インタビュー

なぜあいみょんはブレイクしたのか? 大谷ノブ彦×柴那典が語る

なぜあいみょんはブレイクしたのか? 大谷ノブ彦×柴那典が語る

テキスト
柴那典
撮影:CINRA.NET編集部 編集:中島洋一、中田光貴(CINRA.NET編集部)

あいみょんこそが、ようやく登場したミスチルとスピッツの正統後継者である。(柴)

大谷:じゃあ、あいみょんはなんでここまでブレイクしたんですかね?

:結論から言うと、あいみょんは、J-POPシーンにようやく登場した「ポストミスチル(Mr.Children)」だと思うんです。ちゃんと本人がそのヒントを言ってる。キーパーソンは浜田省吾なんですよ。ミスチルもあいみょんも、浜田省吾がルーツである。

大谷:そうですよね。桜井さんは浜田省吾さんのことをめちゃくちゃ研究してるし、歌詞にすごく比重を置くのもそうだし。

:あと、もう一つ言えるのは、あいみょんは「ポストスピッツ」であるということ。これもキーパーソンは浜田省吾。

大谷:なるほど! スピッツは浜田省吾さんと事務所が一緒だ。

:スピッツが所属してる「ロードアンドスカイ」という事務所はもともと浜田省吾の個人事務所だったんです。社長の高橋信彦さんは、もともと浜田省吾さんと一緒にやっていた「愛奴」というバンドのベーシストだった。広島フォーク村の先輩と後輩という関係で、吉田拓郎のバックバンドをやってたような人で。そういう事務所が、浜田省吾に続く第2弾アーティストとして見出したのがスピッツだった。

柴那典

大谷:桜井さん、デビュー当時からスピッツをかなり意識してたらしいですもんね。

:桜井さんが意識したのも、考えたら当たり前で。めちゃくちゃリスペクトしていた浜田省吾の事務所、ロードアンドスカイが「このバンドは次の時代を担う」と所属させたのが、同じ頃にLa.mamaとかのライブハウスに出てたスピッツだった。デビューもスピッツのほうがすこし先だった。そんなのジェラシーを感じるし、ライバル視もするはずですよね。

大谷:その話を聞いて思ったのは、僕はあいみょんの初期の曲もすごく好きですけれど、やっぱり大きな存在になったのはメジャーになってからで。プロデュースを田中ユウスケさんがやってるじゃないですか。あれがすごくデカいんじゃないですかね。ミスチルの小林武史さん、スピッツの笹路正徳さんのように。

:そう! 特に“生きていたんだよな”とか“君はロックを聴かない”とか“マリーゴールド”とか、メジャーに行ってからのシングル曲は、基本的にすべて編曲とサウンドプロデュースを田中ユウスケさんがやってる。

1stシングル(2016年)

:つまり、ミスチルもスピッツも、浜田省吾の影響下にあるソングライターと、それをサウンド面でモダナイズ(現代化)するプロデューサーとの組み合わせによって生まれた音楽なんです。それとまったく同じ構造を、あいみょんも持っている。

大谷:そういうことか。曲に今の時代の洋楽っぽさを入れるのがプロデューサーの役割なんですね。

:そうそう。で、レコード会社側が「ポストミスチル」とか「ポストスピッツ」を狙って売り出したバンドはたくさんいたけれど、浜田省吾の影響下にあるソングライターとそれをモダナイズするプロデューサーの組み合わせなんて、なかったでしょ?

大谷:ないない! MOON CHILDだってL⇔Rだって、そうじゃなかったもん。

:レミオロメンだってback numberだって、小林武史のプロデュースではあるけれど、その構造はなかった。つまり、あいみょんこそが、ようやく登場したミスチルとスピッツの正統後継者である、と。そりゃ売れるだろ! ってことなんですよ。

大谷:はははは! めっちゃおもしろいな。浜田省吾さんだって広島フォーク村で吉田拓郎さんの後輩みたいな感じだったわけだし、そう考えると、吉田拓郎、浜田省吾、ミスチル、スピッツ、あいみょんって、バトンがつながるわけだ。

:そうなんです。実際、あいみょんはいつもインタビューで正直なことしか言ってない。影響を受けたアーティストには浜田省吾と吉田拓郎をあげるし、1stアルバム『青春のエキサイトメント』の頃、インタビューの最後の質問で「次はどうしますか?」って訊かれて「最近はスピッツやミスチルが改めてすごいなって思ってて、やっぱりいい曲を書けばちゃんと売れるし、残っていくんだなって思うんです」って答えてる。

おそらく、この時に“マリーゴールド”を書き始めていたんじゃないかと思うんです。

あいみょん『青春のエキサイトメント』を聴く(Apple Musicはこちら

大谷:あいみょんにとってのスピッツやミスチルは、同じ浜田省吾に影響受けた兄弟子みたいなものなんだ。

:実際に“マリーゴールド”を聴くと、スピッツの“チェリー”とミスチルの“Tomorrow never knows”と、コードとメロディの関係性がすごく似ているんです。歌い出しは“チェリー”、サビは“Tomorrow never knows”と、それぞれコード進行のどの音をメロディに使うかというポイントが共通している。

大谷:1990年代の頃って、桜井さんと草野さんがよく会ってコード進行の話をしてたらしいんですよ。日本人の琴線に触れるコード進行のパターンをお互いに研究していて、シングルはそのコード進行を使った曲を出す、みたいな。その遺伝子がちゃんとあいみょんにも入っているってことだ。

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プロフィール

大谷ノブ彦(おおたに のぶひこ)

1972年生まれ。1994年に大地洋輔とお笑いコンビ、ダイノジを結成。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。音楽や映画などのカルチャーに造詣が深い。相方の大地と共にロックDJ・DJダイノジとしても活動。著書に『ダイノジ大谷ノブ彦の 俺のROCK LIFE!』、平野啓一郎氏との共著に『生きる理由を探してる人へ』がある。

柴那典(しば とものり)

1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。ロッキング・オン社を経て独立、雑誌、ウェブなど各方面にて音楽やサブカルチャー分野を中心に幅広くインタビュー、記事執筆を手がける。主な執筆媒体は『AERA』『ナタリー』『CINRA』『MUSICA』『リアルサウンド』『ミュージック・マガジン』『婦人公論』など。日経MJにてコラム「柴那典の新音学」連載中。CINRAにて大谷ノブ彦(ダイノジ)との対談「心のベストテン」連載中。著書に『ヒットの崩壊』(講談社)『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)、共著に『渋谷音楽図鑑』(太田出版)がある。

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