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大原大次郎×田中義久 互いのデザインを解剖するデザイナー2人展

大原大次郎×田中義久 互いのデザインを解剖するデザイナー2人展

クリエイションギャラリーG8『大原の身体 田中の生態』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊島望 編集:宮原朋之

1月11日から始まった『大原の身体 田中の生態』展は、特徴的なタイポグラフィーで知られる大原大次郎と、展覧会や芸術祭などアート関連のデザインを幅広く手がける田中義久による、デザイナー2人展。

変わっているのは、そのプロセスだ。それぞれが個別の作品や過去の制作物を発表するのではなく、大原は田中を、田中は大原を題材に、相手のデザインを解剖し、その研究成果を提示するというもの。そこで切り口になるのが「身体」と「生態」だという。

様々な媒体を通じて日々多くの人の目に触れるグラフィックデザインの世界にあって、ともにその特殊な個性によって注目を集める彼らは、いったいどんな「他人のデザインの解剖」を行うのだろうか?

互いのやるべき課題を何かしら浮き彫りにできるかもしれない。(田中)

—『大原の身体 田中の生態』とは、とても意味深なタイトルです。この2人展はどんなところからスタートしたのでしょうか?

田中:「デザイナー」が「個展」をやることについて考えていました。クライアントなしには成果物が生まれないデザインというカテゴリーのなかで、今までの自分の仕事を並べて展示することは、過去にやってきたものを見せる価値としては理解できます。ただ、僕の仕事のやり方だと、自分の成果物として認識できる部分は一端に留まるし、もしそこに焦点を当てるとしても、自分にとっては墓場のようなものになってしまいます。

デザイナーは社会と密接な職能でもあるので、その接点については考えてみたかった。そこで、自分についてではなく、他人を起点にすれば前に進めるぞと思いついたわけです。(大原)大次郎さんは同じグラフィックデザイナーではあっても表現の内容は僕とは遠い場所にいて、尊敬できる同世代の人だから、2人展という形式でお互いのデザインの概念を紐解いていく作業は面白くなるだろうと考えたんです。

左から:田中義久、大原大次郎
左から:田中義久、大原大次郎

田中:自分だけでは見えなかったものが、共有しながら進めることにより、互いのデザインがやるべき課題を何かしら浮き彫りにできるかもしれない。このような話に大次郎さんも興味を持ってくれて、2人展が実現しました。

—つまり、互いに相手のデザインについて解析し合う、という主旨の展覧会ですね。

田中:僕個人はグラフィックデザインを表層だけに留まらず、表現媒体が広がっていけば巨大な文脈や体系のネットワークとしてグラフィックデザインを捉えることもできると思っています。いっぽうで大次郎さんは、グラフィックデザインの真ん中にある「文字」から身体的な濃度をもって表現していくタイプ。

大原:『アイデア』(誠文堂新光社)というデザイン専門誌の田中義久特集に文章を寄稿したんですけど、そのタイトルが「会話の中の田中」でした。「打ち合わせなどの会話のなかで、デザインの背骨が作れる人が田中である」という内容で、僕は身体的に手を動かしていないとその背骨を体感できないタイプなんですよ。だから僕は「身体」で、(田中)義久さんは「生態」だろうと。以前から義久さんにそういう指摘をしていた人もいらっしゃいました。

大原大次郎
大原大次郎
季刊『アイデア』2018年04月号 特集:越境の遍歴 田中義久のパースペクティブ(Amazonで見る) ※現在は完売
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田中:美術関係の仕事を多くしていると、単にモノをデザインするだけだと一般的な商売になりづらいので出版形態から考えないといけない。作家ごとに適した流通と販売の場所があり、それによって広報の仕組みや告知物、イベントの打ち出し方も変化します。全体予算を作るところから始める仕事が多いので、必然的に生態的になるというか。言い換えれば「物語を作る」ってことかもしれないですね。

生産性や合理性を超えるものがあると考えていて、それを実践してもらっています。(田中)

—展覧会はどんな内容になりそうですか?

田中:「まずはお互い腹をくくりましょう」と。それぞれ自己完結的にデザインできない状況を設定しました。そして、定期的に集まって成果物を持ち寄り、アウトプットを探っていく。

大原:僕の場合は、義久さんがこれまでに作った本をスケッチしたりテキストに起こしたりすることから、相手を理解していくわけです。生物学者が昆虫や鳥を丹念に研究するように。だから僕の展示は「田中義久の生態部屋 by大原」みたいなものになると思います。対して義久さんは、手すきの和紙を使っていますね。

田中:『竹尾ペーパーショウ 2018 「precision」』で土紙を作って以来、和紙にすごく可能性を感じているんですよ。今回は、大次郎さんが葉山や山形の砂浜で拾い集めた漂流物を紙に混入させてかたちを作っていくことをやっています。というか大次郎さんに「やってもらっている」んですけど。

田中義久
田中義久

大原:漂流物で文字を書くというワークショップを10年くらいやっているんですが、今回は手漉き和紙のドロドロの液体のなかに文字を書くという、かなり当てのない環境設定をされてます。文字を定着させようとしても当然かたちは逃げていく……。だいぶ身体性を搾り取られてる気がします(笑)。

—大原さんの案はウルトラマン怪獣図鑑みたいな硬いイメージですけど、田中さんはだいぶ錬金術的な印象ですね。

田中:面白いですよ。マーブル紙のプールのなかで、指を使ったり定規を使ったりして文字を書く行為をひたすらやるんですけど、それが絶対的に文字として現れない。「それっていったい何でしょう?」というのが僕の考えているところです。視覚的に何かを伝達する行為がデザインですけど、わかりやすく伝えることだけがデザインではない。

それと、自然に抗おうとして身体を使う人間が、最終的に必ず自然に依存しなければならない姿にも興味がある。そこに可能性を感じているし、生産性や合理性を超えるものがあると考えていて、それを実践してもらっています。

和紙制作風景(撮影:田中義久)
和紙制作風景(撮影:田中義久)
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イベント情報

『大原の身体 田中の生態』

2019年1月11日(金)~2月14日(木)
会場:東京都 銀座 クリエイションギャラリーG8
時間:11:00~19:00
休館日:日曜、祝日
料金:無料

プロフィール

大原大次郎(おおはら だいじろう)

1978年神奈川県生まれ。グラフィックデザイン、展覧会、ワークショップなどを通して、言葉や文字の知覚を探るプロジェクトを多数展開する。近年のプロジェクトには、重力を主題としたモビールのタイポグラフィ『もじゅうりょく』、ホンマタカシによる山岳写真と登山図を再構築したグラフィック連作『稜線』、蓮沼執太、イルリメと共に構成する音声記述パフォーマンス『TypogRAPy』、YOUR SONG IS GOODの吉澤成友と展開する、ライブプリントとドローイングによる入稿セッション『New co.』などがある。受賞にJAGDA新人賞、東京TDC賞。

田中義久(たなか よしひさ)

1980年静岡県浜松市生まれ。近年の仕事に東京都写真美術館を始めとした文化施設のVI計画、ブックショップ「POST」、出版社「CASE」の共同経営、『The Tokyo Art Book Fair』、『アニッシュ・カプーア IN 別府』、『Takeo Paper Show』などのアートディレクションがある。また、飯田竜太(彫刻家)とのアーティストデュオ「Nerhol」としても活動し、主な個展に『Index』Foam Photography Museum(オランダ)、『Promenade』金沢21世紀美術館、『Interview,Portrait,House and Room』Youngeun Museum Contemporary Art(韓国)などある。

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