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KEN ISHII×児玉裕一×土井昌徳が90年代を振り返り、提示する希望

KEN ISHII×児玉裕一×土井昌徳が90年代を振り返り、提示する希望

Bells of New Life、JOIN THE PAC
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:玉村敬太 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

古きをたずね、新しきを知る。温故知新の精神は、ときに懐古主義にもなってしまうが、かつての熱量に触れ「いま」を再定義することには意味がある。そんな気持ちにさせてくれるインタビューをお送りしたい。日本を代表するテクノミュージシャンであるKEN ISHIIが、2019年に2曲のMVを発表した。1つは、彼自身を国際的なスターダムに押し上げた傑作“EXTRA” へのオマージュシーンも登場するアルバムリード曲の“Bells of New Life”。そして、“EXTRA”やその参照項たる大友克洋の『AKIRA』と時代を同じくするビデオゲーム『パックマン』の生誕40周年を祝う“JOIN THE PAC”だ。

それらの映像を担当したのは、ディレクターに椎名林檎など数々のアーティストのMVを手がけた児玉裕一と、VR制作などを手がけ、今回のMVのクリエイティブディレクターを努めた土井昌徳。このビジョン豊かな三人の鼎談だ。

『AKIRA』ってあまりにも鮮烈すぎて、簡単にその上位バージョンが現れる感じがない。(KEN)

―児玉さんが監督を、土井さんがクリエイティブディレクターを努められた“Bells of New Life”のMVには、1995年に発表されたKENさんの伝説的な曲“EXTRA”のMVへのオマージュシーンも登場しますね。アニメーターの森本晃司さんによる同MVは、1988年公開の、やはり伝説的なアニメーション映画『AKIRA』とも通じる描写があります。そして、みなさんは全員が大の『AKIRA』好きだとか!

児玉:やっぱり『AKIRA』も“EXTRA”もめちゃくちゃ衝撃でしたからね。KENさんが森本さんにMV制作を依頼したのも、やっぱり彼が『AKIRA』の作画を担当されていたのがきっかけですか?

KEN ISHII:『AKIRA』の衝撃は間違いないです。映像にしても音楽の使い方にしても、それまでのあらゆる映像とは一線を画していて、公開当時の僕はごく普通の少年でしたけど、記憶に強烈に焼きついてました。その後に音楽の世界で活動するようになって、ヨーロッパのレーベルから新作を出すにあたって「なにか特別なアイデアがないか?」といわれたんです。そのときに出てきたアイデアが『AKIRA』の森本さんにお願いするということ。でも、まさか本当に作っていただけるとは夢にも思っていませんでした。なんのコネもなかったですし。

でも、大友克洋さんや森本さんが根城にしてる店に、物怖じしない当時の担当者が突撃したんですよ。僕ら全員20代で血気盛んだったから。

KEN ISHII(ケン イシイ)<br>「東洋のテクノ・ゴッド」との異名を持つ、アーティスト、DJ、プロデューサー。1年の半分近い時間を海外でのDJで過ごす。︎1993年、ベルギーのレーベル「R&S」からデビュー、イギリスの音楽誌「NME」のテクノチャートでNo.1を獲得。1996年アルバム『Jelly Tones』をリリース。このアルバムからのシングル「Extra」のアニメーションMV(映画「AKIRA」の作画監督/森本晃司監督作品)が、イギリスの“MTV DANCE VIDEO OF THE YEAR”を受賞した。2017年にはベルギーで行われている世界最高峰のビッグフェスティバル<Tomorrowland>に出演するなど常にワールドワイドに活躍している。
KEN ISHII(ケン イシイ)
「東洋のテクノ・ゴッド」との異名を持つ、アーティスト、DJ、プロデューサー。1年の半分近い時間を海外でのDJで過ごす。︎1993年、ベルギーのレーベル「R&S」からデビュー、イギリスの音楽誌「NME」のテクノチャートでNo.1を獲得。1996年アルバム『Jelly Tones』をリリース。このアルバムからのシングル「Extra」のアニメーションMV(映画「AKIRA」の作画監督/森本晃司監督作品)が、イギリスの“MTV DANCE VIDEO OF THE YEAR”を受賞した。2017年にはベルギーで行われている世界最高峰のビッグフェスティバル<Tomorrowland>に出演するなど常にワールドワイドに活躍している。

児玉&土井:(笑)

KEN ISHII:それで一緒に飲んでみると、大友さんも森本さんもテクノ好きでよく聴いてると。森本さんのスタジオを訪ねてみると、実際にデスクにステレオがあって、並んでるCDもテクノばかりで、聴きながら作画をしているとおっしゃっていました。そこからはトントン拍子で話が進みましたね。

―あの独自の世界観もそのやりとりから生まれたのでしょうか?

