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中村佳穂が歌う「祈り」のような感覚 『AINOU』以降の確信を語る

中村佳穂が歌う「祈り」のような感覚 『AINOU』以降の確信を語る

中村佳穂『LINDY』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中一人: 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

『AINOU』のときも心配だったけど、またそんな曲を作ってしまった(笑)。

中村佳穂

―新曲の“LINDY”に関しては、どのように作られていったのでしょうか?

中村:<全部あげる>っていう歌詞は、もともと『AINOU』以前からあったんです。武さんと一緒にセッションしたときにパッと思い浮かんで、『AINOU』で使おうかとも思ったけど、武さんと一緒にやるときまで取っておこうと思っていたんです。実際の曲作りは、『AINOU』を作ったときと同じように、みんなで集まって、セッションで作っていきました。

―彼らの自作楽器のエレキ六線やトリフォンを使っているのは、馬喰町バンドと一緒にやる時点で必然の流れだったわけですよね。

中村:武さんはいっぱい楽器を持ってきてくれましたね。彼は24時間ずっと楽器を弾いているような人で、最近読んでる『ホモサピエンス全史』(2016年、河出書房新社より)っていう本に「人間は300歳まで生きられる」みたいなことが書いてあったらしく、「佳穂ちゃん、300歳まで生きられたら、超ギター上手くならない?」って言ってました(笑)。そんな武さんのプレイや、武さんと一緒に遊びながら歌った私の歌を荒木さんがエディットして、“LINDY”が生まれたんです。

中村佳穂“LINDY”を聴く(Apple Musicはこちら

―パッと聴きフィジカルな要素が強いですが、『AINOU』を通過したうえでのグルーヴがあるっていうのは間違いなくポイントだと思うんですよね。

中村:フィジカルだけだと、「ここで着地する」っていう気持ちいいポイントが決まってて、その感覚が似た人が集まるといいバンドになると思うんですけど、荒木さんは私や武さんを絶対に自然には着地させてくれないんです。「ここに足をつけたかったけど、フワッとなってここ」みたいな、それはビートミュージック的というか、荒木さんの気持ちよさで。

だから、フィジカル寄りになったわけでもなく、本当に変なバランスの曲で、『AINOU』のときも聴く人の反応が心配だったけど、またそんな曲を作ってしまった(笑)。「豊かである」という確信はあるんだけど「肯定されるかは不安」っていう気持ちは歌詞にも出てますね。

中村佳穂

私が進んで行くことがあなたの応援になるかはわからないけど、私のものはすべてあげるっていう気持ち。

―<ためらわず進むと 獣道になってゆく>という歌詞は、まさに今おっしゃった感覚を表していますよね。あとは中盤に祭囃子のようなパートが出てきて、そこを経て、<全部あげる 私のものは>という歌詞へと至る後半の展開が非常にスリリングでした。

中村:祭囃子の部分は、武さんたちに影響されて荒木さんが打ち込みで太鼓を入れたんですけど、「佳穂ちゃん、何か歌入れてみて」って言われて。「そんなにすぐ出てこない」と思ってるときに、録音ボタンを押されて歌ったテイクがそのまま使われているんです。差し替えようと思ったけど、武さんも「かっこいいから、このままでいいんじゃない?」って言ってくれて、それをみんなで歌いました。

“そのいのち”でも意味のない歌詞を歌っていて、でもそれが肯定されて、意味は通じなくても歌ってることが伝わっているんだって思えた気持ちも反映されていますね。“LINDY”は2時間くらいのセッションを、そのままエディットして、その勢いのまま進んでできた、みたいな曲でした。

中村佳穂“そのいのち”を聴く(Apple Musicはこちら

―かなりスピーディーに曲が生まれたのは面白いですね。

中村:構築と勢いが並列に存在しているというか、レコーディングは本当に瞬間的な感じでした。荒木さんはエディットするのがめちゃめちゃ速いんですよ。なので、構築も含めて一発録りっぽい作り方で。勢いがあるとはいえ、エディットされているから実際に演奏するのはすごく難しくて、武さんは「弾けない!」って言いつつギターを録音してましたけど(笑)。

―歌詞もそんな勢いそのままに、ダイレクトな言葉が並んでいますね。

中村:もう、そのまんまです(笑)。あとは『AINOU』以降の感想というか、反響が全部道に見えたんです。<おどけたふりして 結び直してゆく>っていうのは、それぞれビートミュージックや民族音楽に対して造詣が深いけど、それぞれが積み重ねたものを軽い気持ちで崩してみても、もう一度結び直すことが彼らにはできる。そうやっておどけながらやり直すことで、新しいものになっていくんじゃないかって。

―そうやって進んで行くことが、<ドキドキ>であり<トキメキ>でもあるでしょうし。

中村:そうですね。あとは、私が進んで行くことがあなたの応援になるかはわからないけど、私のものはすべてあげるっていう気持ち。“そのいのち”にある<生きているだけで君が好きさ>ってフレーズは、自分が言われたかったから書いたんですけど、「応援するぜ!」とは言えなくても、「応援をあげる」って気持ちを唱えながら私は生きていて、そんな私を<全部あげる>みたいな……本当にそのままの気持ちなんです。

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リリース情報

中村佳穂『LINDY』
中村佳穂
『LINDY』

2019年7月3日(水)配信

  • Apple Musicで聴く
  • イベント情報

    『LIQUIDROOM 15th ANNIVERSARY 中村佳穂』 ※SOLD OUT

    2019年7月13日(土)
    会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM
    出演:中村佳穂BAND+special guest
    料金:前売4,000円 当日4,500円(共にドリンク別)
    ※高校生以下は身分証明書提示で1,000円キャッシュバック、未就学児無料

    プロフィール

    中村佳穂(なかむら かほ)

    「彼女が自由に歌うとき、この世界は輝き始める。」数々のイベント、フェスの出演を経て、その歌声、音楽そのものの様な彼女の存在がウワサを呼ぶ京都出身のミュージシャン、中村佳穂。ソロ、デュオ、バンド、様々な形態で、その音楽性を拡張させ続けている。ひとつとして同じ演奏はない、見るたびに新しい発見がある。今後も国内外問わず、共鳴の輪を広げ活動していく。2016年、『FUJI ROCK FESTIVAL』に出演。2017年、tofubeats『FANTASY CLUB』、imai(group_inou)『PSEP』、ペトロールズ『WHERE, WHO, WHAT IS PETROLZ?? -EP』に参加。2018年11月、2ndアルバム『AINOU』をリリース。2019年7月3日、配信シングル“LINDY”を発表。7月13日(土)には東京都・恵比寿で『LIQUIDROOM 15th ANNIVERSARY 中村佳穂』を開催する。『FUJI ROCK FESTIVAL』を含む全国各地の音楽フェスに出演予定。

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