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haruka nakamuraが語る、音楽とは灯台の光 日々の生活に慈しみを

haruka nakamuraが語る、音楽とは灯台の光 日々の生活に慈しみを

haruka nakamura『スティルライフ』
インタビュー・テキスト
金子厚武
編集:矢島由佳子(CINRA.NET編集部)

haruka nakamuraにとって10年ぶりのソロアルバムにして、初のピアノソロ作品『スティルライフ』のコンセプトは、「生活に寄り添う音楽」である。自宅で1か月以上作業を続け、ミュートピアノを自ら録音して作られた本作には、温かな、優しい旋律の15曲が、自然な環境音とともに収められている。それは、ただそこにあるだけで尊い日常の大切さに改めて気付かせてくれるとともに、聴く人の心にささやかな希望の光を灯すはず。

ジャケットにも飾られている静物画を描いた祖父、ピアノ講師でもあった母、尊敬する音楽家であるNujabesなど、『スティルライフ』はharuka nakamuraの歩いてきた道のりと、その中で出会ってきたたくさんの人々との物語が詰まった作品でもある。もちろん、そこには多くの「別れ」も含まれるだろう。

しかし、優れた芸術作品というのは、一人で自らと向き合う時間の大切さを教えてくれると同時に、「一人じゃない」という勇気を与えてくれる。慈しみの眼差しを持って、『スティルライフ』とともにある日々を。

ピアノを離れてから15年経って、もう一度、向き合うきっかけをくれたのはNujabesさんだったんです。

harukanakamura(はるか なかむら)。緊急事態宣言が発令され外出自粛要請が出ている中、オンラインでのインタビューに応じてくれた<br>音楽家 / 青森出身。カテドラル聖マリア大聖堂、世界平和記念聖堂、野首天主堂を始めとする多くの重要文化財にて演奏会を開催。杉本博司「江之浦測候所」の特別映像、国立新美術館「カルティエ、時の結晶」などの音楽を担当。清水寺・成就院にてピアノ演奏をライブ配信。早稲田大学交響楽団との共演、Nujabes、LUCA、柴田元幸、ミロコマチコ、evam evaなど多くのコラボレーションを行う。2020年より自主レーベル「灯台」を立ち上げた。
harukanakamura(はるか なかむら)。緊急事態宣言が発令され外出自粛要請が出ている中、オンラインでのインタビューに応じてくれた
音楽家 / 青森出身。カテドラル聖マリア大聖堂、世界平和記念聖堂、野首天主堂を始めとする多くの重要文化財にて演奏会を開催。杉本博司「江之浦測候所」の特別映像、国立新美術館「カルティエ、時の結晶」などの音楽を担当。清水寺・成就院にてピアノ演奏をライブ配信。早稲田大学交響楽団との共演、Nujabes、LUCA、柴田元幸、ミロコマチコ、evam evaなど多くのコラボレーションを行う。2020年より自主レーベル「灯台」を立ち上げた。

―まずは、今回初めてピアノソロ作品を作ろうと思ったきっかけから教えてください。

haruka:もともと母親がピアノの先生で、僕も5歳頃からピアノを始めたんですけど、当時は「女の子の習い事」みたいなイメージが田舎にはあって。しかも僕は名前も「はるか」だから、いじめられたりもしたし、自ら進んでやっていたわけではなかったんです。でも、「小学校卒業までは頑張ってやりなさい」って母親と約束があったので、そこまでは続けていました。小学校を卒業してからは約束通りすぐやめて、ギターを弾くようになって、バンドを組んだりしていたんですね。そこから15年以上経って、もう一度ピアノに戻るきっかけをくれたのは、Nujabesさんだったんです。

―MySpaceに上げた曲に対してNujabesさんが反応してくれて、一緒に曲を作るようになったんですよね。

haruka:最初にMySpaceにきたメッセージは「最高のギターを弾いてください」の一言だったんです。でも“Lamp”という曲で、ビートを出しながら、セバさん(Nujabesの本名)のフルートと僕のピアノでセッションをしたときに、「ピアノの方が自分の音楽を表現できるんじゃない?」って言われて。

haruka nakamura feat.Nujabes“Lamp”。Nujabesが逝去して今年で10年となる

haruka:ちょうどその頃、(青葉)市子ともよく音楽をしていて、市子からも「harukaはギターじゃなくてピアノだね」って言われたんです。でも、ピアノは12歳でやめて、15年以上経っていたから、最初は半信半疑だったというか、「今さらピアノに戻るの!?」って感じで(笑)。

―ずっとギターでやってきたのに(笑)。

haruka:15才で東京に出てきて、家にピアノなんてなかったので、一切弾いてなかったですからね。でも、彼らの言葉に影響を受けて、バンドの休憩時間とかに弾くようになって、それでできたのが『twilight』(2010年にharuka nakamuraソロ名義でリリースした2ndアルバム)。

ただ、その頃は「みんなとセッションをするためのツール」っていう感じで、まだ全然ピアノには還ってない段階だったんです。でも、セバさんが亡くなって、音楽をやめようと思ったときに“光”という曲ができて、その曲の道しるべに「PIANO ENSEMBLE」(インタビュー記事)を組んで……ピアノと向き合う時間が何年間も生まれていきました。

haruka nakamuraのピアノに加えてバイオリン、管楽器、打楽器で編成された「PIANO ENSEMBLE」と、聖歌隊・CANTUSによって演奏された、“光”

