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アップリンク×MOOSIC LAB 現代に映画館が必要な理由とは?

アップリンク×MOOSIC LAB 現代に映画館が必要な理由とは?

パルコ「50年目の、新しいパルコ。」
インタビュー・テキスト
宮田文久
撮影:垂水佳菜 編集:中田光貴、久野剛士(CINRA.NET編集部)

映画館に行くということは、その街に足を運んで観る、ということなんですよね。(直井)

—先ほどSVODの話も出ましたが、そうした状況下で映画をめぐる現状や、映画館の役割についてはどうお考えですか。

直井:Webでの配信ドラマなど発表の場が多様化していて、つくり手にとって機会が増えているのはいいことですよね。実際うちにもその手の企画の相談が結構多いです。

浅井:僕はNetflixもHuluも、Amazonプライム・ビデオもU-NEXTも全部入って、横断的に見ているし、映画館でも観ますね。

直井:すごいですね!自分はどうもまだ配信では見慣れなくて。見習わないとです、本当に……。

—SVODと映画館を比較する問い自体がおかしいでしょうか?

浅井:いや、見る環境自体はもちろん違う。しかしその上で、コンテンツという面では観客にとって大きな差がない、という話なんですよ。

浅井隆

浅井:映画館としてはSVODと差をつけるために、アップリンク吉祥寺でも、田口音響研究所に開発してもらった最高のスピーカーを取り付けていますし、映写設備も含めて環境にはこだわっているんです。画の鮮明さ、音のクオリティー、スクリーンの大きさなどは、家で見るのとまったく違う。その上で、コンテンツには差がない。観てから時間が経って、心のなかに記憶として残っている映像体験としては、違いがないと思うんです。

直井:個人的には、映画館で不特定多数の、バラバラの価値観の人たちと同時に観ていることは、大事だとは思います。周囲で笑いが起きて、「えっ、なんで?」ってわからない瞬間も含めて、体験として面白い。

浅井:それは黒沢清監督も言っていることだよね、「社会の中で同じように感じる人がいること、あるいは自分と違う感性の人がいることを確認する場が映画館」と。ただ、現代では隣の人の知らない意見は、レビューサイトやアプリ、Twitterで調べれば、「あれ、この人は俺と違う感覚で見ているな」というのが、ネット空間のなかで感じることはできるでしょう。

直井:なるほど。でもそんななかで、アップリンク吉祥寺は久々に「ここに足を運んで映画を観たい!」と思わせてくれる映画館が出てきたと感じるんです。映画館に行くということは、その街に足を運んで観る、ということなんですよね。

アップリンク吉祥寺 撮影:村田雄彦
アップリンク吉祥寺 撮影:村田雄彦
アップリンク吉祥寺 スクリーン1 撮影:村田雄彦
アップリンク吉祥寺 スクリーン1 撮影:村田雄彦

直井:僕、シネクイントのオープニング作品である『バッファロー'66』(1998年、ヴィンセント・ギャロ監督)を、当時シネクイントが入っていた渋谷パルコ PART3の8階で行列に並んで観たんです。それで感動して、当時1000円した大きなパンフレットを悩みに悩んで買った挙句、パルコから出たら雨が降っていて、濡れてしまって泣きそうになった記憶があります(笑)。若い頃にそうやって渋谷のシネクイントやシネマライズ(宇田川町にあったミニシアター、2016年閉館)、それからユーロスペースやシネセゾン渋谷(道玄坂にあったミニシアター、2011年閉館)のレイトショーで、1人で映画を観るというのは「ちょっと背伸びをする」感じもあったんです。

—映画館も街も、一体となって記憶に残るんですね。

直井:吉祥寺まで来るにしても、京王線と中央線のどっちで来るのか、誰と来るか、映画を観たあとはなにを話そうか、なにを食べようかとかいろんなコミュニケーションのきっかけになると思うんです。『MOOSIC LAB』でも、参加監督同士が会場で鉢合わせた流れで飲みにいって、映画談義になったりします。

浅井:アップリンク吉祥寺のロビーでは、四六時中フィルムメーカーの人たちがウロウロしているんですよ。この取材の時期(2019年2月20日時点)だったら、『山〈モンテ〉』(2016年)の監督であるアミール・ナデリが毎日のように来ています。スクリーンも5つあるからトークショーも調整しやすく、塚本晋也監督や今泉力哉監督もトークショーで訪れてくれました。

左から:浅井隆、直井卓俊

—多様なざわめきをつくりだす「場」でこそ、新たな才能もプッシュできるのでしょうか。直井さんが手がけていたミニコミ誌『SPOTTED701』ではかつてブレイク寸前の能年玲奈(現在はのん)が表紙を飾っていましたが、『MOOSIC LAB』もそうした取り組みですよね。

