インタビュー

ポール・マッカートニーが日本で語る、感受性豊かな若い人たちへ

ポール・マッカートニーが日本で語る、感受性豊かな若い人たちへ

インタビュー・テキスト
黒田隆憲
通訳:染谷和美 編集:矢島由佳子、柏井万作

愛と情熱を持って、楽しんでやれば、快感を味わえる。

—50年前に発売されたアルバムを、若い人たちが今も聴いている状況についてはどう思いますか?

2018年11月9日発売、『The Beatles(The White Album)』ニューエディション
2018年11月9日発売、『The Beatles(The White Album)』ニューエディション(サイトを見る

ポール:そこが僕も興味深くてね。The Beatlesはもちろん、Wingsもそうなんだよ。多くの若い人たちがWingsの作品を「再発見」してくれているということを、僕自身も最近は実感しているんだ。

—たとえばThe Lemon Twigsなどは、The BeatlesというよりWingsからの影響を感じる楽曲も数多くあります。

1970年にThe Beatlesが解散。1971年にWingsを結成。当時ポール・マッカートニーは29歳

ポール:本当にありがたいよね。作品というのは、リリースされて5年10年経つと忘れ去られてしまうものだと思っていたから。

なのに、The BeatlesだけでなくWingsまで今も残り続けていて、どんどん再評価が進んでいる。ツアーのセットリストに組み込めば、10代くらいの子たちが一緒に歌ってくれて、僕よりちゃんと歌詞を覚えてくれているんだ(笑)。

—(笑)。

ポール:僕にはアーサーっていう19歳の孫がいて、彼の友達がライブを観に来てくれてね。「“All My Loving”っていう曲がすごくよかったです。新曲ですか?」って言うから、「いや、ものすごく古い曲だよ」って教えてあげた(笑)。でも、その子にとっては初めて聴く曲で、新鮮だったんだろうね。

The Beatles“All My Loving”(Apple Musicはこちら

—70歳を過ぎてもなお自分自身を「Freshen Up」し続け、ポップミュージックに向き合うモチベーション、エネルギーを保ち続けられる秘訣はなんでしょう?

ポール:「楽しんでいること」と、「情熱を持ち続けること」かな。君たちもジャーナリストとしての情熱があるだろ? 「さて、これをどうやって記事にしようか?」みたいなときの、居ても立っても居られない気持ちというかさ。

—今まさに、それを味わっています(笑)。

ポール:そういうことだよ。情熱を持って、楽しんでやっていれば、それがモチベーションにもエネルギーにもなる。

だから仕事じゃなくて、遊んでいるような感覚というのかな。たとえばメンバーやスタッフが、「明日のライブ」を「明日の仕事(work)」って言ったときに、僕はいつも「いや、遊び(hobby)だろ?」って返すんだけど(笑)。

ポール・マッカートニー。10月30日、東京ドームのリハーサルにて。© MPL Communications / MJ Kim
ポール・マッカートニー。10月30日、東京ドームのリハーサルにて。© MPL Communications / MJ Kim

ポール:とにかく、楽器を演奏したり楽曲を作ったりするのが楽しくて仕方ない。だってさ、クリエーションというのはなにもないところから始まるんだよ? ところが、僕が「曲を作ろう」と思えば、2時間後にはそこに新しいものが生まれている。こんなにワクワクすることってないよ。このインタビューが終わって、君が記事を書き上げたとき、すごい快感を味わうわけじゃない?

—間違いないです。

ポール:まさにその気持ち! 愛と情熱を持って、楽しんでやれば、快感を味わえる……セックスもそうだな。

—え?

ポール:いや、なんか聞こえた?

—録音してますよ(笑)。

ポール:おっと!(笑)

煮詰まったとき、僕とジョンはいつも「17歳の自分だったらどうしていただろうね?」って考えていた。

—(笑)。ところで、「Don't trust over thirty(30歳以上は信じるな)」というフレーズが1960年代に生まれたじゃないですか。

ポール:そうだね。僕もそう思っていたよ。特に17歳くらいの頃、年上の人を哀れな目で見てしまっていた。ジョン(・レノン)と僕はアートスクールに行っていたんだけど、学校に24歳くらいの人がいてさ。無精髭を生やしている様子とか、ものすごく年上に感じたし、「気の毒に……」なんて2人で言ってた。

でも、そんな僕らが30歳になったときには、「24歳なんて若いな」って(笑)。で、40歳になれば、「30歳なんてまだまだ若いな」って思う。その繰り返しだよ。

—ポップミュージックはティーンのものとされていますし、あなた自身もおそらく20代の頃には、そういう姿勢で曲を作っていたと思うんです。

ポール:その通りだよ。曲作りとかで煮詰まったとき、僕とジョンはいつも「17歳の自分だったらどうしていただろうね?」って考えていた。だって、17歳の頃の自分が一番いい答えを知っていたから。いいものはいい、嫌なものは嫌とハッキリ言えたのは17歳の頃で、大人になればなるほど、「うーん、まあそれもアリかもね」みたいに言いがちじゃない?