KEN ISHII:MV中で使っているSEの提供とかはしてますけど、あとはもう森本さんにお任せでした。アニメってそう簡単に個人で作れるものではなくて、大きなチームで時間とお金をかけるから、できる冒険も限られているんです。でも音楽のMVであれば好きなことを大胆にできるんじゃないかと森本さんはおっしゃってたんですよ。はじめて自分の映像をつけてみたい音楽に出会えたともいっていて、かなり燃えてやってくださいました。

―いい話ですね!

児玉:僕の『AKIRA』との出会いは、2つ歳上のいとこのお兄ちゃん経由でした(笑)。やたらカラフルな漫画の単行本を「やばいやばい!」って読んでいるのを脇から見ていて「へー?」って思ってたんですよ。それで、その後映画化されるというのを知って、たしか10歳くらいで映画館に観に行ったんです。

児玉裕一(こだま ゆういち)<br>映像監督。1975年生まれ。東北大学理学部化学系卒業。広告代理店勤務を経て独立。2006年より「CAVIAR」に所属。2013年9月「vivision」 設立。 CM、MVなどの演出を手掛ける。近作にHONDA「HONDA JET」 asics「ぜんぶ、カラダなんだ。」SoftBank「しばられるな」椎名林檎MV「鶏と蛇と豚」など。 リオ五輪閉会式の五輪旗の引き継ぎ式における東京パートのチーフ映像ディレクターを務めた。
児玉裕一(こだま ゆういち)
映像監督。1975年生まれ。東北大学理学部化学系卒業。広告代理店勤務を経て独立。2006年より「CAVIAR」に所属。2013年9月「vivision」 設立。 CM、MVなどの演出を手掛ける。近作にHONDA「HONDA JET」 asics「ぜんぶ、カラダなんだ。」SoftBank「しばられるな」椎名林檎MV「鶏と蛇と豚」など。 リオ五輪閉会式の五輪旗の引き継ぎ式における東京パートのチーフ映像ディレクターを務めた。

―早熟な10歳(笑)。感想はどうでした? けっこうグロいシーンもありましたが。

児玉:「ぜんぜん意味がわからないけど、スゴイ!」って大ショックでした。そしてまた時間が飛ぶんですが、大学生のときに“EXTRA”MVを見るわけです。その頃になるといろんなカルチャーにも触れて楽しみつつも、なにかもやもやするようなものも抱えていたんですが、“EXTRA”MVが目の前に現れたことでそのもやもやに「パチン!」とピースがハマったように感じました。その後は“EXTRA”MVと『AKIRA』を交互にエンドレスで見続ける……そんな学生時代でしたね。

土井:僕の『AKIRA』ショックは深夜のお風呂上がりでした(笑)。風呂から出て、テレビをつけたらちょうどクライマックスの鉄雄がわーっとなってるところで「なんだこれは!」と。それで翌朝学校に行くと、たまたま趣味の合う友だちも放送を見ていて「昨日のアレ、見た!?」って盛り上がったんです。僕は地元が千葉なんですけど、その日の放課後に津田沼の本屋さんに走って、即単行本を買いに行くっていう(苦笑)。

その後にいろいろ掘っていくんですけど、そういえば映画が公開されていた8歳くらいの頃の記憶に、主人公の金田がバイクでスライドさせるイメージがあったことを思い出したりしていって、そうやって一気に糸がつながっていった感じです。KENさんの“EXTRA”MVとの出会いも、昔パルコの上にあったギャラリーでやっていた大友克洋の展示会でした。

土井昌徳(どい まさのり)<br>株式会社HERE.代表取締役社長/クリエイティブディレクター。学生時代より映像制作を始め、VJ(Visual Jockey)として数多くのライブでの映像演出に参加。CGプロダクションでのVFXデザイナーを経て、映像作品のプロデュースやライブエンターテイメント空間、商業施設における映像演出を手掛ける。
土井昌徳(どい まさのり)
株式会社HERE.代表取締役社長/クリエイティブディレクター。学生時代より映像制作を始め、VJ(Visual Jockey)として数多くのライブでの映像演出に参加。CGプロダクションでのVFXデザイナーを経て、映像作品のプロデュースやライブエンターテイメント空間、商業施設における映像演出を手掛ける。

KEN ISHII:やっぱり脳裏への焼きつけ方の強さが違いますよね。他のSF超大作って続編があったりすると、最初の衝撃が更新されていく感じがあるんですけど、『AKIRA』ってあまりにも鮮烈すぎて、簡単にその上位バージョンが現れる感じがない。だからずっと残るんだろうなっていまの話を聞いていて思いました。

あと、音楽もかなり不思議ですよね。あのオリジナリティーあふれる音楽が、よくアニメ映画の音楽として企画を通ったと思います。そこもトンガっていた。

児玉:KENさんはあの音楽を当時からテクノミュージックとしてとらえてましたか?

KEN ISHII:昔もいまもテクノって感じではないかもしれません。とにかく独創的。それがあんな大作に使われるっていうところが「かっこいいなー」と。森本さんとの思い出でいうと、“EXTRA”の中で壁面に実写映像が映っていて、若き日の僕が出てるんです。それでなにか食べてるんだけど。

―蕎麦かなにかでしたっけ?

