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中村佳穂が歌う「祈り」のような感覚 『AINOU』以降の確信を語る

中村佳穂が歌う「祈り」のような感覚 『AINOU』以降の確信を語る

中村佳穂『LINDY』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中一人: 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

人の感情って、常に揺らいでるじゃないですか? そこに「今だ!」って入っていくのが好きなんです。

―中村さんはもともと全国各地でずっとセッションをやってきて、自分主導で音楽を形にすることに喜びを感じていたんだと思うのですが、今はバンドとの関係がより密に、強くなっているからこそ、委ねることもできるようになったのかなって。

中村:人の感情って、常に揺らいでるじゃないですか? そこに「今だ!」って入っていくのが好きなんですよね。強固な軍隊が揺らいだ瞬間に、一等兵が隙間から切り込んで、なかから切り崩していく。最近そういう漫画を読んだから影響を受けてるんですけど(笑)、そういうことをやってる感覚なんです。

「歌が得意」という感覚よりは、切りこんで、支配……とは違う、共有したり、広がりを得ようとする、そういう歌のあり方が好きで。セッションをやっていると、そこを珍しがられたり、求められたりして、逆に言うと、私が切り込んでまとめないと、バランスが崩れちゃうんですよね。

中村佳穂

中村:昨日のライブと新曲にも参加してもらってる馬喰町バンドなんて、正確なピッチがとれない自作の楽器を使っていて、すごく揺らぎがあるんですよ(参考記事:子どもは誰でも作曲能力がある?馬喰町バンドが目指す無垢な音楽)。でも一方で10年一緒にやってきたグルーヴがあって、それはパッと見すごく強いんですけど前向きな繊細さがあって、そこに切り込んで、まとめようとすると、私の音楽になりすぎちゃう。

なので、3年前くらいに初めて彼らとセッションをしたときは、上手くいかなかったんです。切り込まずに、一度委ねてみたら、バランスが崩れちゃった。これは一度バンドを強固にしたうえで、彼らの揺らぎも支えてあげられるようにならないと、一緒にはできないなと思って。そのセッションも、『AINOU』を作るきっかけのひとつだったんです。

馬喰町バンドの武徹太郎、織田洋介も参加したライブ映像

ひとりだと才能の限界を感じてしまうかもしれないから。

―つまりは、『AINOU』を作る前から、馬喰町バンドと共作をする構想があったと。

中村:レミ街の2人(荒木正比呂、深谷雄一)のように、電子音楽に精通していて、音の質感だけでいい曲だって判断できるような耳を持っている人と、馬喰町バンドの2人のように、フィジカルで生きていて音楽に身体性を持ち込んでいる人。その人たちのいいところが集まった音楽で、なおかつ歌モノって他にはないし、それが実現したら理想的だと思っていたんです。そのほうが、ゆくゆくは世界の人たちとも遊べるようになると思いました。

中村:でも海外の人が観て、「佳穂ちゃんがよかった!」ってなるのも違うなと思ったんです。だったら、ソロで世界に行けばいいわけで、それは寂しいし、私の豊かさにはならない。以前お話をしたように、ひとりだと才能の限界を感じてしまうかもしれないから。

―『AINOU』のときのインタビューで「崖が見えてしまう」という話をしましたね(参考記事:中村佳穂という「歌」の探求者。魂の震えに従う音楽家の半生)。

中村:そうですね。なので、自分の理想を叶えるには順番を経る必要があって、まずは電子音楽の人たちと経験を積み上げることをした。レミ街の2人がフィジカルを認める強さも持っていることは、吹奏楽部とのコンサートを観て、直感的に感じていたので、馬喰町バンドの人たちと混ざり合うことはできる。であれば、まずは『AINOU』を作りあげて、そのうえで彼らを呼ぼうと考えていました。

―なるほどなあ、長期計画だったわけですね(笑)。

中村:そう。馬喰町バンドとはこれまで何度かライブでご一緒していて、『AINOU』に入っていた“そのいのち”のレコーディングにも来てもらったんです。「私たちはこういう暮らしをしています」っていうのを、レコーディングを通じて見ておいてもらいたくて。

結果的に、本当にいい流れになりましたね。『AINOU』への反響から、しなやかな強さのあるバンドになって彼らを迎えることができた。一緒にライブをやったのは昨日が初めてだったんですけど、ホッとしました。

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リリース情報

中村佳穂『LINDY』
中村佳穂
『LINDY』

2019年7月3日(水)配信

  • Apple Musicで聴く
  • イベント情報

    『LIQUIDROOM 15th ANNIVERSARY 中村佳穂』 ※SOLD OUT

    2019年7月13日(土)
    会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM
    出演:中村佳穂BAND+special guest
    料金:前売4,000円 当日4,500円(共にドリンク別)
    ※高校生以下は身分証明書提示で1,000円キャッシュバック、未就学児無料

    プロフィール

    中村佳穂(なかむら かほ)

    「彼女が自由に歌うとき、この世界は輝き始める。」数々のイベント、フェスの出演を経て、その歌声、音楽そのものの様な彼女の存在がウワサを呼ぶ京都出身のミュージシャン、中村佳穂。ソロ、デュオ、バンド、様々な形態で、その音楽性を拡張させ続けている。ひとつとして同じ演奏はない、見るたびに新しい発見がある。今後も国内外問わず、共鳴の輪を広げ活動していく。2016年、『FUJI ROCK FESTIVAL』に出演。2017年、tofubeats『FANTASY CLUB』、imai(group_inou)『PSEP』、ペトロールズ『WHERE, WHO, WHAT IS PETROLZ?? -EP』に参加。2018年11月、2ndアルバム『AINOU』をリリース。2019年7月3日、配信シングル“LINDY”を発表。7月13日(土)には東京都・恵比寿で『LIQUIDROOM 15th ANNIVERSARY 中村佳穂』を開催する。『FUJI ROCK FESTIVAL』を含む全国各地の音楽フェスに出演予定。

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