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やなぎみわが後世に説く「死んだ人に聞きなさい」その真意は?

やなぎみわが後世に説く「死んだ人に聞きなさい」その真意は?

『やなぎみわ展 神話機械』
インタビュー・テキスト
杉原環樹
編集:石澤萌(CINRA.NET編集部)

生きている人間には聞くな。死んだ人間に聞け。

―今回の展示は、過去作から新作も含めてやなぎさんの思考を振り返ることのできるいい機会でした。あらためて、ご本人にとってこの10年はどんな時代でしたか?

やなぎ:とても面白かったですよ。演劇はまるで違う世界だったので、いままでの自分の表現を客観的に見られる機会でしたし、とくに野外劇を始めてからは、美術館がどういう場所なのかもよく分かりました。ひさしぶりに美術館で展示をして、とても膨大なお金を使って作品を管理して、残そうとしている。その意義は、あらためて感じました。

ただ、野外劇もやっていると、同時に美術館には違和感を感じますね。たとえば、日本には近代美術館という大きな建物が多くありますが、日本の土地の気候に合っていないと感じるんですよ。私が関わった美術館にも、湿気が多い館があった。アジアのすごく湿潤な土地に、大きなコンクリートの箱を作って、普通ならば朽ちてなくなるものを無理やり残している。そうした日本の近代のあり方を見た感じがします。

写真提供:神奈川県マグカル・ドット・ネット
写真提供:神奈川県マグカル・ドット・ネット

―最近は、台風19号による川崎市市民ミュージアムの浸水被害もありましたね。その意味では、文化の伝承の問題を考えたとき、西洋型の近代美術館という形式が果たして日本の風土に適しているのか、あるいはやなぎさんの野外劇のように、一見流動的でも各地を巡りながら行うかたちがいいのか、あらためて問われていると思います。

やなぎ:いろんなかたちがあっていいと思います。たとえばインドでは、ロンドンの大英博物館から持ってきたアーカイブスが、あっという間に虫とネズミの餌になり、粉状になったそうです。とくに日本においては、美術は近代に接ぎ木されたものですから。いまさら美術館はなくならないだろうし、今後もより強固な箱を作っていくんでしょうね。

私個人としては、これまで同様、演劇と、美術館に展示される作品を往復しながら制作していきたいと思います。実際、その往復によってしか作れない作品がありますから。

―最後に、1920年代や30年代は何度も見直されるべきだというお話がありましたが、今回の『あいち』の件にしても、今後、日本はアーティストにとって風当たりの強い国になるのではないかという予感があります。そうしたなかで、やなぎさんからこれから若いアーティストはどのような姿勢を持つべきか、一言お聞きしたいです。

やなぎ:1920年代や1930年代を振り返るべきだというのは、それが作家にとって厳しい時代だったからです。その時代をつねに胸に刻んでおくことが大事で、さもなくば、あっという間に飲み込まれてしまうと思います。戦争やファシズムというのは、決して心地悪い感じではやってこない。むしろ心地のよい感じでやってくるものだと思います。気持ちよくさせることによっていつの間に飲み込まれる。だから要注意だと思いますね。

野外劇をやるとよくわかりますが、たしかに日本の管理は厳しいです。白か黒かで言えば、野外劇なんてグレーに決まっている。でも、グレーゾーンなんかないと言われたら自由領域がなくなってしまう。すべて白にしろと言われてもできないし、その意味でどんどんやりにくくはなっています。でも、そこは上手いことやるんですよ。

―さきほどの、地元の人に可愛がってもらうというのもひとつの手ですね。

やなぎ:そうそう。所詮、我々芸術家は「河原乞食」なんです。職能で知恵が必要です。日本には根付いていない大文字のファインアートについては、ヨーロッパの過去のアーティストに学べばいいと思います。

私が若い人によく言うのは、「生きている人間には聞くな。死んだ人間に聞きなさい」ということです。死んだ人間はなかなかすぐには答えてくれませんが、自力で肉薄すれば必ず答えてくれる。自分が今後、どんな風に生き残ればいいかは、その人たちに聞けばいいと思います。

そして、危機の時代の方がいい作品が生まれる。名作が安泰な時代に生まれた試しはほとんどありません。その意味では、楽しみな時代でもあると思いますよ。

写真提供:神奈川県マグカル・ドット・ネット
写真提供:神奈川県マグカル・ドット・ネット
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イベント情報

『やなぎみわ展 神話機械』
『やなぎみわ展 神話機械』

2019年10月20日(日)~12月1日(日)
会場:神奈川県 横浜 神奈川県民ホールギャラリー
時間:10:00~18:00
11/29(金)、30(土)はライブパフォーマンス開催のため17:00に閉場。(入場は16:30まで)
休館日:毎週木曜日
料金:一般1,000円 学生・65歳以上750円 高校生以下無料

『やなぎみわアーティスト・トーク』

2019年11月16日(土)
会場:神奈川県 横浜 神奈川県民ホールギャラリー 6階大会議室
時間:14:30~15:45
料金:無料

『MM』

2019年11月29日(金)、11月30日(土)
会場:神奈川県 横浜 神奈川県民ホールギャラリー
時間:各日19:00受付開始、19:30開演
料金:ベンチ席2,000円、立見1,500円

プロフィール

やなぎみわ

1967年神戸市生まれ。1991年京都市立芸術大学大学院(工芸専攻)修了。1990年代半ばより、若い女性をモチーフに、CGや特殊メークを駆使した写真作品を発表。制服を身につけた案内嬢たちが商業施設空間に佇む『エレベーター・ガール』シリーズ、2000年より女性が空想する半世紀後の自分を写真で再現した『マイ・グランドマザーズ』シリーズ、少女と老婆が登場する物語を題材にした『フェアリー・テール』シリーズ等により国内外で個展多数。2009年第53回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館代表。2010年には福島県立美術館で開催された『胸さわぎの夏休み』展に出品。2011年より本格的に演劇プロジェクトを始動。大正期の日本を舞台に、新興芸術運動の揺籃を描いた『1924』三部作を美術館と劇場双方で上演し話題を集めた。あいちトリエンナーレ2013にて上演した『ゼロ・アワー 東京ローズ 最後のテープ』は2015年アメリカ数か所を巡回した。横浜トリエンナーレ2014を皮切りにステージトレーラー・プロジェクトが立ち上がり、2016~19年には野外劇『日輪の翼』となって横浜・新宮・高松・大阪・京都・神戸への移動公演を行った。また2018年高雄市美術館(台湾)の国際企画展に招待され、新作写真シリーズ『女神と男神が桃の木の下で別れる』等を発表した。

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