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VIDEOTAPEMUSICがマジック・ランタン展で感じた映像の根源

VIDEOTAPEMUSICがマジック・ランタン展で感じた映像の根源

『マジック・ランタン 光と影の映像史』
インタビュー・テキスト
杉原環樹
撮影:豊島望 編集:木村直大

子どものころ、テレビはまだ家族で見るものだったから、自分の部屋にテレビを置けたときはすごい衝撃だった(笑)。(VIDEOTAPEMUSIC)

見たことのない世界を目の前に出現させてくれる魔法の装置、マジック・ランタン。第2章では、18世紀パリの幽霊ショーで人々を熱狂させたこの装置が、その後、どのように各地に広がったのかが紹介されています。

この普及をあと押ししたものが、用途の広がりでした。たとえば『虫の投影』と題された版画には、顕微鏡で拡大したノミの姿を、マジック・ランタンで大勢の人々に見せる様子が描かれています。

作者不詳『虫の投影』『ル・モンド・イリュストレ』より 1874年10月3日号
作者不詳『虫の投影』『ル・モンド・イリュストレ』より 1874年10月3日号
VIDEOTAPEMUSIC

遠藤:現代の私たちも会社などでプレゼンテーションをしますが、当時、科学者の発表の手助けをしていたのがマジック・ランタンだったんです。医学の世界でも、人間の体内の構造を説明するときなどに使われていたようですね。

VIDEO:初期のころは娯楽っぽい使われ方だったのが、だんだん実用的な目的でも使われるようになったと。その広まり方って、現代でも同じですよね。いろんな用途に晒されることで、技術自体も進化するわけで。

もうひとつ、マジック・ランタンの普及にとって重要だったのが、メーカーの増加です。これによって、以前は大掛かりで高価だった装置が小型化し、比較的安く手に入るようになりました。会場には、そんな小型の装置の展示も。それを見て、VIDEOさんがあることに気がつきました。

VIDEOTAPEMUSIC

VIDEO:色味やかたちが、ちょっとアジア風ですよね。装飾にも、ヨーロッパとは違う雰囲気がある。当時の人たちが投影技術にどんな体験を求めていたのかが、この見た目にも現われていてとても面白いです。

この指摘は、遠藤さんにとっても新鮮だったようで……。

遠藤:じつはマジック・ランタンを研究しすぎて、最近はその見た目に鈍感になっていたんです(笑)。なのでいまのコメントを聞いて、ハッとしたというか。あらためて、異国への憧れがこの装置の根源にあるのかもしれないなと感じました。

さらに、最新アルバムの『ON THE AIR』でも、活動初期のころの曲だという“煙突”を発表しているVIDEOさん。それが理由かはわかりませんが、装置に付いている煙突の存在が気になるようです。

 

遠藤:この煙突は、光源の熱や煙を外に出すためのもの。一般的にガラスなど透過性のものに光を当てて映し出しますが、絵葉書のような不透過な媒体を映し出す場合は、強い光源に対応した煙突がふたつある装置を使ったようです。いまでは普通にひとつのイメージを大勢で共有しますが、こういう工夫を見ると、当時の人にとってその経験がどれほど刺激的だったのかが感じられます。

VIDEO:「みんなで見たい」欲求って面白いですよね。僕が子どものころ、どちらかというとテレビはまだ家族で見るものだったんです。映像というのは複数名で楽しむもので、個人で楽しむものだという意識は少なかった。だから、自分の部屋にテレビを置けたときはすごい衝撃だった(笑)。

でも、いまのようにスマホやパソコンで個人的に映像が見るのが自然な環境になると、今度はパブリック・ビューイングが流行ったり、やっぱり映像の共有をしたい人も出てくる。自分のライブでも、大勢で映像を見る空間には特殊な面白さがあると感じます。

障子を使った影遊び、僕もやりました。身体的にこういうイメージに馴染みがあったんでしょうね。(VIDEOTAPEMUSIC)

つづく第3章は、日本とマジック・ランタンの関わりがテーマです。この装置は、江戸期に「写し絵」として、明治期に「幻燈(げんとう)」として、2回にわたり日本に伝わりました。しかし、変わったのは呼び名だけではありません。この装置に求めるものも、時代の移り変わりのなかで変化したのです。

まず、江戸から見てみましょう。鎖国が行われていたこの時代、外国の玄関口だった長崎の出島から関西を経由して江戸に伝わったマジック・ランタンは、意外にも日本の人々にすんなりと受け入れられたと言います。

遠藤:というのも、日本にはもともと、さきほども紹介した影絵の文化があったからです。だから、この装置を見ても、「影絵じゃん」と。江戸の影絵とは、みんなで集まったときの座敷芸の一種だったようですね。

VIDEOTAPEMUSIC
 

VIDEO:これ、タコですか? ちょっと無理がありますね(笑)。

遠藤:(笑)。日本の影絵の西洋と違う特徴は、全身を使うことなんですね。さらに面白いのは、障子が影を投影するためのスクリーンだったことです。日本の住環境は、影絵に向いていたんですね。

VIDEO:障子を使った影遊び、僕もやりました。日本のホラー映画でも、障子越しに何かの気配を感じるという場面がよくありますけど、身体的にこういうイメージに馴染みがあったんでしょうね。

