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Maison book girlの変化。暗がりの語り部から、物語の主人公へ

Maison book girlの変化。暗がりの語り部から、物語の主人公へ

Maison book girl『SOUP』
インタビュー・テキスト・編集
矢島大地(CINRA.NET編集部)
撮影:垂水佳菜

不穏。昨年11月にMaison book girlのワンマンライブ『Solitude Hotel 6F yoru』を観た時に感じたことである。

メンバーの表情が見えないほど暗い照明、首のない鳥の写真が流れていく背景。心電図を模した映像が流れ、そこに乗る心拍がビートになっていく演出。ステージの中心に立っているものの、あくまで陰影に富んだ物語の語り部、あるいは次々に展開していく物語の登場人物に憑依するようにパフォーマンスする4人の姿に怖さのようなものを覚えた。そんな徹底的に無機質なライブで歌われるのは、「狭い部屋」の中に逃避して自分の世界を守り切ろうとする人間の心模様だった。この徹底的に閉じた世界は、一体なんなんだ?

サクライケンタがトータルプロデュースを担い、詞曲を手がけているMaison book girl。しかし自分が目撃したあの「生々しい暗闇」の奥にあるものとはなんなのかを、4人自身にこそ訊きたいと思った。4月3日にリリースされるシングル『SOUP』は、狭い部屋の中の景色だけを歌い続けたブクガが、ようやく開けた地平へ踏み出そうとする歌と音に満ちている。そんな新フェーズに立った今だからこそ、「ブクガ」の軌跡と核を4人に訊いた。

左から:井上唯、和田輪、矢川葵、コショージメグミ
左から:井上唯、和田輪、矢川葵、コショージメグミ

自分の感情を出すというよりは、別世界的な場所と客席を繋ぐ役割を担っているのがMaison book girlなのかな。(和田)

—ライブを観ていると、4人とも顔を見せない場面が多いですよね。照明の影を顔に落として、表情を表に出さないというか。踊ったり歌ったりする以上に、4人がステージ上の物語を伝える役割のように見えるのが面白いなと思って。4人自身は、Maison book girl(以下、ブクガ)の表現をどういうものだと思われているんですか。

コショージ:そう言われてみると、ステージ上で自分たちの顔が見えているかどうかは意識したことがなかったかもしれないです。見えているか見えていないかはまったく関係ないというか……自分たちを見てほしいというより、曲と映像と照明、ステージ通しての物語を見てほしいっていう気持ちが強いかも。その登場人物として私たちがいるっていうか。

矢川:そうですね。自分たちを見てほしいという以上に、映像だったり、照明だったり、ライブのセットリストの流れだったり。全体としてカッコいいと感じてほしいと思っていて。

矢川葵
矢川葵

—そこが面白くて。今や「アイドル」とひと言で言っても多種多様なのは承知していますが、それでもブクガはアイドルとして括られることが多いですよね。

コショージ:そうですね。

—だけど、そのシーンの方法論とは逆をいくような、むしろ個々のキャラクターを消して無機質にしていくライブをされていると感じたんです。その辺に関しては、自分たちではどういうふうに感じているんですか。

井上:もちろんステージ裏ではバカみたいな会話もしている4人なんですけど(笑)、確かにライブ中はクールだったりストイックだったりって言われることが多いので、きっとライブ用のスイッチが入ってるんだと思います。曲が難しくて複雑なので、グッと集中しないといけないっていうのは大きいと思うんですけどね。

—そうですよね。変拍子も多いし、構築的なリズムとビート感を軸にした楽曲が主体で。ライブ自体も、たとえば首のない鳥の写真がスライドで流れ続けたり、心電図を模した映像に乗せた心拍がビートになったり、静かなトーンの詩の朗読でライブが展開していったり。単なる楽しさや盛り上がれるものとは真逆の要素で構成されているというか。

和田:なるほど。変拍子の難しい楽曲も、私たちのダンスによって噛み砕いた形で聴けたり、4人が顔を隠されて抑制されている分、そこに私たちの熱量が出れば出るほど生々しいものとして感じられたり――考えてみると、そうやってサクライ(ケンタ / プロデューサー)さんの脳内にある別世界的な場所と客席を繋ぐ役割を担っているのが、「Maison book girl」なのかなって思いました。

和田輪
和田輪

—ここではないどこかを描いたものと、現実世界との媒介?

