インタビュー

GEZANマヒト談話・後編。希望を歌う覚悟と、己に潜む怪物を語る

GEZANマヒト談話・後編。希望を歌う覚悟と、己に潜む怪物を語る

インタビュー・テキスト・編集
矢島大地(CINRA.NET編集部)
撮影:山谷佑介 

「意味がない」とされる声も出せるっていう意味で、歌はすごくきれいな場所だと思うから、大切にしたい。

―赤ちゃんが鳴くようにプリミティブで根源的な音楽・歌の在り方を話してもらいましたし、別人格という話もありましたけど。自分の中の赤ちゃんや、あるいは普段は抑えている怪物を歌の中では出せる、みたいな感覚もあるんですか。

マヒト:どうだろう……。いや、自分では(そういう感覚が)ない気がするな。かと言って、大人になった自分が歌ってる感覚もないんだよね。

さっき話した過去・未来・現在の話と一緒だと思うんだけど、一方向に成長している感覚も全然ないんだよ。だってさ、小さい頃の自分が無邪気に持ってた答えがあったとして、大きくなって勉強し直しても「結局、小さい頃と同じ答えに辿り着いたな」って思うこともあるじゃない?

―わかります。小さい頃の自分は今の自分を全部知ってたんじゃないかって思うことがありますよね。

マヒト:そう考えたら、それこそ赤ちゃんのシャウトが最終的な答えだと思ったりするし。一般的には、社会に触れて勉強する中で「完全」に向かって成長していくとされているけど、俺は全然そんなことないと思っていて。もちろん知識は増えていくけど、それが成長という言葉で片づけられるかというと、違和感がある。

たとえばライターさんで言っても、文章を書き始めて一年目の自分と今の自分を比べたら、あの時の自分の方が書くこと自体に情熱を燃やせていた、みたいなことがあるかもしれないよね。

それはつまり、ある角度から見たら過去とされる時点の自分の方が進歩してるとも言えるわけじゃん。だから「生きてきた年月」みたいなのも、理屈としては理解できるんだけど、感覚的にはたぶん評価してないんだよね。時を経るってことも、大人ってものの境界も、ちゃんと考えてみれば曖昧な評価基準でしょ。そこに自分は当てはまらないなって感じてきたところはあるかな。子供だろうが、大人だろうが、どちらが進歩しているとは言い切れないんだよ。同じじゃんって思うしさ。

―本当にただの純粋な生き物として人間に向き合ってるんでしょうね。それに、一般的な評価基準や時間軸の上にいない人だからこそ、名前のつけられない部分を存在させるために、声と歌と言葉にして叫んでいる人なんだろうなと思いました。

マヒト:きっと、「意味がない」とされる声でも出せるっていう意味で、歌はすごくきれいな場所だなあと思うから、大切にしたいなって気持ちはあるね。

やっぱり不完全なものを許容することが今一番大事な感覚だと思うし、ただレタッチされた景色に誤魔化されていく世の中だからこそ、不完全な生き物の声を受け入れられる歌とか、オルタナティブが前を行くべきだと思うんだよね。今オルタナティブが闘わなかったら、そんなのおかしいと思うよ。意味がないとされたものの声を許しているっていう意味で間違いなく自分たちはオルタナティブだと思うし、胸を張れますね。

GEZAN『狂(KLUE)』ジャケット写真
GEZAN『狂(KLUE)』ジャケット写真(Amazonで購入する

―絶望に覆われているだけじゃなくて、今ここに自分が存在していること自体が希望になっていくんだと思える。そういう意味でも一歩先が歌われていると思います。

マヒト:“DNA”に<寂しさと喜び半分ずつ持って>っていう歌詞があるけど、たぶん、人が持っている希望も絶望も、同じ数だと思うんだよ。言霊って言葉があるけどさ、歌も言葉も、誰がどう発するかによって響き方は違うでしょ。で、希望をちゃんと飛ばせる人は、同じ数の絶望も持っていると思うんだよね。

―希望を本当の希望たらしめるのは希望を心から欲する切実な気持ちで、それは絶望を知っているからこそ出てくるものだっていうことですよね。

マヒト:そのくらいじゃないと想いなんて響かないよね。たとえば<僕らは幸せになってもいいんだよ>(“DNA”)っていうフレーズも、<ちゃんと笑うんだよ>(“I”)っていうフレーズも、俺が本当に幸せだったら出てこないんだよ。今幸せで満たされてますっていう人が<ちゃんと笑うんだよ>なんて歌っても、届かないよ。きっと、「希望」も「幸せ」も、逆のものを均等な量で持っている人しか歌っちゃいけない言葉なんだと思う。

―改めて、聴いたことのないサウンドまみれのアルバムでした。解体と再構築を根底に持つ「ダブ」がベースになっているのも、今マヒトさんが向き合っている街・世界の景色と繋がりますよね。なんでこんなに圧倒的なサウンドを鳴らせるんですか。

マヒト:いや、わかんないです(笑)。

―はははははは。

マヒト:だって、俺らめちゃくちゃ音楽聴くからなあ。GEZANの中でも、これいいから聴いてみてや、とか普通にやってるからね。なんならもう新曲も作り始めてるんだけど、それはサンバだもん(笑)。

―うお。やっぱり、踊るっていうことを個々の闘争表現として捉えてると。歴史を見てみても、オルタナティブが自分を解放して、存在を表明するために掲げた武器ですよね。「踊る」って。

マヒト:そうだと思う。だから、今作り中のやつも楽しみにしててほしいっすね。

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リリース情報

『狂(KLUE)』(CD)
GEZAN
『狂(KLUE)』(CD)

2019年1月29日(水)発売
価格:3,080円(税込)
JSGM-34

1. 狂
2. EXTACY
3. replicant
4. Human Rebellion
5. AGEHA
6. Soul Material
7. 訓告
8. Tired Of Love
9. 赤曜日
10. Free Refugees
11. 東京
12. Playground
13. I

ツアー情報

『十三月presents GEZAN 5th ALBUM「狂(KLUE)」release tour 2020』

2020年2月13日(木)
会場:北海道 札幌 BESSIE HALL

2020年2月17日(月)
会場:青森県 弘前 Mag-Net w / 踊ってばかりの国

2020年2月19日(水)
会場:山形県 酒田 hope

2020年2月20日(木)
会場:宮城県 仙台 LIVE HOUSE enn 2nd

2020年3月18日(水)
会場:大阪府 梅田CLUB QUATTRO

2020年3月19日(木)
会場:愛知県 名古屋 APOLLO BASE

2020年4月1日(水)
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM

プロフィール

GEZAN
GEZAN(げざん)

2009年、大阪にて結成。自主レーベル「十三月」を主宰する。2018年に『Silence Will Speak』をリリースし、2019年6月には、同作のレコーディングのために訪れたアメリカでのツアーを追ったドキュメンタリー映画『Tribe Called Discord:Documentary of GEZAN』が公開された。2019年10月に開催予定だった主催フェス『全感覚祭』東京編は台風直撃の影響で中止となったが、中止発表から3日というスピードで渋谷での開催に振り替えられた。そして、1月29日に『狂(KLUE)』をリリース。

関連チケット情報

2020年3月18日(水)
GEZAN
会場:梅田クラブクアトロ(大阪府)
2020年3月19日(木)
GEZAN
会場:アポロベイス(愛知県)
2020年4月1日(水)
GEZAN
会場:LIQUIDROOM(東京都)

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