KEN ISHII:あれはね、ワカサギの揚げ物。南蛮漬けかな?

児玉:え! 僕、ずっとカニか焼き鳥だと思ってました。

KEN ISHII:あれは中打ち上げを兼ねてみんなでご飯を食べてるところなんです。みんな楽しい気分で「撮影していい?」って森本さんが撮った映像。だから、画面の外にはじつは大友さんもいるんです。

全員:へー!

児玉:何回もビデオを止めて見ていたのにワカサギと気づきませんでした……。長年の謎が解けました。

KEN ISHII“EXTRA”MV
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リリース情報

KEN ISHII『Möbius Strip』完全生産限定盤 Type A(2CD+7インチアナログ盤)
KEN ISHII
『Möbius Strip』完全生産限定盤 Type A(2CD+7インチアナログ盤)

2019年11月27日(水)発売
価格:5,060円(税込)
UMA-9130~2

[CD]
1. Bells of New Life
2. Chaos Theory
3. Take No Prisoners(Album Mix)with Jeff Mills
4. Vector 1
5. Green Flash(Album Mix)with Dosem
6. Silent Disorder with Go Hiyama
7. Prism
8. Vector 2
9. Skew Lines
10. Polygraph
11. Quantum Teleportation with Jeff Mills
12. Vector 3
13. Like A Star At Dawn

[CD-EXTRA]
・JOIN THE PAC(Official Theme Song for PAC-MAN 40th Anniverary : Club Mix)
・Bells of New Life MV&25周年スペシャルインタビュー映像
・KI Möbius Strip オリジナルフォント(Mac,Windows,Unix対応 OpenType PS)

[7インチアナログ盤]
1. EXTRA('95 Original Video Edit Rematered)
2. JOIN THE PAC(7” Version)
※全世界1000セット限定、7インチサイズハードカバー仕様、折込ポスター付

KEN ISHII
『Möbius Strip』完全生産限定盤 Type B(2CD)

2019年11月27日(水)発売
価格:3,630円(税込)
UMA-8130/1

[CD]
1. Bells of New Life
2. Chaos Theory
3. Take No Prisoners(Album Mix)with Jeff Mills
4. Vector 1
5. Green Flash(Album Mix)with Dosem
6. Silent Disorder with Go Hiyama
7. Prism
8. Vector 2
9. Skew Lines
10. Polygraph
11. Quantum Teleportation with Jeff Mills
12. Vector 3
13. Like A Star At Dawn

[CD-EXTRA]
・JOIN THE PAC(Official Theme Song for PAC-MAN 40th Anniverary : Club Mix)
・Bells of New Life MV&25周年スペシャルインタビュー映像
・KI Möbius Strip オリジナルフォント(Mac,Windows,Unix対応 OpenType PS)

プロフィール

KEN ISHII(けん いしい)

「東洋のテクノ・ゴッド」との異名を持つ、アーティスト、DJ、プロデューサー。1年の半分近い時間を海外でのDJで過ごす。1993年、ベルギーのレーベル「R&S」からデビュー、イギリスの音楽誌「NME」のテクノチャートでNo.1を獲得。1996年アルバム『Jelly Tones』をリリース。このアルバムからのシングル「Extra」のアニメーションMV(映画「AKIRA」の作画監督/森本晃司監督作品)が、イギリスの“MTV DANCE VIDEO OF THE YEAR”を受賞した。2017年にはベルギーで行われている世界最高峰のビッグフェスティバル<Tomorrowland>に出演するなど常にワールドワイドに活躍している。

児玉裕一(こだま ゆういち)

映像監督。1975年生まれ。東北大学理学部化学系卒業。広告代理店勤務を経て独立。2006年より「CAVIAR」に所属。2008年、カンヌ国際広告賞、クリオ賞、ワン・ショーの世界3大広告賞全てでグランプリを受賞。2013年9月「vivision」設立。CM、MVなどの演出を手掛ける。近作にHONDA「HONDA JET」asics「ぜんぶ、カラダなんだ。」SoftBank「しばられるな」椎名林檎MV「鶏と蛇と豚」など。リオ五輪閉会式の五輪旗の引き継ぎ式における東京パートのチーフ映像ディレクターを務めた。

土井昌徳(どい まさのり)

株式会社HERE.代表取締役社長/クリエイティブディレクター。学生時代より映像制作を始め、VJ(Visual Jockey)として数多くのライブでの映像演出に参加。CGプロダクションでのVFXデザイナーを経て、映像作品のプロデュースやライブエンターテイメント空間、商業施設における映像演出を手掛ける。また日本においてプロジェクションマッピングをいち早く空間演出に取り入れ、東京を中心に数々のプロジェクションマッピングの企画・演出・制作を手掛ける。近年ではVirtual Realityコンテンツやドームコンテンツの制作にも携わる。

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