TABLES

住所:東京都中央区銀座7丁目8−10 SHISEIDO THE STORE 4F
営業時間:11:00~20:00(19:30 LO)

プロフィール

石井美加(いしい みか)

プロデューサー。学習院大学大学院哲学科修了後、1994年資生堂に入社。販売会社、化粧品開発部、宣伝制作部、経営戦略部市場情報室を経て、2017年7月より現職。2015—2016年、サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、アートといった領域をデザインがつなぐプロジェクト「LINK OF LIFE」を企画・プロデュース。

ミヤケマイ

美術家。日本の伝統的な美術や工芸の繊細さや奥深さに独自のエスプリを加え、過去と現在、未来までをシームレスにつなげながら物事の本質を問う作品を制作。媒体を問わない表現方法を用いて骨董、工芸、現代アート、デザインなど既存のジャンルを問わずに天衣無縫に制作発表。大分県立美術館(OPAM)、水戸芸術館、Shanghai Duolun Museum of Modern-Art、POLA美術館、森美術館、世田谷美術館での展示及びワークショップのほか、村越画廊、壺中居、Bunkamuraギャラリーなどで個展多数。銀座メゾンエルメス、慶應大日吉キャンパス来往舎ギャラリーなど、企業や大学でもサイトスペシフィックなインスタレーションを手がける。2008年パリ国立美術大学大学院に留学。『膜迷路』(羽鳥書店/2012年)、『蝙蝠』(2017年)など4冊の作品集がある。2018年 SHISEIDO THE STOREのショーウィンドウのアートディレクターに就任。京都造形芸術大学客員教授

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