―段々、ピアノに還っていったと。

haruka:PIANO ENSEMBLEの活動が終わったあとは、旅先で一人でいろんなピアノを弾くようになったんです。特に福岡のpapparayrayを始め、岐阜の本田、東京のHADEN BOOKS:、篠山のrizmの森とか、ピアノのあるところで自由に弾かせてもらって、結構曲のスケッチがたまっていって。

そんな頃にたまたまHADEN BOOKS:の(林下)英治さんが……彼も青森出身で、僕の「東京のお兄さん」みたいな人なんですけど、HADEN BOOKS:がお休みする間、お店にあったピアノを僕の家に置いていいよって言ってくれて。それで初めて自分の部屋にアップライトピアノが来て、子供の頃以来、ピアノを毎日弾ける環境が訪れたんです。

―ピアノに導かれているようなストーリーですね。

HADEN BOOKS:よりharuka nakamuraの家に運び込まれたピアノ。アルバム『スティルライフ』制作期間中に毎日書いていた制作日誌「一月十日 録音開始「新しい朝」」より
HADEN BOOKS:よりharuka nakamuraの家に運び込まれたピアノ。アルバム『スティルライフ』制作期間中に毎日書いていた制作日誌「一月十日 録音開始「新しい朝」」より
HADEN BOOKS:の林下英治店長。移転しリニューアルオープンした店内にて。日誌「一月十一日 「日曜の影」」より
HADEN BOOKS:の林下英治店長。移転しリニューアルオープンした店内にて。日誌「一月十一日 「日曜の影」」より

haruka:ただ、防音の家ではないので、ミュートペダルで弾いていたんです。マフラーペダルとも言いますけど、子供が家庭で練習するときなどに使うもので、弦とハンマーの間にフェルトの布を入れることで、弱音を作る。

僕はもともとその音が好きで、小さい会場でライブをするときは、よくミュートペダルで演奏していたんですよね。すごく温もりがあって、「部屋にそのまま溶け込む」みたいな音。それで徐々にこの音の魅力にはまり込んでいって、これで作品を作りたい、と思うようになったんです。

―そうして完成した新作『スティルライフ』は、自主レーベル「灯台」からのリリースになるんですよね。

haruka:そうなんです。僕の中で、音楽って、暗い海の中を泳ぎながら、遠くに見える灯台の光みたいなもので。海を漕いでいって、だんだんと光が見えてくる。それは船乗りにはすごく温かい光で、暗闇の海の中であっても、灯台の光を目指して漕ぎ続けることができる。音楽は僕にとってそういうもので、それをなんの制約もフィルターもなく、ストレートに届けたいと思ったんですよね。

市子も今年から自分のレーベルhermineを作って作品を出しています。10年くらいそれぞれやってきて、そういうフェーズに来てるのかなって話していました。そもそも、セバさんがそういう活動をしていた人でもありましたしね。

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リリース情報

『スティルライフ』(CD)
haruka nakamura
『スティルライフ』(CD)

2020年4月24日(金)発売
価格:3,520円(税込)
T-001

1. あくる日
2. ある光
3. 新しい朝
4. うたかた
5. 君のソネット
6. Fly
7. 春からの電話
8. イーゼルを見据えて
9. サムタイム
10. 風が通り過ぎていく季節
11. 雨の日のために
12. アンソロジー
13. たしかな声
14. 17時と街
15. 予告灯

haruka nakamura
『スティルライフ』(LP)

2020年5月22日(金)発売
価格:4,180円(税込)
TL-101

1. あくる日
2. ある光
3. 新しい朝
4. うたかた
5. 君のソネット
6. Fly
7. 春からの電話
8. イーゼルを見据えて
9. サムタイム
10. 風が通り過ぎていく季節
11. 雨の日のために
12. アンソロジー
13. たしかな声
14. 17時と街
15. 予告灯

プロフィール

haruka nakamura
haruka nakamura(はるか なかむら)

音楽家 / 青森出身。東京・カテドラル聖マリア大聖堂、広島・世界平和記念聖堂、野崎島・野首天主堂を始めとする、多くの重要文化財にて演奏会を開催。杉本博司『江之浦測候所』のオープニング特別映像、国立新美術館『カルティエ 時の結晶』などの音楽を担当。京都・清水寺成就院よりピアノ演奏ライブ配信。CM、WEB、テレビ番組の音楽、プラネタリウム劇伴音楽などの楽曲制作、早稲田大学交響楽団との共演、Nujabesをはじめとするコラボレーション、楽曲提供、プロデュース等も手掛ける。また、柴田元幸との朗読セッション(ライブアルバムを発表)や、ミロコマチコとのライブペインティングシリーズも敢行中。evam evaなどブランドとのコラボレーションアルバムを多数発表。福岡papparayrayでのみ、特別なピアノソロ演奏を行う。2019年より、BEAU PAYSAGEとの企画で生まれた田辺玄とのユニット「orbe」、そしてLUCAとのユニット「arca」を始動。2020年より自主レーベル「灯台」を立ち上げた。

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