インタビュー

なぜあいみょんはブレイクしたのか? 大谷ノブ彦×柴那典が語る

なぜあいみょんはブレイクしたのか? 大谷ノブ彦×柴那典が語る

テキスト
柴那典
撮影:CINRA.NET編集部 編集:中島洋一、中田光貴(CINRA.NET編集部)

あいみょんは、平成最後に浜田省吾を受け継いだ「J.GIRL」なんだよ。(大谷)

:ここまでの前提を共有したうえで、ようやく「なぜあいみょんが、ストリーミングサービスから火がついた最初のスターになったのか」っていう仮説なんですけれども。ミスチルがストリーミングサービスに全曲解禁したのが2018年5月。あのとき、Spotifyのトップ10がほとんどミスチルの曲になるという現象が起こったじゃないですか。

大谷:あったあった。チャイルディッシュ・ガンビーノの“This is America”以外全部ミスチルだったという。

:あのときは「やっぱりミスチルすげえなあ」ってだけだったんです。けれど、よくよく考えるとあのときミスチルをトップ10に押し上げた人たちはどこにいったのか。果たしてずっとミスチルだけを聴き続けてたのか? という。

Spotifyを使えばわかるんだけど、あれは新曲をどんどん聴きたくなるサービスなんですよ。なのにミスチルは新作の『重力と呼吸』をストリーミングサービスに解禁していない。そこでミスチルファンが出会ったのがあいみょんだったんじゃないか。

大谷:ああ、なるほど。ミスチルファンの人がみんな、あいみょんに出会って、大好きになったってことですよね?

:そう。こないだ大阪のトークイベントでその話をしたら、僕の従兄弟が会社の同僚と一緒にそこに来てて。「僕がまさにそうです」って言ってた。

大谷:ははは、すげえ! 身内に実例がいたんだ。

大谷ノブ彦

:彼はもともとミスチルがすごく好きで、だから去年Spotifyに加入したんですけれど、しばらくしたら聴くものがなくなっちゃって。そのタイミングで「おすすめ」にあいみょんが出てきて、聴いたらハマったんですって。

大谷:すごいなあ。浜田省吾からミスチル、ミスチルからあいみょんって、こういう風に次の世代にバトンがつながっていくんだ。ってことは、あいみょんはつまり「J.GIRL」ってことだ(笑)!

:ははははは! 浜田省吾が“J.BOY”をリリースしたのが1986年ですからね。あいみょんのメジャーデビューが2016年だから、ぴったり30年後。

大谷:そうか! あいみょんは、平成最後に浜田省吾を受け継いだ「J.GIRL」なんだよ。だって“J.BOY”はアイデンティティの歌ですからね。理想を見失った日本の少年の歌。<心の空白埋めようと山のような仕事 抱え込んで凌いでる>と歌ってる。

:まさに高度経済成長時代の日本のサラリーマンって感じですよね。

大谷:それに対して、あいみょんが新しい時代の女性のアイデンティティを歌ってるって考えると、むちゃくちゃグッとくる。

:で、あいみょんは今すごく売れてるし、『瞬間的シックスセンス』のインタビューでは「ひかりもの」という曲を通して彼女自身も「今注目されてるだけ」みたいに冷静に自分のことを語ってるんです(参考記事:あいみょんから年下の子たち&大人へ 直感と瞬間の大切さを語る)。

だけど、浜田省吾、ミスチル、スピッツの系譜に彼女がいるわけだから、おそらくこの先20年、30年彼女は歌い続けていくだろうし、“マリーゴールド”という曲は「平成の終わり」という時代を象徴する曲として、この先ずっと残っていくと思いますね。

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プロフィール

大谷ノブ彦(おおたに のぶひこ)

1972年生まれ。1994年に大地洋輔とお笑いコンビ、ダイノジを結成。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。音楽や映画などのカルチャーに造詣が深い。相方の大地と共にロックDJ・DJダイノジとしても活動。著書に『ダイノジ大谷ノブ彦の 俺のROCK LIFE!』、平野啓一郎氏との共著に『生きる理由を探してる人へ』がある。

柴那典(しば とものり)

1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。ロッキング・オン社を経て独立、雑誌、ウェブなど各方面にて音楽やサブカルチャー分野を中心に幅広くインタビュー、記事執筆を手がける。主な執筆媒体は『AERA』『ナタリー』『CINRA』『MUSICA』『リアルサウンド』『ミュージック・マガジン』『婦人公論』など。日経MJにてコラム「柴那典の新音学」連載中。CINRAにて大谷ノブ彦(ダイノジ)との対談「心のベストテン」連載中。著書に『ヒットの崩壊』(講談社)『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)、共著に『渋谷音楽図鑑』(太田出版)がある。

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