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Chim↑Pomが、「ロボット」でなく「人間」レストランを開く理由

Chim↑Pomが、「ロボット」でなく「人間」レストランを開く理由

『NEWTOWN 2018』
インタビュー
杉原環樹
テキスト・編集:矢島由佳子 撮影:西田香織

気づいたら「ロボットレストラン」の会社がこの土地を買ってたんです。(エリイ)

—『にんげんレストラン』は、ここ、歌舞伎町ブックセンターで開催されます。そもそも、この場所がどういうところか、教えていただけますか?

エリイ:ここは、夫(手塚マキ)が本屋をやっている場所で、上は事務所にしてる。で、3階は会議室にして、屋上はバーベキューができる場所。でも、気づいたら「ロボットレストラン」の会社がこの土地を買ってたんです。森下グループっていうんだけど。違うおじさんから借りていたはずなんだけど、たぶん、そのおじさんが森下グループに売って、ここが取り壊されることになった。

 
歌舞伎町ブックセンター。10月7日に営業終了
歌舞伎町ブックセンター。10月7日に営業終了

卯城:それで、「ここで最後になにかやる?」って聞かれて、面白そうだなと思って。注目したのは、その一連の経緯。エリイの旦那さんが、実は7月にレストランのお店を作ったんですよ。ここが営業できなくなる代わりに、森下グループが持っている空き物件を1個借りたらしくて。ロボットレストランの目の前のビルなんですけど、名前が「人間レストラン」(笑)。それが面白いなって。

—なるほど、今回のイベント名はエリイさんの旦那さんのお店の名前から取ったんですね。

エリイ:本当にロボットレストランの目の前だから、ロボットレストランの光で呑めるんだよね。

卯城:ロボットレストランがここを買い取ってどうするのかは知らないけど、ロボレス的な観光やエンターテイメントって、今の歌舞伎町の再開発のなかのひとつの流れじゃないですか。11月に新しくデカいクラブができるらしいんですけど、それも「近未来の東京」とかがテーマらしくて。歌舞伎町にはゴジラのオブジェとかもあったりするし。

そういうエンターテイメントシティとか資本の動きって、歌舞伎町や東京だけではなく、今やアート業界や日本の隅々にまで波及している。それとは違うものが『にんげんレストラン』にはありそうだなと。人間の固有性とか身体性、「公」という大きな入れ物とは別のミニマムな存在の面白さを、ここでピックアップできるかなと思ったんです。

卯城竜太
卯城竜太
『にんげんレストラン』ビジュアル
『にんげんレストラン』ビジュアル(サイトを見る

—道を育てるなかで改めて感じた人間の面白さに、今回は注目したいと。

卯城:ロボットレストランって、食事をしながらロボットを楽しんでたりするでしょ? じゃあ、『にんげんレストラン』では、食事をするだけじゃなくて「人間」を楽しめるようにしようって考えたんです。

基本的にはパフォーマンスアートのフェスティバルみたいにもなりそうだなと思っているんだけど、たとえば、関優花という弱冠21歳のパフォーマンスアーティストが2週間ずっとここでパフォーマンスをしたり、松田修くんが最後の1週間ずっと鎖でつながれて物乞いしながらサバイブしたり。そういうイベントって、あるようで意外にないですよね。

エリイ:ハジくんっていう全盲の友達がいて、歌舞伎町振興組合ビルで一緒に『見えない世界へようこそ/Let's go to Invisible world』という番組をやっていたんですけど、そのハジくんと『全盲ナイト』というのをやります。“めだかの学校”をハジくんが替え歌した“めくらの学校”という曲があるんだけど、それをハジくんが歌って、私がピアノを弾くっていう。

:「人間を楽しむ」みたいなことだけど、レストランだけに「人間を味わう」という言い方もいいんじゃない?

卯城:そう、レストランとしての機能もちゃんとあって。死刑囚が最後に食べる「Last meal」と呼ばれるものを岡やん(岡田)がリサーチして、それが食事のメニューになったり。

—「Last meal」って、どんなものがあるんですか?

岡田:最後に食べたいものが、人によってまったく違うんですよ。「ガッツリ食うなぁ」っていう人もいれば、逆に野菜だけの食事とかもあったり。そういうのを発表しているのは基本的にアメリカなんですけど、コーラ2リットルを2本、サイドメニューで注文している人がいたり。

岡田将孝
岡田将孝

卯城:日本では「Last meal」の制度って、ないの?

