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no.9×森岡書店店主が鼎談 「ものの届け方」に向き合う

no.9×森岡書店店主が鼎談 「ものの届け方」に向き合う

no.9『Switch of LIFE』
インタビュー・テキスト
内田伸一
撮影:八田政玄 編集:久野剛士

デジタルとアナログ、どちらがいい悪いではなく、丁寧に作られたものには境はないんです。(城)

太田:もちろん、なによりもまず届けたいのは、音楽そのもの。でも、僕らSteve* グループでは常に、あらゆるジャンルにおいての「価値の再定義」を目指しているので、今回も音楽に対しての価値とはなにかを追求してみた結果、長い歴史をかけてできた既存の音楽業界の常識と組み合わせることで、仕組みとしての新しさも生み出せるのではないかと。そして、この「価値の再定義」という点で、森岡さんのお仕事は本当にシンパシーを感じるところが多かったんです。

:ちなみにこのパッケージは「印刷加工連」という、紙のもの作りのプロフェッショナル6社によるチームに作っていただきました。自分の思いが形になったようなこのぶ厚い「かたまり」の一つひとつに、彼らの丁寧な職人仕事が埋め込まれている。だから音楽はデジタルだけど、完全にアナログだなとも思っているんですよね。どちらがいい悪いではなく、丁寧に作られたものには境はない。このパッケージはそんな気持ちの象徴でもあります。

左から:森岡督行、no.9 城隆之

森岡:「実はアナログである」というのはなるほどと思いました。つまり、ある意味では時代のベクトルと真逆の試みから、新しいものが生まれているのが面白い。

さらに僕はこれが、とても日本的な美意識だと思うんです。引いて引いて、削ぎ落とすことで本質を出していく。いわば禅的という意味では先ほどのジョン・ケージの話にも通じるのかもしれません。そう考えると、海外の人の反応もすごく楽しみだなと思いました。

:ありがとうございます。

森岡:あと、僕はいまの東京のカルチャーでよしとされているものの原形が、ちょうど2000年前後にあらゆる分野で生まれてきたのではと感じています。これはたぶん、生活の隅々にインターネットが入ってきたことも関わっているのではないでしょうか。デジタルの恩恵を浴びつつ、同時にアナログに向かう動きがそこにはある。そして、2000年からもうすぐ20年といういま、また新しい動きが生まれて来ているように感じます。そこで城さんがこういうことを始めているのも、すごく面白いですね。

左から:森岡督行、no.9 城隆之

なにか動かしたい、 変えたいと思ってる人はいっぱいいるんじゃないかと思います。(森岡)

—「CDが売れない時代」というのも、新しいチャンスになり得る?

:たしかに、まだいろんなチャレンジができるんだという思いが、今回太田さんと新レーベルを始める力になったと自分でも思います。音楽業界の人から見たら、普通は「いまレーベルは立ち上げないでしょ」っていう時代なんですよね。でも森岡さんだって「いま書店やらないでしょ」という時代に、こうしたお仕事をしている。

森岡:たしかに(笑)。

:「しかも1冊ってどういうこと?」みたいな(笑)。でも、こちら側からしたら、いまこそ面白いことができるし、面白いことでやらないとなにも動かないでしょ? みたいなことはありますよね。

左から:森岡督行、no.9 城隆之

森岡:なにか動かしたい、変えたいと思ってる人はいっぱいいるんじゃないかと思います。

太田:単なる意外性や新規性ではない、本質的なところを考えるからこそ生まれる変化を楽しみたいですよね。通常「古いもの」を「新しいもの」が淘汰して先へ進むのがイノベーションだっていう考え方が、特に広告やデザインの世界では強い気がしますが、そういう方向じゃないイノベーションもある気がするんです。

