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VIDEOTAPEMUSICがマジック・ランタン展で感じた映像の根源

VIDEOTAPEMUSICがマジック・ランタン展で感じた映像の根源

『マジック・ランタン 光と影の映像史』
インタビュー・テキスト
杉原環樹
撮影:豊島望 編集:木村直大

便利で合理的な新しい技術が登場しても、それ以前の技術が持っていた価値が無くなることはないと思うんです。(VIDEOTAPEMUSIC)

さて、展覧会もいよいよ終盤。第4章では、横長の絵をズラすことで物語を進める「スライド」と呼ばれるコンテンツが、実際の投影も含めて紹介されています。そして第5章では、マジック・ランタン以後、つまり、映画の基礎となる映像技術が誕生したあとの時代の、投影文化のあり方に焦点が当てられています。

VIDEOTAPEMUSIC

映画の誕生は、1895年ごろ。フランスのリュミエール兄弟が、「シネマトグラフ」という映写機を発明したことによります。彼らは撮影も映写もできるこの装置を使い、数々の作品を世に送り出し、人々を驚かせました。

遠藤:ここで大事なのは、シネマトグラフの発明とほぼ同時期に、エジソンも「キネトスコープ」という映像装置を発明していたことです。しかし、大勢でひとつの画面を見るシネマトグラフに対し、キネトスコープは1人で画面を覗き込むもので、ぜんぜん人気が出なかった。ここでも、映像をみんなで共有することが鍵になったんです。

さらに、ドキュメンタリー的なリュミエール兄弟の映像に対し、この技術をより幻想的な世界を描くために使ったのがジョルジュ・メリエス(1861年ー1938年、フランスの映画監督で特殊撮影技術の創始者)です。トリックを使って、未知の世界を見せるその作風の背景には、「彼がマジック・ランタンという古くからある映像文化にも意識的だったことがあると思う」と遠藤さんは語ります。

ジョルジュ・メリエス『メリエス社作品集』1902-1903年
ジョルジュ・メリエス『メリエス社作品集』1902-1903年

このように要素として継承されつつも、長尺の物語を見せることができる映画の登場で、マジック・ランタンはかつてあった娯楽の王としての座を奪われることになります。

ところで、新旧のメディアの交代は、VHSがDVDに切り替わる2000年代に、古くなりつつある記録媒体をあえて利用して制作をはじめたVIDEOさんにも関わる話題。彼はこうした入れ替わりによって、あるメディアが過去のものとなることを、どう考えているのでしょうか。

VIDEOTAPEMUSIC

VIDEO:便利で合理的な新しい技術が登場しても、それ以前の技術が持っていた価値が無くなることはないと思うんです。むしろ、そこでは古い技術の新しい価値も見えてくる。

たとえば、僕はもともとライブでもビデオデッキから音を流していたのですが、製造メーカーが無くなったこともあり、最近ライブでは使わないんです。でも、この前DOMMUNEでライブをした時にひさびさにビデオデッキを使わせてもらったら、やっぱり音の太さがぜんぜん違うんですよ。

遠藤:おっしゃるように、古い技術はいろんなことを教えてくれますよね。じつは私も、現在のプロジェクション文化を考えたときに、より親和性があるのは映画ではなく、マジック・ランタンなのではないかと考えているんです。

本展の最後を締めくくるのが、現代美術家として本展に唯一出品している、小金沢健人さんの新作『よび つぎ うつし』のコーナーです。映像やドローイングを中心に、横断的な作品を発表してきた小金沢さん。今回は、展覧会の会期がちょうどお盆の時期と重なることを踏まえた作品を展示しています。

導入として、小金沢さんの親族がそれぞれの「死後」について語った映像を見た後、鑑賞者は暗い別室へ。そこでは、部屋の中央にある1時間で1周するプロジェクターによって、この展示室で撮影された親族の姿が360度に投影されています。面白いのは、その映像の万華鏡のようなあり方。左右反転したり、乱反射したりして空間に広がる映像が、対象となった人たちの何気ない動作を演劇の舞台のように見せています。

小金沢健人《よび つぎ うつし》2018年 ビデオ・インスタレーション
小金沢健人《よび つぎ うつし》2018年 ビデオ・インスタレーション

遠藤:ここで使われているのは「ビデオフィードバック」という手法です。鏡を向かい合わせにすると、像が永遠に続くイメージが生まれますが、これはその映像版とも言えるもの。

マジック・ランタンについて、その体験はもともといろんなジャンルが未分化に混ざり合ったものと言いましたが、小金沢さんは、映画が芸術としてひとつの平面のなかに研ぎ澄まされる前の、そんな自由な投影のあり方を現代において体現する存在だと思うんです。

遠藤みゆき(東京都写真美術館学芸員)

空間的な映像体験は、先端技術を用いた近年のプロジェクション・マッピングともつながる要素です。しかし、そうした映像体験が、多くの人にとっては仕組みの分からないブラックボックス的な驚きなのに対して、小金沢さんの作品には装置と触れる手仕事の気配が。そしてそれが、映された人々の存在の生々しさにもつながっています。

遠藤:新しいプロジェクションの文化には、もちろん現代の文化として意味があると思うんです。でも、そうした最新の技術を使わなくても、こんなに面白い、型にハマらないプロジェクションをすることもできるんですよね。

VIDEO:この作品、なんだか見入っちゃいます……。効果の生み出し方が、とてもアナログですよね。映像というものが、そもそも光を取り込んでイメージを映すものだということに立ち返っているというか。映像の原理に触れている面白さがあります。それは、自分の制作ともどこかでつながるもののように思います。