岡田:日本だと、死刑って朝突然宣告されるらしくて、「最後の晩餐」って感じじゃないんだって。

よく「人生の最後になにを食べるか?」って問いがあると思うんだけど、実際聞かれても全然リアリティがないし、決めるのは相当難しい。でも死刑囚は特殊な、ある意味で最後に食の選択をできる環境にあるっていうのが面白い。自分の最後の食事は想像できないけど、「幸運」なことに食いたい物を食べて死んでいった死刑囚を追体験することは、いろいろ考えるきっかけになるんじゃないかと思って、今回食事のメニューに加えました。

エリイ:やっぱり、最後の食事は考えるよね。

岡田:なに食いたい?

エリイ:本当は「有昌」(渋谷にあったラーメン屋)の椎茸そばがいいけど、ないじゃん?……まぁ、焼き肉かなぁ。

一同:(笑)。

—意外に普通ですね……。

稲岡:さんまの丸焼きとかじゃない?

エリイ:あぁ~、今美味いね。

左から:稲岡求、エリイ
左から:稲岡求、エリイ

卯城:それ、今食欲の秋だから秋刀魚食いたいだけじゃなくて?(笑)

稲岡:今も食いたいし、最後も食いたい(笑)。

卯城:……そういうメニューもあったり、内装は闇市のレイヤーも入れ込んで、天井を抜いた青空レストランにすることを基本に考えています。それにプラス、西村健太という後輩アーティストにも入ってもらって、お客さんの身体性を活かすような立体的な内装にするつもり。基本、インフラに頼らないときに立ち現れてくる身体や人間性が引き出せていけたらな、と思っています。

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イベント情報

『にんげんレストラン』
『にんげんレストラン』

2018年10月14日(水)~10月28日(日)
会場:東京都 新宿 旧歌舞伎町ブックセンタービル

参加予定アーティスト:
BLACKSMOKER(KILLER-BONG、山川冬樹、カイライバンチ)
切腹ピストルズ
ミラクルひかる
康芳夫
平井有太マン
jan and naomi
関優花
加藤翼(+和田晋侍+Jeremy Woolsy+平野由香里)
松村宗亮
伊東宣明
会田誠
松田修
三野新
Aokid
Smappa!Group
電撃ネットワーク[若手班]
西尾康之
ヘルマン・ニッチ
篠崎裕美子
contact Gonzo
MEGANE
涌井智仁
森村泰昌
ほか

『グランドオープン』

2018年11月22日(木)~2019年1月26日(土)
会場:東京都 品川 ANOMALY

『NEWTOWN 2018「アタるも八卦♡ アタらぬも八卦♡ Chim↑PomエリイのLOVE LOVE LINE診断 presented by AGARUTV」』

2018年11月10日(土)
会場:東京都 多摩センター デジタルハリウッド大学 八王子制作スタジオ(旧 八王子市立三本松小学校)

現代アート集団・Chim↑Pomのミューズ・エリイが路上占い師に!? 独自に磨かれたLINE診断術と、4000年の歴史を持つ占いを駆使して1on1で恋のお悩みを解決します。恋のお相手のLINEのトーク画面を見ながら、エリイが独断と偏見と占いでアドバイスしちゃいます。

番組情報

『Chim↑Pomエリイの占い実験実行犯 エリマニ』

隔週火曜24:00~25:00にAGARUTVで放送中

プロフィール

Chim↑Pom(ちんぽむ)

2005年、卯城竜太・林靖高・エリイ・岡田将孝・稲岡求・水野俊紀により結成。時代と社会のリアルに全力で介入した強い社会的メッセージを持つ作品を次々と発表。東京をベースに、世界中でプロジェクトを展開する。2015年アーティストランスペース「Garter」をオープン、キュレーション活動も行う。福島第一原発事故による帰還困難区域内で、封鎖が解除されるまで「観に行くことができない」国際展『Don't Follow the Wind』をたちあげ作家としても参加、2015年3月11日にスタートした。近年の主な著作に『芸術実行犯』(朝日出版社)、『SUPER RAT』(パルコ)、『エリイはいつも気持ち悪い』(朝日出版社)、『Don't Follow the Wind』(河出書房新社)、『都市は人なり 「Sukurappu ando Birudo プロジェクト」全記録』(LIXIL出版)がある。

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