『SPOTTED701』VOL.20 表紙ビジュアル
『SPOTTED701』VOL.20 表紙ビジュアル

直井:懐かしいですね。あの表紙の撮影のあと、割とすぐに『あまちゃん』が発表になって危なかった(笑)。「場」という事でいえば、2013年には『シブカル祭。feat. MOOSIC LAB (for THE GIRLS)』で、大森靖子の監督したドキュメンタリー映画『非少女犯行声明』と山戸結希監督の『おとぎ話みたい』を上映しました。2015年の『シブカル祭。』でも縷縷夢兎(ハンドメイドユニット、読み方は「るるむう」)の東佳苗さんや少女写真家の飯田エリカさんの監督作品を制作、上映したりと、パルコさんじゃなかったら受容しきれなかった企画だと思います。

『シブカル祭。2013 フレフレ! 全力女子!』メインビジュアル
『シブカル祭。2013 フレフレ! 全力女子!』メインビジュアル

直井:一方で最近の『MOOSIC LAB』では、徳永えりさんや南沙良さんといった既に著名な演者の方々に「ダメ元で聞いてみよう」と出演オファーしてみたらOK、ということも多くなってきました。森直人さん(映画評論家、ライター)のかつての言葉を借りれば「メジャーとインディーズの液状化」ということですね。さらには、先ほども言った通りYouTubeも含めて発信先の可能性はすごく開けている。そのうえで「縛り」をどう設けるか、ということを企画側としては考えています。たとえば『カメ止め』の上田慎一郎監督が映画学校の生徒に「クリエイターにとって大事なものとは?」と聞かれて「締め切りです」と答えたらしいんですが、まさに『MOOSIC LAB』は上映日、つまり納期が決まっているんですよ。

—音楽×映画というテーマもある種の「縛り」ですし、プログラムピクチャーたる所以ですね。

直井:インディーズ映画で納期が決まっているというのも不思議なんですけどね。でも今では高校生でもVFXの天才はいるし、みんなドローンも飛ばす。プロ顔負けのものがつくれるなかで、アーティストと作らなきゃいけないとか、何日までに作らないといけないとか、色々な「縛り」があって追い込まれたときに、アイデアや工夫が生まれる気がしています。

—メジャーとインディーズが液状化していくなかで、アイデアや工夫は一層重要になってくるでしょうね。

浅井:今はサブカルチャーやインディーズという言葉が反転して、なにが本当にかっこいいのかわからなくなっている、と僕は思うんです。もうだいぶ前にメジャーレコード会社のなかにインディーズレーベルができる状況を見てきて、「今のインディーズってなんだろう」と思うし、液状化した時代に自ら自分たちの表現を「サブカル」ということは、相当イタいなと。

これからのパルコに期待するのは、液状化のなかにとどまらずに、世界トップクリエイターと組んで広告をつくるとかイベントや展示を企画してほしいし、それを見てみたい。そんな西武やパルコの遺伝子は、外の人間である僕自身も引き継いじゃったわけです。そうして継承されたものを、これからもっと出していきたいですね。

左から:直井卓俊、浅井隆
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サイト情報

『パルコ50周年キャンぺーンサイト』
『パルコ50周年キャンぺーンサイト』

2019年1月1日からスタートしたパルコの50周年キャンペーン「50年目の、新しいパルコ。」の特設サイト。同サイトでは、インタビュー企画や謝恩企画など、随時情報が更新中。

プロフィール

浅井隆(あさい たかし)

1955年、大阪生まれ。1974年演劇実験室天井桟敷に入団し舞台監督を務める。1987年アップリンクを設立。デレク・ジャーマン監督作品をはじめ、国内外の映画を配給。カンヌ映画祭に出品された黒沢清監督作品『アカルイミライ』などの製作プロデュースを担当。2005年には渋谷区宇田川町に映画館、ギャラリー、カフェレストランが集まるカルチャー・コンプレックス『アップリンク渋谷』をオープン。2011年にカルチャー・マガジン『webDICE』、2016年にはオンライン・シアター『アップリンク・クラウド』をスタート。アレハンドロ・ホドロフスキー監督の2017年公開作品『エンドレス・ポエトリー』では、共同プロデューサーを務める。2018年に5スクリーンのミニシアターシネコン、『アップリンク吉祥寺』をオープン。

直井卓俊(なおい たかとし)

1976年、栃木県生まれ。法政大学卒業後、アップリンク勤務を経て、SPOTTED PRODUCTIONSとして配給、宣伝などを手がける。配給作品に『SR サイタマノラッパー』シリーズ『フラッシュバックメモリーズ3D』『自分の事ばかりで情けなくなるよ』『百円の恋』、企画プロデュース作品に『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』『5つ数えれば君の夢』『私たちのハァハァ』『少女邂逅』、気鋭の映画監督×アーティストによる映画祭『MOOSIC LAB』など。6月には初の演劇プロデュース作品『アルプススタンドのはしの方』が浅草九劇で上演される。

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