—『Egypt Station』に収録された“Confidante”で、<君は僕の相談相手だった 階段の下の友達ってところさ>と歌っていて。これは永遠の相棒であるジョンのことのかな、と思っていたんですけど、ひょっとしたら「17歳の頃のポール・マッカートニー」なのかも知れないですね。70歳を過ぎた今も、あなたの心の中に「彼」は住んでいますか?

ポール:というか、僕は今も17歳だからね!(笑)

Page 2
前へ 次へ

イベント情報

『ポール・マッカートニー フレッシュン・アップ ジャパン・ツアー2018』

2018年10月31日(水)
会場:東京都 東京ドーム

2018年11月1日(木)
会場:東京都 東京ドーム

2018年11月5日(月)
会場:東京都 両国国技館

2018年11月8日(木)
会場:愛知県 ナゴヤドーム

リリース情報

ポール・マッカートニー『Egypt Station』
ポール・マッカートニー
『Egypt Station』(CD)

2018年9月7日(金)
価格:2,808円(税込)
UICC-10040

 

1.Opening Station
2.I Don’t Know
3.Come On To Me
4.Happy With You
5.Who Cares
6.Fuh You
7.Confidante
8.People Want Peace
9.Hand In Hand
10.Dominoes
11.Back In Brazil
12.Do It Now
13.Caesar Rock
14.Despite Repeated Warnings
15.Station II
16.Hunt You Down/Naked/C-Link
17.Get Started(ボーナルトラック)
18.Nothing For Free(ボーナルトラック)

プロフィール

ポール・マッカートニー

1942年6月18日、セールスマン兼アマチュア・ジャズ・ミュージシャンの父の下、リヴァプールに生まれる。1962年10月5日、ビートルズは『ラヴ・ミー・ドゥ』でレコード・デビューを果たす。1966年6月29日に初来日を果たし、6月30日、7月1日、2日に日本武道館において初のロック・コンサートを開催。ザ・ビートルズは1970年4月に事実上解散するまでの活動期間内に母国イギリスで12作のオリジナル・アルバムを発売し、その内11作が全英アルバムチャートで1位を獲得。ギネス・ワールド・レコーズでは最も成功したグループアーティストと認定されている。1970年4月10日にポールは音楽的な意見の相違などを理由にザ・ビートルズ脱退を表明したが、その1週間後に発売した初のソロ・アルバム『ポール・マッカートニー』はビルボードとキャッシュボックスでも1位を獲得。1971年には妻のリンダとの連名でアルバム『RAM』を発表。さらに同年、妻リンダ、元ムーディー・ブルースのデニー・レインの3人を中心に構成されたロック・バンド、ウイングスを結成。ウイングスは1981年の解散までに7枚のオリジナル・アルバムと1枚のライヴ・アルバムを発表。代表曲に“心のラヴ・ソング”“マイ・ラヴ”“バンド・オン・ザ・ラン”“007 死ぬのは奴らだ”“ジェット”がある。中でも1973年のアルバム『バンド・オン・ザ・ラン』は全世界で600万枚以上のセールスを記録し、ザ・ビートルズ解散後のマッカートニーのアルバムとしては最大級の商業的成功を収めた。ウィングスは1981年4月のデニー・レインの脱退表明によって自然消滅に近い形で終焉を迎える。1980年に10年ぶりとなるソロ名義のアルバム『マッカートニーII』を発表。しかし、12月8日のジョン・レノンの突然の訃報にポールは大きな衝撃を受け、数か月間、自宅に引き篭もることに。1982年に3枚目のオリジナル・ソロ・アルバム『タッグ・オブ・ウォー』と1983年に4枚目『パイプス・オブ・ピース』を発表。『タッグ・オブ・ウォー』では、スティーヴィー・ワンダーとのデュエット曲“エボニー・アンド・アイヴォリー”が大ヒットし全米・全英No.1に。『パイプス・オブ・ピース』にはマイケル・ジャクソンが参加し、デュエット曲“セイ・セイ・セイ”が全米・全英No.1を獲得。1990年3月には、ビートルズ公演以来となる24年ぶりの来日公演が実現。1993年にアルバム『オフ・ザ・グラウンド』を発表したポールは、『ニュー・ワールド・ツアー』を敢行。この年の秋にソロとして2度目の来日公演も果たしている。1998年、長年連れ添った妻のリンダが乳癌で他界。1999年にはロックの殿堂入りを果たした。2002年に7月には元モデルで平和運動家のヘザー・ミルズと再婚。11月には、3度目のソロでの来日公演が実現。2003年にはロシアのモスクワにある「赤の広場」で、外国人アーティストとして初となる大規模なコンサートを開いて話題に。2008年、ヘザー・ミルズとの離婚が成立。2011年、ナンシー・シェヴェルと3度目の結婚。2013年、オリジナル作品としては5年ぶりとなる『NEW』を発表。全英・全米では3位、日本では2位(デイリーチャートでは1位)とヒットし、ゴールドディスク(10万枚売上)にも認定された。11月には『アウト・ゼアー・ツアー』の一環で11年ぶり4回目となる来日公演を大阪、福岡、東京で実施し26万人を動員。2015年4月には『アウト・ゼアー ジャパン・ツアー2015』が京セラドーム大阪、東京ドームで計4回、そして追加公演として1966年のザ・ビートルズ以来49年ぶりの日本武道館公演が実現。2016年、4月13日のカリフォルニア・フレズノ公演を皮切りに新たなワールド・ツアー『ワン・オン・ワン・ツアー』をスタート。6月10日には45年のソロ・キャリアの集大成となるオール・タイム・ベスト『ピュア・マッカートニー~オール・タイム・ベスト』をリリース。2017年、『ワン・オン・ワン ジャパン・ツアー2017』で来日、4月27日、29日、30日の東京ドーム3公演を実施。2018年、5年ぶりのオリジナル・アルバム『エジプト・ステーション』が9月7日に発売すること、そして新しいツアー『フレッシュン・アップ・ツアー』を9月からスタートすることを発表。デビューから半世紀以上経過した現在でも、第一線で活躍し、ギネス世界記録で「ポピュラー音楽史上最も成功した作曲家」として認定されている最高のロック・レジェントである。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

