インタビュー

GEZANマヒト談話・後編。希望を歌う覚悟と、己に潜む怪物を語る

GEZANマヒト談話・後編。希望を歌う覚悟と、己に潜む怪物を語る

インタビュー・テキスト・編集
矢島大地(CINRA.NET編集部)
撮影:山谷佑介 

力や影響力を持つことに怯えがある。それが、自分の言葉とかに対する評価なのかもしれないね。

―ただ、その戒めや自責に引き裂かれるとか、その葛藤が表現のガソリンになるとか、あるいは明確な敵を作ることがないですよね。そこが表現者としてのマヒトさんの面白さであり、わかるようでわからない不思議な部分なんですよ。

マヒト:ああ、それって新井さんと対談した時にも言われたよね。(参考記事:GEZANマヒト×新井英樹対談。絶望が前提になった時代の生き抜き方)「マヒトさんは自分を責めたことはないの?」って。……その質問されたとき、本当に困った。だって、未だに自分でもわかんないから。ただ、全然自分の血が流れない表現をしているのかかって言われたら、それも違うしさ。

―そうですよね。<神さまを殺せ / 権力を殺せ / 組織を殺せ / GEZANを殺せ>(“赤曜日”)という言葉も歌われていて。人に優しくあるために個々が孤独になる必要性を突き詰めていくと、<GEZANを殺せ>っていう、自分を含めた集団を殺す歌になるんですか。

マヒト:これは自覚しているんだけど、俺は言葉の破壊力を持っちゃってるから。その力の使い方を間違えると、むしろ排他的で暴力的なものにすり替わる可能性があるでしょ。これは最近起こっている事件や戦争、自然災害を見渡してもそうだけど、圧倒的と言われるものはすべて、何かを傷つける結果を招く。それが元々マイノリティと呼ばれていた小さなコミュニティでも、人が集団になった時点で簡単にファシズムが生まれ得るから。そう考えていくと、自然と自分やGEZANに矢印が自分に向くところはあるよね。

マヒトゥ・ザ・ピーポー

―<GEZANを殺せ>というラインに感じたのは……極論、レベルミュージックを必要としない、つまり闘ったり抗ったりする必要のない世界を掴むことが、レベルミュージックの最終目的なわけですよね。息苦しい現状を壊そうとするレベルミュージックが必要なくなる時に初めて、マヒトさんの言う「美しい世界」が訪れるというか。

マヒト:これは新井さんとの対談でも話したけど、俺は小さい頃に、学校っていう社会の中の大多数に押し切られて悲しい想いをした経験があって。それも自分のひとつの背景としてはあると思うんだけど――そういう経験があるからこそ、自分が力や影響力を持つことにある種の怯えがある。それが、自分の言葉とか、自分ではよくわからない自分の力に対する評価なのかもしれないね。まあ、強気な発言だけどさ。その使い方を間違えたら、また同じ闘いのループが生まれちゃうんだよ。それだと、自分の理想とは全然違うことになるから。

―たとえば『SHIBUYA全感覚祭』の話ですけど、朝方のゴミの山を象徴に、人間の綺麗じゃない部分も全部含めて、あの街の不安定さがマグマになって噴出していたと思うんです。本当に街の景色が変わったし、それはたくさんの人がGEZANにベットした結果として表出した狂騒と膿と証だったと思うんです。「この言葉にならない閉塞感をぶっ壊してくれ」って。

マヒト:そうね……。

―そこで賭けてくれた人の気持ちも理解したと思うし、その自覚がこの作品と“I”を形成している要素だと思うんですけど。今、ちゃんと背負った自覚と、力を持ちたくない自分は、自分の中にどう存在してるんですか。

マヒト:うーん……そのふたつはずっと乖離していると思う。答えが出ずに混乱したまま日々を跨いでいる感覚かな。まあ、自分で言うのもなんだけど、GEZANの存在もサウンドも、そりゃ圧倒的だと思うんだよ。

―それはこの作品が証明してますね。

マヒト:でも、圧倒的であるっていう自覚と同時に、それと同じ強さで自分を疑う自分も用意してるっていうことだと思うの。感覚的な話なんだけど、自分の中にはいろんな人格があって、ある一定の発言力を持った強い人格を野に放つのは結構怖い。それを走らせると、自分が本当の怪物になるってわかるから。『全感覚祭』でもなんでも、GEZANは先頭を走るんじゃなくバランスを取る調整役だって常々言ってきたつもりだけど、それも、一つのキャラクターに走るのが怖いってことなんだよ。

―マヒトさんが自分の中の怪物やブラックボックスを自覚したのはいつ頃だったんですか。

マヒト:どうだろうな……物心ついた時から「これは解き放ったら駄目なのかな」と思ってたかも。学校とかでも、人の前での振る舞い方ひとつとってもね。

ただ、その違和感に病名を付けて主張して、「ここからは入ってこないでくれ」とか自分で言うのは、言い訳になるでしょう。それによって自分をカテゴリー化して、自分の場所を許してもらうための口実にするのは好きじゃない。それこそ、人を雑にジャンル分けするような、俺が間違ってると思う振る舞いになるわけだしさ。でも、誰もが何かしらの怪物を持ってるんじゃないかなって俺は思うんだよ。だから悩んだり混乱したりするわけで。それが現状の答えかなって気がする。

『凸-DECO-』(2014年)収録

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リリース情報

『狂(KLUE)』(CD)
GEZAN
『狂(KLUE)』(CD)

2019年1月29日(水)発売
価格:3,080円(税込)
JSGM-34

1. 狂
2. EXTACY
3. replicant
4. Human Rebellion
5. AGEHA
6. Soul Material
7. 訓告
8. Tired Of Love
9. 赤曜日
10. Free Refugees
11. 東京
12. Playground
13. I

ツアー情報

『十三月presents GEZAN 5th ALBUM「狂(KLUE)」release tour 2020』

2020年2月13日(木)
会場:北海道 札幌 BESSIE HALL

2020年2月17日(月)
会場:青森県 弘前 Mag-Net w / 踊ってばかりの国

2020年2月19日(水)
会場:山形県 酒田 hope

2020年2月20日(木)
会場:宮城県 仙台 LIVE HOUSE enn 2nd

2020年3月18日(水)
会場:大阪府 梅田CLUB QUATTRO

2020年3月19日(木)
会場:愛知県 名古屋 APOLLO BASE

2020年4月1日(水)
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM

プロフィール

GEZAN
GEZAN(げざん)

2009年、大阪にて結成。自主レーベル「十三月」を主宰する。2018年に『Silence Will Speak』をリリースし、2019年6月には、同作のレコーディングのために訪れたアメリカでのツアーを追ったドキュメンタリー映画『Tribe Called Discord:Documentary of GEZAN』が公開された。2019年10月に開催予定だった主催フェス『全感覚祭』東京編は台風直撃の影響で中止となったが、中止発表から3日というスピードで渋谷での開催に振り替えられた。そして、1月29日に『狂(KLUE)』をリリース。

関連チケット情報

2020年3月18日(水)
GEZAN
会場:梅田クラブクアトロ(大阪府)
2020年3月19日(木)
GEZAN
会場:アポロベイス(愛知県)
2020年4月1日(水)
GEZAN
会場:LIQUIDROOM(東京都)

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