和田:そういう意識が強いんだと思います。だから自分の感情をストレートに出すというよりは、自分の中にあるものを濾過して出している感覚なんですよ。ブクガの曲によって出てくる、自分の「内側の部分」が確かにあるというか。

—それは、言葉にしてみるとどういう部分なんですか。

和田:うーん……それを言語化するのが難しい(笑)。でもやっぱり、ステージに自分の自我がそのままあるかと言われると、そうではないんですよ。もちろん、ステージ上で表現している方なら多かれ少なかれそうだとは思うんですけど、私たちの場合は、自分たちが主役になっているというよりも……自分の中の一面に集中して、ステージ上の演出やストーリーの間を繋いでいる、という感覚がある。

コショージ:そうだね。「自分の人間っぽさを出そう」とか、「自分という人間を表現しよう」とは考えてこなくて。曲があってダンスがあって、サクライさんが作る曲の物語に沿った感情はなにかを考えて、それの間に立って「こういうお話がありました」って伝えてる感じ。

たとえば、去年の11月にやったワンマンは『Solitude Hotel 6F hiru / yoru / yume』っていうタイトルをつけて、昼夜の2公演を含めた3公演で『yume』(2018年11月リリースのアルバム)を表現するコンセプトがあったんです。だから『yume』を現実世界に持ってきて体現するために、舞台みたいなライブの見せ方をして。

で、舞台には脚本があって、演者さんがいるじゃないですか。でもブクガの場合は、ある意味ドキュメンタリーの側面も持っていると思うんです。まるっきり「Maison book girlを演じている」っていうわけでもないんだけど舞台のようでもあるし、その一方では確かに自分たち自身の話でもあるっていう――その全部が合わさったごちゃごちゃ感があると思います。どちらかと言えば、保育園の時にやったお遊戯会みたいな雰囲気に近いのかもしれないですけどね。

Maison book girl『yume』を聴く(Apple Musicはこちら

和田:確かに。お遊戯会の場合は、お客さんが見ているのって園児のパーソナリティーだったりしますもんね。物語を演じているんだけど、それは自分たち自身でもあるっていう。そこが面白いのかもしれないです。

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リリース情報

Maison book girl
『SOUP』初回限定盤
Maison book girl
『SOUP』初回限定盤(CD+Blu-ray)

2019年4月3日(水)発売
価格:4,000円(税込)
PCCA-04771

[CD]
1. 鯨工場
2. 長い夜が明けて
3. まんげつのよるに
4. 鯨工場(instrumental)
5. 長い夜が明けて(instrumental)
6. まんげつのよるに(instrumental)

[Blu-ray]
2018年12月16日開催
「Solitude HOTEL 6F yume」@ヒューリックホール東京 全編収録

  • Apple Musicで聴く
  • Maison book girl 『SOUP』通常盤(CD)

    2019年4月3日(水)発売
    価格:1,300円(税込)
    PCCA-04772

    1. 鯨工場
    2. 長い夜が明けて
    3. まんげつのよるに
    4. 鯨工場(instrumental)
    5. 長い夜が明けて(instrumental)
    6. まんげつのよるに(instrumental)

    ライブ情報

    『Maison book girl tour 2019 spring』Final
    『Solitude HOTEL 7F』

    2019年4月14日(日)
    会場:東京都 昭和女子大学・人見記念講堂

    プロフィール

    Maison book girl(めぞん ぶっく がーる)

    矢川葵、井上唯、和田輪、コショージメグミによるポップユニット。音楽家サクライケンタが楽曲から世界観の構築までを手がける。2016年11月にメジャーデビュー。2018年11月にはセカンドフルアルバム『yume』をリリースし、『Solitude HOTEL 6F hiru / yoru /yume』と冠したワンマンライブ3公演を行った。2019年4月14には、昭和女子大学・人見記念講堂にて『Solitude HOTEL 7F』を開催する。

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