VIDEOTAPEMUSIC

昔も今も、ただ「この現実」を生きるだけじゃなくて、生きるためにこそ、見たことがないものを見たいと思う人の気持ちは変わらないと思う。(VIDEOTAPEMUSIC)

こうして、展覧会ツアーは終了。写真も映画もなかった時代。小さな明かりから生まれる未知のイメージに、人々は驚き、恐怖や憧れを抱いてきました。そして面白かったのは、会場の全体を通して展示物に、幽霊や「死」の存在を感じさせるものが多かったこと。この側面は、VIDEOさんにとっても、もっとも印象的だったようです。

VIDEO:僕は制作に古いVHSテープを使っていますが、そこに映る人はもういないかもしれないんですよね。それでも残ってしまうのが記録媒体の面白さですが、それを覗いたり手を入れたりすることにはバチが当たりそうな怖さもあるんです。

そんな制作のなかで、映像の根源には霊的なものがあると感じてきたので、幽霊ショーから「死」にまつわる小金沢さんの作品まで、今回の展示物にもそうした要素が強くあったのはとても腑に落ちました。

さらに、「いまのようなデータではなくて、物理的な光と影の表現だから、マジカルなものや霊的なものの驚きを呼び込みやすかったのかもしれないですね」とVIDEOさん。たしかに技術が発達した現在、マジック・ランタンが宿していた映像の想像力の生々しい感覚は、むしろ減っているようにも感じられます。

VIDEO:昔も今も、ただ「この現実」を生きるだけじゃなくて、生きるためにこそ、見たことがないものを見たいと思う人の気持ちは変わらないと思うんです。今日は、そんなことも感じました。

世の中では高画質で便利なものも求められますが、じつは揺らぎを残したVHSのような映像のなかにこそ、未知のものが入り込む余地があるんじゃないか。そして、それはマジック・ランタンも同様で、そこから生まれる情緒やロマンにこそ、芸術の魅力もあるのかなと思っています。

忘れ去られた夢こそ、ときに魅力的になる。今回の展覧会では、そんな映像の起源の可能性を感じることができます。

VIDEOTAPEMUSIC

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イベント情報

『マジック・ランタン 光と影の映像史』

2018年8月14日(火)~10月14日(日)
会場:東京都 恵比寿 東京都写真美術館 地下1階展示室
時間:10:00~18:00(木、金曜は20:00まで、入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜(9月17日、9月24日、10月1日、10月8日は開館、翌火曜は休館)
料金:500円 学生400円 中高・65歳以上250円
※小学生以下および都内在住・在学の中学生、障害者手帳をお持ちの方とその介護者は無料
※第3水曜は65歳以上無料、7月26日~8月31日の木、金曜18:00~21:00は学生・中高生無料、一般・65歳以上は団体料金

関連イベント

『マジック・ランタンをめぐるレクチャー』

2018年9月29日(土)14:30~16:30[14:00開場予定]
出演:草原真知子(メディア文化論研究者)、松本夏樹(映像文化史家)、 岩田託子(中京大学教授)
定員:190名
会場:東京都写真美術館 1階ホール
入場無料
※当日10時より1階ホール受付にて整理券配布。整理番号順入場、自由席。

担当学芸員によるギャラリートーク

2018年9月21日、10月5日(金)14:00~
※要展覧会チケット(当日消印)

イベント情報

『Grand Gallery 13th Anniversary HOME PARTY Weekday Festival for Rock`n Roll Adult』

2018年9月18日(火)
会場:東京都 代官山 UNIT
出演:
VIDEOTAPEMUSIC
ヤン富田
DJ KRUSH
Yasushi Ide presents THE MILLION IMAGE ORCHESTRA
料金:6,500円(ドリンク別)
※前売りはGrand GalleryのCD1枚付

『LOOSE RECORDS presents "LOOSE SCREWS"』

2018年9月28日(金)
会場:宮城県 仙台 CLUB SHAFT
出演:
VIDEOTAPEMUSIC
原田晃行(Hi, how are you?)
最近の話チーム
D.O.I
料金:前売2,800円 当日3,300円(共にドリンク別)

リリース情報

DMX & ピアニカ前田 / VIDEOTAPEMUSIC『TOKYO LUV STORY』(10インチアナログ)

2018年11月3日(土)発売
価格:2,160円(税込)
BRJA-00002

Side-A
A-1 東京狼少女~TOKYO LUV STORY featuring YOU
A-2 TOKYO DUV STORY

Side-AA
AA-1 東京狼少女~TOKYO LUV STORY featuring 鶴岡龍
AA-2 東京狼少女~TOKYO LUV STORY featuring Patricia Pombo

プロフィール

VIDEOTAPEMUSIC(びでおてーぷみゅーじっく)

映像ディレクター / ミュージシャン。地方都市のリサイクルショップや閉店したレンタルビデオショップなどで収集したVHS、実家の片隅に忘れられたホームビデオなど、古今東西さまざまなビデオテープをサンプリングして映像と音楽を同時に制作している。VHSの映像とピアニカを使ってライブをするほか、MV制作、VJ、DJ、イベントのオーガナイズなど活動は様々。MVでは盟友ceroを始め坂本慎太郎、小島麻由美、NRQなどジャンルレスに手がける。ほかにもモデル、女優の菊池亜希子のムック本「マッシュ」のCM映像、楽曲も製作。ダンスミュージックとしての下地に、近年盛り上がりを見せつつあるムード音楽やラウンジミュージックの文脈から繰り出すポップでメロウなメロディは絶妙であり、映像のセンス含め、まさに洒脱な音楽を作り出している。2017年10月、3rdアルバム『ON THE AIR』をリリース。映像のみならず音楽との双方向でゆらゆら踊れる夜を演出する、そんな素敵な男がVIDEOTAPEMUSICである。

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