僕自身、もともとWebデザインからこの世界に入ったので、最初の頃はいろんな人から「Web は古き良きものを淘汰する敵だ!」みたいに言われたこともあって(苦笑)。それに反発するというより、なぜ既存のメディアからすればそういう考え方になるのだろう? という疑問がありました。もっと、一緒に可能性を広げられるのではないかという思いが、日に日に強まっています。最近、空間設計や紙の加工、日本酒の世界など、長い歴史のあるカテゴリーを勉強中なのも、いまの時代だからこそつなげられる新しい価値があるのではないかという思いからです。

だから今回のプロジェクトも、「これはいい」「それはダメ」といった「メディアの壁」をなくして、それらを縦横無尽につないでみたい思いが、城さんと共通してあったんです。それを考えていくことが、音楽や本をめぐる体験をより豊かにすることにつながるのじゃないかなって。『Switch of LIFE』を第1弾の作品としてリリースするSteve* Musicとしては、今後もそこを研ぎ澄ましていきたい。もちろんno.9の次回作を含めてです。

太田伸志(Steve* Music)

:ゴメン、いまはまだやり切った感だけで、次回作のことは全然考えられないです(笑)。

—(笑)。でも、もしかしたらそこに森岡さんが関わるということも?

森岡:ありがとうございます。いますぐになにか、ということはないかもしれませんが、今日お話しさせてもらって、いつかどこかで必ずつながるんじゃないかと思っています。

:そう言って頂けると嬉しいです。こちらこそぜひ、よろしくお願いします。

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リリース情報

no.9『Switch of LIFE』
no.9
『Switch of LIFE』

2018年10月19日(金)発売
価格:2,481円(税込)
SAM001

1. Restart
2. Paper song
3. Switch of LIFE
4. Euphemistic - feat. kafuka -
5. Rotating pointer
6. Chrysanthemum
7. Puddle dance - feat. zmi -
8. make a difference
9. Circle of Water
10. Asterisk*
11. To walk alone - feat. soejima takuma -
12. 1826 D.F. Thank you.
13. Time and Days
14. For me - feat. Tomoya Ito -
15. mimosa
Bonus Track
16. I'm on my way
original track : I'm on my way by Auto&mst
17. pink snow

プロフィール

no.9 / 城隆之(なんばーないん / じょう たかゆき)

「音と共に暮らす」をテーマに、日々の暮らしに寄り添う豊かでメロディアスな楽曲を生み出す作曲家・城隆之のソロプロジェクト。2007年より始動したバンドセット[no.9 orchestra]では、no.9の音楽にギターやドラム、ヴァイオリンやピアノといった フィジカルな音楽性が加味され、フルオーケストラを想起させる壮大なライブパフォーマンスを披露。ライブ会場を包む 圧倒的な存在感で、多くのファンを魅了し続けている。

森岡督行(もりおか よしゆき)

1974年、山形県生まれ。1998年に神田神保町の一誠堂書店に入社。2006年に茅場町の古いビルにて「森岡書店」として独立し、2015年5月5日に銀座に「森岡書店 銀座店」をオープンさせた。そして2017年、6月13日に「森岡書店総合研究所」を開設。著書に『写真集 誰かに贈りたくなる108冊』(平凡社)、『BOOKS ON JAPAN 1931-1972 日本の対外宣伝グラフ誌』(ビー・エヌ・エヌ新社)、『荒野の古本屋』(晶文社)など。

太田伸志(おおた しんじ)

Steve* inc. 代表取締役社長兼CEO。1977年宮城県生まれ。クリエイティブディレクターとして、SONY、資生堂、Honda、Canon、サントリーなど、大手企業のブランディング企画を多数手がける。唎酒師の資格も持ちPen Onlineにて「日本酒男子のルール」を連載中。2018年、さらなるクリエイティブの可能性を追求するため、東京と東北を拠点に活動するクリエイティブプランニングエージェンシー、株式会社スティーブアスタリスク「Steve* inc.」を設立。同年、音楽レーベル「Steve* Musicを設立。

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