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社会を変えるのは障害者自身。ダンサー集団イル・アビリティーズ

社会を変えるのは障害者自身。ダンサー集団イル・アビリティーズ

『TRUE COLORS FESTIVAL』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
通訳:相磯展子 編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)

日本で「多様性 / ダイバーシティ」という言葉を聞く機会は増えたが、自分とは意見を異にする相手や、まったく別の社会背景を持った人と出会ったとき、多くの人々は戸惑いを覚え、微妙な距離を置いてしまいがちだ。かといって、それを「乗り越えろ!」と上から言われてもさらに困惑してしまう、というのが2019年時点の日本なのではないだろうか?

『TRUE COLORS FESTIVAL』は、日本財団が主催して2019年の夏から2020年の夏へと約1年をかけて行われる、音楽やダンスといったパフォーマンスを主体としたフェスティバル。そこに登場するのは、障害を持ったブレイクダンスチームや、文化的多様性を持ったミュージシャンユニットだ。その第1弾として登場するのが、ルカ・レイジーレッグス・パトエリ率いる「ILL-Abilities(イル・アビリティーズ)」だ。6か国から8人の凄腕ダンサーたちが集結し、最高のパフォーマンスを披露することで世界的に知られた彼らは、ダンスを通して楽しさだけでなく、社会に向けてメッセージを伝えようとしている。カナダ・モントリオールに住む代表のルカとSkypeで結び、話を聞いた。

メインビジュアル:(Photo:Jacob Jonas)

僕のダンス哲学の根本は「心臓がビートを作っている限り、誰もが音楽にあわせて踊ることができる」ってこと。

―ルカさんは、ブレイクダンスの他にもロッククライミングなどかなり多彩なスポーツ歴をお持ちです。身体を使うことに魅了された理由はなんだったのでしょうか?

ルカ:僕は関節拘縮症という病気で、10代のころから入退院を繰り返してきて、じつに16回もの手術を受けてきました。ですが、いまも若いころもめちゃくちゃ活動的だったんですよ。松葉杖をついているけれど、サッカーに野球にホッケー、水泳や、変わったところでは乗馬まで。本当に、いろんなアクティビティーに積極的に参加してきました。そして自分的に工夫していたのが、みんなとはちょっと違うやり方を発明して実行してみること。これが自分の原点になっていると思います。

15歳のときの手術で膝を使えなくなってしまって、それまで特に熱中していたスケートボードができなくなってしまったんだけど、周囲の友人がブレイクダンスを薦めてくれて、そこからダンスを始めたんです。

ILL-Abilities(いる・あびりてぃーず)<br>左から:レドゥアン・アイト・チット(リドゥ―)、サミュエル・リマ(サムカ)、ルカ・パトエリ(レイジーレッグス)、セルジオ・カルヴァハル(チェチョ)、ジェイコブ・ライオンズ(クジョー)
ILL-Abilities(いる・あびりてぃーず)
左から:レドゥアン・アイト・チット(リドゥ―)、サミュエル・リマ(サムカ)、ルカ・パトエリ(レイジーレッグス)、セルジオ・カルヴァハル(チェチョ)、ジェイコブ・ライオンズ(クジョー)
サミュエル・リマ(サムカ / ブラジル)(Photo:Jacob Jonas)<br>ILL-Abilitiesは、8人のBボーイ、ブレイクダンサーからなる「インターナショナル・ブレイクダンス・クルー」。「イル」の部分はネガティブな言葉をポジティブに転用するヒップホップの文化では、「信じられない」、「素晴らしい」、「繊細」、「センスがある」などの意味がある。このクルーは「障害」のネガティブな側面や限界を強調するのではなく、ポジティブでかっこいいチームを目指している。
サミュエル・リマ(サムカ / ブラジル)(Photo:Jacob Jonas)
ILL-Abilitiesは、8人のBボーイ、ブレイクダンサーからなる「インターナショナル・ブレイクダンス・クルー」。「イル」の部分はネガティブな言葉をポジティブに転用するヒップホップの文化では、「信じられない」、「素晴らしい」、「繊細」、「センスがある」などの意味がある。このクルーは「障害」のネガティブな側面や限界を強調するのではなく、ポジティブでかっこいいチームを目指している。

―挑戦してみていかがでしたか?

