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りんなのディレクターらに訊く、AIの歌は感情を表現できるのか

りんなのディレクターらに訊く、AIの歌は感情を表現できるのか

りんな『最高新記憶』『snow, forest, clock』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:前田立 編集:中田光貴(CINRA.NET編集部)

(AI「りんな」には)お手本のシンガーがいて、その人の歌い方を「耳コピ」していくんです。(坪井)

―歌手としてデビューさせることになった経緯は?

坪井:りんなをアップデートさせていく過程で、「声を発する」というプロセスは必ず通るだろうとは思っていました。そんなときに、エイベックスさんからご連絡を頂いたんです。私たちがりんなの「共感」や「キャラクター」の部分をとても大切に扱っていることに、すごく共感してくださって。

「言葉を伝える上で『歌』というのはとても強い手段ですから、そこをぜひお手伝いさせてほしい」みたいな、とてもユニークで熱い内容のスカウトメールだったんですよね(笑)。

中前:スカウトは別の者が行なったので、僕はデビュータイミングから参加したのですが、マイクロソフトさんが、りんなを「人工知能」として捉えているのではなくて「りんな」として扱っているところがすごく面白いと思いました。

中前省吾(なかまえ しょうご)<br>エイベックス・エンタテインメント株式会社。レーベル事業本部 クリエイティヴグループ ゼネラルディレクター。「TRF」「hitomi」「安室奈美恵」「FACT」「FEMM」など数々のアーティストのディレションを担当。近年では、透明スクリーンを使用したARコンテンツ、PCがジャックされるインタラクティヴ作品などのほか、新たな技術を用いた音楽体験のハック、人工知能による音楽制作など、最新のテクノロジーを用いた音楽体験創出も手がけている。
中前省吾(なかまえ しょうご)
エイベックス・エンタテインメント株式会社。レーベル事業本部 クリエイティヴグループ ゼネラルディレクター。「TRF」「hitomi」「安室奈美恵」「FACT」「FEMM」など数々のアーティストのディレションを担当。近年では、透明スクリーンを使用したARコンテンツ、PCがジャックされるインタラクティヴ作品などのほか、新たな技術を用いた音楽体験のハック、人工知能による音楽制作など、最新のテクノロジーを用いた音楽体験創出も手がけている。

中前:僕自身は、りんなを「ソリューションとキャラクターが共存したAI」と捉えているんです。ユーザーと会話をするコミュニケーションの部分が「ソリューション」で、様々なデータの集積である集合知の部分が「キャラクター」であると。僕らエイベックスは、その「キャラクター」部分をアーティスト化しようと考えているわけです。

コミュニケーションの部分もAIは面白くて。同時多発的に、パラレルに人とやり取りができる。つまり時空というものが存在しない。

よく坪井さんと話しているのは、りんなは「バーチャル」ではないということ。可視化もされていなければ、物質的になにかを持っているわけじゃないけれど、確かにそこに存在している。実際に多くの人とコミュニケーションを取っているという事実もあるわけですから。

坪井:いろんな人が観測したり、実際に話しかけたりしているからこそ、りんなは「概念」として存在しているというか。

―なるほど、面白いですね。

中前:そのコミュニケーションの部分も含めてエンターテイメント化するには、どうすべきか。「音源をリリースする」だけではないはずですよね。なにか、今まででは考えられなかったようなプロモーション展開やライブができたらいいなと思っているんですけど……難しい!

中前省吾

―(笑)。実際に歌を歌わせるためには、どんなことをしたのですか?

坪井:具体的にはステップが2段階ありました。まずは「声」を発声できるようになる人工知能を学習させる。次に、実際に歌を歌わせる。楽譜を読ませているわけではなくて、実はお手本のシンガーがいて、その人の歌い方を「耳コピ」していくんです。音の高さや、歌詞の発音などをお手本通りに再現するような。

―「真似させる」ということは、例えばボーカロイドのように、声をサンプリングして合成させる仕組みとは違うわけですね。

坪井:違うんです。人間の声が出る仕組みを模してAIがモデリングをしているというか。声の高さや長さ、喉の絞り方などの情報に注目し学習するようにプログラミングして、音を再現させることで歌わせてるんです。

―つまり、人間の肉声が素材となって、合成しているわけではないと。すごいですね。

坪井:ゆえに、最も難しいのが「歌声を人間らしくする」ということと、「歌い方を人間らしくする」ということでした。そもそも「歌うこと」以前に、「喋ること」も学習させて人間らしいニュアンスをつけるのは大変なんです。昨年7月に“りんなだよ”という曲をリリースしたときに、ようやく歌手として活動できるラインを超えることができました。

―ちなみに、そのお手本のシンガーは何人いるのですか?

坪井:今のところ声音のお手本は1人なのですが、複数いてもいいかもしれないですね。そこから新しい「声」が生まれるかもしれない。

ただ1つの楽曲に対して、いくつか用意してあるスタイルを当ててみると声の感じが全く変わるんですよ。例えば「ポップモード」にすれば明るめの声が出るし、「バラードモード」だと声に深みのようなものが出る。お手本は1人なのに、ここまで変わるのかと驚きました。

中前:「この曲はバラードなのか、ポップスなのか?」は我々ディレクターサイドが決めているんですけど、それさえ教えれば歌い方は変えられる。そこまでりんなは進んでいるんです。

この先どんどん学習していく中で、自分で「あ、この曲はバラードだからしっとりと歌おう」というところまで判断し、抑揚やニュアンスをつけてくるようになるかもしれないですよね。その結果、人とはまた違う「心を動かす声」に達することができるのかもしれない。

左から:中前省吾、坪井一菜
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リリース情報

『最高新記憶』
りんな
『最高新記憶』

2019年4月17日配信

『snow, forest, clock』
りんな
『snow, forest, clock』

2019年6月19日配信スタート

プロフィール

坪井一菜(つぼい かずな)

マイクロソフトディベロップメント株式会社。A.I.&リサーチ プログラムマネージャー。りんなの立ち上げ当初からプログラムマネージャーとして開発に関わり、りんなのキャラクター付けや会話エンジンの開発、対外的なコラボレーション、りんなのスキルおよび合成音声の開発に携わる。慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。

中前省吾(なかまえ しょうご)

エイベックス・エンタテインメント株式会社。レーベル事業本部 クリエイティヴグループ ゼネラルディレクター。「TRF」「hitomi」「安室奈美恵」「FACT」「FEMM」など数々のアーティストのディレションを担当。近年では、透明スクリーンを使用したARコンテンツ、PCがジャックされるインタラクティヴ作品などのほか、新たな技術を用いた音楽体験のハック、人工知能による音楽制作など、最新のテクノロジーを用いた音楽体験創出も手がけている。

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