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ピアニスト・清塚信也はなぜバラエティ番組に出る?意外な狙い

ピアニスト・清塚信也はなぜバラエティ番組に出る?意外な狙い

清塚信也『SEEDING』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:豊島望 編集:矢島由佳子(CINRA.NET編集部)
2019/08/14

厳しい言い方をすれば、日本人は欧米人に比べて「音感」がないのだと思います。

―7月17日にリリースされたミニアルバム『SEEDING』を聴いて、とにかく驚きました。「クラシック」の枠を大幅に超えていて、凄腕のセッションミュージシャンが参加した「ロックインスト」になっている。清塚さんの音楽愛、遊び心、激しさや繊細さが詰まっているという意味では、「清塚さんらしいアルバムだな」と思いました。

清塚:ああ、それは嬉しい感想です。

―そもそも10年くらい前から、「インストのロックバンドをやりたい」と思っていたそうですね。

清塚:そうなんです。おそらくそのルーツはゲーム音楽にあるんじゃないかと自分では思っていて。というのも子どもの頃は、大のゲーム好きだったんですよ。ゲームのBGMには、様々なジャンルのインスト曲が使われていて、それを聴いて育ったといっても過言ではない。だからロックだけじゃなくテクノも大好きですし、普段はそういう音楽ばかり聴いています。むしろクラシックは窮屈にすら感じることもあって。

清塚信也

―それは、どうしてですか?

清塚:おそらく「他人の曲を演奏する」からじゃないかと。クラシックの演奏家は、言ってみればモーツァルトやベートーヴェン、バッハといった作曲家たちの「カバー曲」を、ひたすらやり続けているようなものですからね。そうすると、「自分の表現は、自分の曲でしたい」という思いがどんどん強くなっていくんです。その理想像が、僕にとってはロックのインストバンドだった。

ただ、とにかくメンバー探しに時間がかかりました。「どうしても、この人とやりたい」と思えるプレイヤーを、まさにRPGのように探していったんです。ようやくメンバーが揃ったこのタイミングで、まずはミニアルバムを出すことにしました。

清塚信也『SEEDING』ジャケット
清塚信也『SEEDING』ジャケット(Amazonで見る
清塚信也『SEEDING』を聴く(Apple Musicはこちら

―日本のリスナーの「インスト音楽」の受け取り方を、清塚さんはどのように感じていらっしゃいますか?

清塚:インストは特に欧米では人気があって、いわゆる「歌モノ」に混じってチャートにもしばしば登場するんですよ。でも日本にはまだそういう風潮がなくて、残念だなって思っています。インスト音楽のよさを、もっと多くの人に知ってもらう努力が必要だなと。

―清塚さん自身は、インスト音楽のどんなところに惹かれるのでしょう?

清塚:インスト音楽は、「言葉」という、意味を断定する要素が少ない分、いろんな人の、いろんな気持ちに寄り添うことができる。様々なシチュエーションにハマるから、「なにか音楽を聴こうかな」と思ったときに選択肢のひとつとしてインスト音楽があると、日常に潤いをもたらすことになるのではないかと思うんですよね。

―聴き手の想像力を投影するような、シンプルな音楽って日本人にも合いそうな気がするんですけどね。それがあまり浸透していないのはなぜだと思いますか?

清塚:厳しい言い方をすれば、欧米人に比べて「音感」がないからだと思います。というのは、「音階」や「和声」という概念がヨーロッパで成立してから、それが日本に入ってくるまで時間がかかってしまったんです。日本は江戸時代、鎖国をしていた時期もありましたからね。「ドレミファソラシド」や「ハーモニー」が日本に定着し、教育の一環として組み込まれてから、まだ日が浅い。なので、「歌詞」というキャッチーな「標識」がないと、おそらくまだメロディを追えないんじゃないかと。

清塚信也

―ああ、なるほど。日本人は「歌詞」を重要視するとは思っていましたが、「歌詞がメロディのガイド役になっている」というお話には目から鱗が落ちました。

清塚:インスト音楽は「歌詞」がないので、音感だけを使って聴くという点では、歌に比べると「高度」ですよね。海外のインスト音楽というのは、音感のレベルが高いリスナーに向けて作られているので、かなり難易度の高いことをやっている。それを聴くと「難しすぎてわからない」という日本人は多いのかもしれない。

なので、ポップなインストからまずは聴いてもらいたいというのは、僕が今作を作る上での最初のポリシーでした。ギターやバイオリン、ドラム、いろんな人たちが、いろんな役割をわかりやすく分担することで、すごく聴きやすいものになるよう心がけましたね。

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リリース情報

清塚信也『SEEDING』
清塚信也
『SEEDING』(CD)

2019年7月17日(水)発売
価格:2,700円(税込)
UCCY-1099

1. Dearest "B"
2. Drawing
3. Inst Heroes
4. Members
5. See you soon
6. ハレナハレ feat. NAOTO

イベント情報

『清塚信也KENBANまつり』

2019年8月16日(金)
会場:東京都 日本武道館

プロフィール

清塚信也
清塚信也(きよづか しんや)

1982年11月13日 東京都生まれ B型/蠍座。5歳よりクラシックピアノの英才教育を受ける。中村紘子氏、加藤伸佳氏、セルゲイ・ドレンスキー氏に師事。桐朋女子高等学校音楽科(共学)を首席で卒業。1996年第50回全日本学生音楽コンクール全国大会中学校の部第1位。2000年第1回ショパン国際ピアノコンクール in ASIA 第1位、2004年第1回イタリアピアノコンコルソ金賞、2005年日本ショパン協会主催ショパンピアノコンクール第1位など、国内外のコンクールで数々の賞を受賞。2019年7月17日に、MBSお天気部 春のテーマ曲“ハレナハレ feat. NAOTO”など計6曲を収録したアルバム『SEEDING』をリリースした。

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