ルカ:2年間くらいは転んで脳しんとうになったり、足を骨折したりで大変でした(笑)。だけど、不思議な魅力を感じたんです。友だちがブレイクダンスをしているのを見ると、自分ができないような動きをしている。でも、僕にも彼らにはできない自分なりの動きがあって、それを自分の流儀で作り出せることに魅了されました。プロダンサーとして16年間活動しているけれど、いまだにブレイクダンス、ヒップホップのカルチャーとダンスを創造することに没頭し続けています。

―それまで取り組んできたスポーツとダンスの最大の違いは何でしょう?

ルカ:大きいのは、クリエイティビティーや創造性。それと同時に、ブレイクダンスカルチャーの社会性も重要です。自分で新しい動きを作り出して、繰り返し練習することでそれを習得する。そしてみんなの前で披露することで、そのユニークさも含めて賞賛される。技が決まったときの仲間たちの「ワオ!」という声援は快感で、もっと頑張ろうという気持ちと自信を僕に与えてくれます。そういう社会がブレイクダンスにはあるんです。

そしてもうひとつは音楽。僕のダンス哲学の根本は、「心臓がビートを作っている限り、誰もが音楽にあわせて踊ることができる」ってこと。音楽には自分自身の気持ちを変える力があるし、人を喜ばせる力もある。音楽が喚起するエネルギーやエモーションは、人の心のありようを変えていけると思うんです。

この全部を俯瞰して考えると、ブレイクダンスやヒップホップにはそれまで僕がやってきたスポーツ、アート、趣味のすべてが濃縮されていることに気づかされます。

―ルカさんにとって、ダンスは人生でもあり哲学でもある。

ルカ:そのとおり! 僕も年齢を重ねてきて若いころのようなエネルギーはなくなってきたし、競技会に出る機会も少なくなってきました。けれど、いくつになってもダンスに関わっていたい気持ちは変わりません。パフォーマンスをするにせよ、ダンスを教えるにせよ、あるいはそのカルチャーを振興するにせよ、何らかのかたちでダンスを続けていきたい。実際、4歳になる娘とは音楽をかけて毎日30分一緒にダンスを踊っているしね(笑)。

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イベント情報

『TRUE COLORS FESTIVAL』

「超ダイバーシティ芸術祭」。障害・性・世代・言語・国籍などのあらゆる多様性があふれ、皆が支え合う社会を目指し、ともに力を合わせてつくる芸術祭。1年間を通して多彩なパフォーミングアーツの演目を展開します。アートを通して色々な個性が出会う場に、参加することでより多くの気づきが生まれます。「True Colors Festival」はダイバーシティ&インクルージョンの実現に向けて、新しい価値観が生まれる機会を創出します。

『True Colors DANCE- No Limits - イルアビリティーズ』

ILL-Abilitiesが自分たちの身体を活かしたパフォーマンス性の高いダンスを披露する。また日本人のダンサーとの“dance-off”(ダンス対決)を即興で行うことにより、ダンサー一人ひとりの技術の高さを際立たせ、舞台芸術を通して障害、国籍の壁を越えていく姿を広く発信する。

2019年9月10日(火)
会場:東京都 渋谷ストリーム前 稲荷橋広場
出演:ILL-Abilities(イルアビリティーズ)、The Floorriorz、Bboy Shigekix、Bgirl Ram、Bboy Taisuke、SOCIAL WORKEEERZ、LJ BREAKERS(from LOVE JUNX)
ワークショップ講師:UNO / NOPPO(s**t kingz)
料金:無料(一部要申し込み)

プロフィール

ILL-Abilities
ILL-Abilities(いる・あびりてぃーず)

2007年にモントリオールを拠点にするダンサー/モチベーショナル・スピーカーのルカ・レイジーレッグス・パトエリが「不可能なことはない」というメッセージを広く伝えるために設立。8人のBボーイ、ブレイクダンサーからなる「インターナショナル・ブレイクダンス・クルー」。「イル」の部分はネガティブな言葉をポジティブに転用するヒップホップの文化では、「信じられない」、「素晴らしい」、「繊細」、「センスがある」などの意味がある。このクルーは「障害」のネガティブな側面や限界を強調するのではなく、ポジティブでかっこいいチームを目指している。

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