君島大空“遠視のコントラルト”

屈折したイノセンスが爆発するような、君島大空の“遠視のコントラルト”のMV。『The Bends』の頃のRadioheadのようなギターとセンシティブに揺ぐボーカルが描き出す、ピュアでまばゆい楽曲世界にクラっとくる。松永つぐみが手がけた映像も素晴らしく、実験映像的なカットを重ね、儚く消え入りそうな繊細で美しい才能を見事に切り取っている。爆音で凝視してほしい。
(山元)

  1. あいみょんから年下の子たち&大人へ 直感と瞬間の大切さを語る 1

    あいみょんから年下の子たち&大人へ 直感と瞬間の大切さを語る

  2. NUMBER GIRLがオリジナルメンバーで再結成、向井秀徳のコメントも 2

    NUMBER GIRLがオリジナルメンバーで再結成、向井秀徳のコメントも

  3. 宮本浩次が感情を露わに車を運転する“冬の花”PV公開 監督は児玉裕一 3

    宮本浩次が感情を露わに車を運転する“冬の花”PV公開 監督は児玉裕一

  4. エロか、フェチか。外林健太と青山裕企が、女性ばかりを撮る理由 4

    エロか、フェチか。外林健太と青山裕企が、女性ばかりを撮る理由

  5. 多部未華子が猫の「にゃらん」と妄想旅 「じゃらん」新CM 5

    多部未華子が猫の「にゃらん」と妄想旅 「じゃらん」新CM

  6. 『RISING SUN ROCK FES』第1弾でナンバガ、スカパラ、King Gnuら8組 6

    『RISING SUN ROCK FES』第1弾でナンバガ、スカパラ、King Gnuら8組

  7. Eveとは何者か? MVの総再生回数2億2千万回を誇る彼の歩みを考察 7

    Eveとは何者か? MVの総再生回数2億2千万回を誇る彼の歩みを考察

  8. CHAIは世の中にPUNKを掲げる。皆がなりたい自分になれるように 8

    CHAIは世の中にPUNKを掲げる。皆がなりたい自分になれるように

  9. 椿昇がバッサリ斬る、社会とアートの関係「京都の街に革命を」 9

    椿昇がバッサリ斬る、社会とアートの関係「京都の街に革命を」

  10. ビル・エヴァンス生誕90周年 生涯辿る記録映画『タイム・リメンバード』 10

    ビル・エヴァンス生誕90周年 生涯辿る記録映画『タイム・リメンバード』