そうした土壌のなかで、江戸の写し絵は、影絵の延長上にある娯楽として愛されていきます。たとえば、『改良せりふ附うつしえ幾暁作』という作例では、掛け軸から抜け出ていたずらや夜這いをするダルマの姿が。「このダルマも写し絵の題材で人気があったものですが、ほかにも怪談話など、幽霊にまつわるものが人気を集めたようです」と遠藤さん。投影された映像に、普段体験できない世界を期待する人々の感性は、洋の東西を問わないようです。

『改良せりふ附うつしえ幾暁作』
『改良せりふ附うつしえ幾暁作』

いっぽう、明治期の受容は、写し絵とは別の目的を持ったものでした。富国強兵が叫ばれ、日本が欧米列強と肩を並べようとしていたこの時代。マジック・ランタンは国の教育を担う教材としてふたたび持ち帰られ、全国に普及していったのです。

遠藤:このとき興味深いのが、その技術に「幻燈」という新しい呼び名を与えたこと。さらに木製が多かった写し絵に対し、幻燈では西洋風の金属を使ったものが多くなります。名前や見た目で、人々の関心を誘ったんですね。

明治になり、「幻燈」と名付けられた金属製のマジック・ランタン
明治になり、「幻燈」と名付けられた金属製のマジック・ランタン

当時の幻燈が持っていた新奇さをよく表しているのが、「幻燈写心競」という版画シリーズ。ここでは、人物の心象風景を同じ画面に描くという昔ながらの手法を「幻燈」と呼ぶことで、浮世絵が当世風にアレンジされています。

揚州周延 (彫り:圓活)『幻燈写真競 川開』横山良八発行 1890年
揚州周延 (彫り:圓活)『幻燈写真競 川開』横山良八発行 1890年

こうした「カッコ良い」イメージを伴いながら、幻燈は教育以外にも、宗教や戦争の現場で使用されていきました。明治の幻燈の使われ方からは、ある思想を多くの人に共有させる、投影装置の怖さもチラリと覗いています。

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イベント情報

『マジック・ランタン 光と影の映像史』

2018年8月14日(火)~10月14日(日)
会場:東京都 恵比寿 東京都写真美術館 地下1階展示室
時間:10:00~18:00(木、金曜は20:00まで、入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜(9月17日、9月24日、10月1日、10月8日は開館、翌火曜は休館)
料金:500円 学生400円 中高・65歳以上250円
※小学生以下および都内在住・在学の中学生、障害者手帳をお持ちの方とその介護者は無料
※第3水曜は65歳以上無料、7月26日~8月31日の木、金曜18:00~21:00は学生・中高生無料、一般・65歳以上は団体料金

関連イベント

『マジック・ランタンをめぐるレクチャー』

2018年9月29日(土)14:30~16:30[14:00開場予定]
出演:草原真知子(メディア文化論研究者)、松本夏樹(映像文化史家)、 岩田託子(中京大学教授)
定員:190名
会場:東京都写真美術館 1階ホール
入場無料
※当日10時より1階ホール受付にて整理券配布。整理番号順入場、自由席。

担当学芸員によるギャラリートーク

2018年9月21日、10月5日(金)14:00~
※要展覧会チケット(当日消印)

イベント情報

『Grand Gallery 13th Anniversary HOME PARTY Weekday Festival for Rock`n Roll Adult』

2018年9月18日(火)
会場:東京都 代官山 UNIT
出演:
VIDEOTAPEMUSIC
ヤン富田
DJ KRUSH
Yasushi Ide presents THE MILLION IMAGE ORCHESTRA
料金:6,500円(ドリンク別)
※前売りはGrand GalleryのCD1枚付

『LOOSE RECORDS presents "LOOSE SCREWS"』

2018年9月28日(金)
会場:宮城県 仙台 CLUB SHAFT
出演:
VIDEOTAPEMUSIC
原田晃行(Hi, how are you?)
最近の話チーム
D.O.I
料金:前売2,800円 当日3,300円(共にドリンク別)

リリース情報

DMX & ピアニカ前田 / VIDEOTAPEMUSIC『TOKYO LUV STORY』(10インチアナログ)

2018年11月3日(土)発売
価格:2,160円(税込)
BRJA-00002

Side-A
A-1 東京狼少女~TOKYO LUV STORY featuring YOU
A-2 TOKYO DUV STORY

Side-AA
AA-1 東京狼少女~TOKYO LUV STORY featuring 鶴岡龍
AA-2 東京狼少女~TOKYO LUV STORY featuring Patricia Pombo

プロフィール

VIDEOTAPEMUSIC(びでおてーぷみゅーじっく)

映像ディレクター / ミュージシャン。地方都市のリサイクルショップや閉店したレンタルビデオショップなどで収集したVHS、実家の片隅に忘れられたホームビデオなど、古今東西さまざまなビデオテープをサンプリングして映像と音楽を同時に制作している。VHSの映像とピアニカを使ってライブをするほか、MV制作、VJ、DJ、イベントのオーガナイズなど活動は様々。MVでは盟友ceroを始め坂本慎太郎、小島麻由美、NRQなどジャンルレスに手がける。ほかにもモデル、女優の菊池亜希子のムック本「マッシュ」のCM映像、楽曲も製作。ダンスミュージックとしての下地に、近年盛り上がりを見せつつあるムード音楽やラウンジミュージックの文脈から繰り出すポップでメロウなメロディは絶妙であり、映像のセンス含め、まさに洒脱な音楽を作り出している。2017年10月、3rdアルバム『ON THE AIR』をリリース。映像のみならず音楽との双方向でゆらゆら踊れる夜を演出する、そんな素敵な男がVIDEOTAPEMUSICである。

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