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ルミネ広告から小説が誕生。尾形真理子がすくい取る「世の気分」

ルミネ広告から小説が誕生。尾形真理子がすくい取る「世の気分」

ルミネ『One piece of a woman』
インタビュー・テキスト
松井友里
編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)

オリンピックとか春とか、強制的な大きな流れに気後れしてしまう人が、前向きになれるようなものを作りたくて。

―新たに公開されたシーズン広告「止まないエールを、自分にも。」についても教えていただけますか。

ルミネ2020年春シーズン広告「止まないエールを、自分にも。」
ルミネ2020年春シーズン広告「止まないエールを、自分にも。」

尾形:今年は東京でオリンピックがありますよね。大きなイベントの前に街に沸き起こる高揚感と、「自分」というものを繋いだときに、どういったメッセージが作れるんだろうという発想からスタートしました。

ルミネのお客さま一人ひとりが主人公であると考えたときに、その主人公たちのほとんどがオリンピックに出場する側ではなく、応援する立場ですよね。応援することも尊いことだし、さらには自分を応援するっていう、ちょっと忘れがちな気持ちに気づくきっかけになったらいいなと思って、まずポスターを作りました。

そこから先、小説を書くときには、私自身の感覚が結構出ている感じがするんですけど、なにかが大きく一つの方向に向かおうとするときに、居心地の悪さを感じる人っていつも世の中にはいるはずで。

―そうですね。

尾形:「春だから新しい私になっておしゃれしよう」みたいなメッセージだって、もちろん間違っていないです。でも一方で、春って環境が変わることも多くて、緊張したり疲れたりするんだけど、そんなことを言っていないで、新しい環境にうまく馴染んでいるふりをして、笑っていないといけないように思わされる季節でもある。

オリンピックとか春とか、強制的な大きな流れみたいなものができてしまったときに、気後れしてしまうような人が、ちょっとでも前向きになれるようなものを作りたくて。それで、高校を卒業してから十年後の同窓会に、特に理由はないけど、なんとなく行きたくないと思う女の子の小さな話を書いたんです。

『One piece of a woman』Vol.9「止まないエールを、自分にも。」
『One piece of a woman』Vol.9「止まないエールを、自分にも。」(サイトを見る

尾形:今回の小説の主人公って、いい子なのか悪い子なのか、素直なのか、ずるくて計算高い子なのか、判別がつかない。だけどどういう場面でどの側面が出るかが人によって違うだけで、人って一概にいい人とも悪い人とも言えないものですよね。そういう揺らぎを持っている一人の女性像を描きたかった。

―さきほど「愛だの恋だの好きなように書いている風」とおっしゃっていましたが、尾形さんが手がけてきたルミネのコピーって、すごく感覚的なものだと思われていることが多い気がして。けれど広告のクリエイティブってロジカルに作っていく部分が当然あるものだと思うのですが、ご自身のなかではどういうバランスで作られていますか?

尾形:それでいうと、95%は理屈で作っています。だけど最終的に、そのコピーを見たときになにか感じるものがあるかないかは感覚で選んでいるんです。だから私、物語とか書けないんだろうな。文章を書くことも好きだとは言えないです(笑)。

―そうなんですね。

尾形:でもね、今ルミネが女の子たちにどんなことを言えるんだろうって考えるのは、すごく好きなんです。以前に書いた「試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。」っていうコピーがあるんですけど、私は試着室に入っても誰のことも思い出さないんですよ。完全に服しか見ていない。だけど、そういう女の子がいることは知っていて、試着室のなかでそういう気持ちになっている子はかわいいなと思う。だから書けるんでしょうね。

ルミネ2014年シーズン広告「試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。」
ルミネ2014年シーズン広告「試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。」
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サイト情報

『One piece of a woman』
『One piece of a woman』

LUMINEの1枚のポスターから生まれたショートストーリー。
あたらしい時代がはじまる変化の空気を感じながら、自分のペースを整えるそんな小さな物語です。

プロフィール

尾形真理子(おがた まりこ)

コピーライター / クリエイティブディレクター。1978年東京都生まれ。2001年(株)博報堂に入社し、2018年(株)Tangを設立。LUMINEをはじめ、資生堂、Tiffany&Co.、キリンビール、Netflix、FUJITSUなど多くの企業広告を手がける。朝日広告賞グランプリ、ACC賞ゴールド、TCC賞など受賞多数。『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。』(幻冬舎)で小説家デビュー。その他、歌詞の提供やコラムの執筆など活躍の場を広げる。

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