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差別が愛情に変わる時、人は生まれ変わる。劇団ファマリーが語る

差別が愛情に変わる時、人は生まれ変わる。劇団ファマリーが語る

『True Colors Festival』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)

みにくいアヒルが美しい容姿になった話なのか、みにくいアヒルの認識が変わり、世界を全く違うものとしてみられるようになった話なのか。

―今回、ファマリーが『True Colors Festival』に参加することになったのはどんな経緯だったのでしょうか。

『True Colors Musical』ロゴ
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リーガン:『True Colors Festival』の企画・コーディネートを務める鈴木京子さん(CUE-Arts)とは長年の付き合いですし、彼女がディレクションをしている大阪の「ビッグ・アイ(国際障害者交流センター)」ともずっとよい関係を築いてきました。そして何より日本の芸術に触れることは、私たちファマリーの見識を広げていく意味でも重要だという思いから、是非とも参加させてもらうことにしました。

芸術祭は「学び」と「共有」の絶好の場です。自分とは違った作品へのアプローチに触れ、自分の作品を多くの人に知ってもらう機会にもなります。いろんなものに触れ、いろんなものに学び、さらに自分たちのクオリティを高めていくいい機会になると期待しています。

劇団ファマリーのデンバー公演の様子(撮影:Michael Ensminger)
劇団ファマリーのデンバー公演の様子(撮影:Michael Ensminger)
劇団ファマリーのデンバー公演の様子(撮影:Michael Ensminger)

―上映する『ホンク!』は、アンデルセンの童話『みにくいアヒルの子』をもとにしたミュージカルだそうですが、なぜ今回この作品を取り上げることにしたのですか?

リーガン:ひとつは、文化を超えても伝わるストーリーであること。そしてもうひとつは、私たちカンパニーの俳優が様々な創造的試みを行える「余白」のあるストーリーであること。この2つを基準に選んだのが『ホンク!』でした。

原作である『みにくいアヒルの子』はご存知の通り、家族のなかで一羽だけみにくいアヒルの子として生まれ、のけ者になっていた主人公が最終的には美しく「生まれ変わる」ストーリーです。ここで私が投げ掛けたかった問いは、「生まれ変わり」とはどういう意味なのか? ということ。つまりこれは、みにくいアヒルが単に容姿の美しい白鳥になった話なのか、それともみにくいアヒルの認識がガラッと変わり、世界を全く違うものとしてとらえられるようになった話なのか。私たちのミュージカル『ホンク!』は、アンデルセン童話に「障害」の要素を盛り込むことによって、こうした新しいテーマについて考えるきっかけになるはずです。

―まさに、そこがこの物語を今の時代に上演する最も重要なポイントだと僕も思っていました。世間の価値観で「みにくい」とされているものが、世間の価値観で「美しい」とされているものに「変身」するだけの単純な話では、あまり意味がないというか。

リーガン:まさに。私たちは「生まれ変わり」「大変身」というと、どうしても外側の部分が変わると思いがちです。だからこそ多くの人々が、多額のお金を払って「もっと美しく」「もっとカッコよく」を求めるわけですよね。でも、実は「生まれ変わり」とは外側の変化ではなく内側の変化なのではないか? と。いろんなものを手放し、壁を壊し、ヘイトや差別、無関心が、愛情や共感、思いやりに変わったときこそ、人は生まれ変われるんじゃないかというのが『ホンク!』のメッセージなのです。

もちろん、基になったアンデルセンの『みにくいあひるの子』は、単に「見た目」が変わる話です。が、私たちが今回上演する『ホンク!』では、そもそもなぜ私たちは、ある人の外見を見て「みにくい」と思うのか、その外見を超え相手を深く見ることや知ることはできないのか? といった問題にまで切り込んでいきます。そして、「みにくい」とされた人のみならず、周りの人々もその問題について一緒に考えることで、世の中が変わっていく。そんなストーリーになっているのです。

劇団ファマリーのデンバー公演の様子(撮影:Michael Ensminger)
劇団ファマリーのデンバー公演の様子(撮影:Michael Ensminger)
劇団ファマリーのデンバー公演の様子(撮影:Michael Ensminger)

「美しさ」の定義は誰が決めたのか、何を基準にしているのか。

―日本では最近、身体的魅力で人の優劣を判断する「ルッキズム問題」が顕在化しています。人を容姿で判断することへの違和感が広まっている最中、日本で『ホンク!』が上演されるのはとても意義のあることだと思います。

リーガン:ルッキズムに関してはアメリカでも同じような状況です。どれだけ人は外見の美しさに重きを置いているのか、「美しさ」の定義は誰が決めたのか、何を基準にしているのか。あるいは「美しさ」の定義をもっと拡大することはできないのかといったことについて、議論が交わされています。

例えば重度の障害のある人であっても、身体的、外見的に「美しい」と感じる人はいるはずで、そうしたことについて話し合う余地が『ホンク!』にはあります。私たちのカンパニーには盲目のメンバーが何人かいますが、彼らこそ誰かの容姿について「美しい」「みにくい」などとは決して思わない(笑)。人間をもっとトータルに観察し、この人はどういう人かを判断する能力が彼らにはあるのです。

―また今回、鹿子澤拳さん、東野寛子さんという2人の日本人俳優が参加するそうですが、こうした国際的なキャスティングをすることの意味や意義については、どのようにお考えでしょうか。

リーガン:これもさっき話したことと同じですが、異なる国、例えば地球の反対側にいる人たちとも作品を作り表現することが可能であること、つまり「私たちは同じなのだ」との認識を持ってもらうことが、何よりも大きな意義だと思います。

我々とは異なる言語はもちろん、独自の解釈を2人は持ってきてくれました。2人ともプロフェッショナルで素晴らしいアーティストなので、ファマリーも彼らから学ぶこともあり、とてもいい体験になっています。

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イベント情報

『True Colors MUSICAL ファマリー「ホンク!~みにくいアヒルの子~」』
『True Colors MUSICAL ファマリー「ホンク!~みにくいアヒルの子~」』

2020年2月15日(土)~2月16日(日)
会場:東京都 東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)

プロフィール

リーガン・リントン

過去の作品を様々な障害のある役者のみをキャスティングして再表現する非営利の劇団ファマリーの芸術監督。車いす使用者としては唯一のアメリカのメジャー劇団を率いて、演劇の分野でインクルージョンを呼びかける主要な人物である。

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