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鹿野淳が語る『VIVA LA ROCK』 エンタテイメント復興の道

鹿野淳が語る『VIVA LA ROCK』 エンタテイメント復興の道

『VIVA LA ROCK 2020』
インタビュー・テキスト
三宅正一
撮影:HayachiN 編集・リードテキスト:矢島大地(CINRA.NET編集部)

たとえどんな決断をし、その結果うちの会社がどんな危機と負債を背負おうとも、必ず2年かけてV字回復するビジョンをイメージしている。音楽業界の中でリタイアする人が少なくなるようにするためにも、『ビバラ』を開催するか・しないかは重要な事項だと思ってる。

―あとはもちろん、『ビバラ』が中止になれば鹿野さんが代表取締役を務める株式会社FACTも莫大な損失を被るわけで。

鹿野:余計なお世話、ありがとうございます!

―いやいや、僕も小さな会社の代表でもあるので本気で心配していて。

鹿野:その本気が嬉しいと共に、一番嫌なんだよ(笑)。そうだね……きっと中小企業のいろんな代表が「決算時期になんでこんな事態になってるんだ」って感じてると思うけど。ウチも御多分に洩れず『ビバラ』がこういう状態になっているから、会社としては来年の予算がなかなか組めなくて。正直、会社の決算とか予算繰りがすごくハードです。というか、ヤバい。それを自分のこととして不安に思ってる会社の人間もいるのかなあと思って、先日みんなにメール打ったわ。

―誰に?

鹿野:会社の全員に。「なかなかしんどいわ」と、素直に。ただ、「しんどい」というのは今、コロナ関連で業務が2倍、3倍に増えちゃってるからしんどいだけで、会社は潰れないし、潰しませんからと。「『ビバラ』が無念の判断を下しても、みんなの給料は払うから大丈夫よ」って稚拙なメールを送りました(笑)。どう考えてもこの規模の会社であんなフェスの負債を背負って、いや、背負えないでしょうってみんな思ってると思ったから。まあ、みんなからはノーリアクションですけど(笑)。要はそういう感じです。

……経営もフェスもね、本質的に「リスクフェチ」じゃないと上手くできないんじゃないかなって思うんですよね。だからね、どうなったとしても、フェスも会社も2年かけてV字回復するビジョンをイメージしてるし、それは決めたことだからやるんですよ。今後リタイアせざるを得ない会社や経営者も出てくるだろうし、願わくば音楽業界の中でひとりでもそうなる人が少なくなるようにするためにも、『ビバラ』を開催するか・しないかは重要な事項だと思ってます。だって何千人もの人が関わって成り立っているフェスだからね。その中にはこの仕事の究極のプロフェッショナルでありながら、今、そのスキルを使えなくて困ったり窮地に立たされたりしている人がいっぱいいるんだ。面白いプロばかりでね……いろんなことを含めて本当に難しいんだよね。

―ただ、今こうして話していて鹿野さんからそこまで悲壮感を感じないのが不思議ですけどね。

鹿野:だって、俺がここで悲壮感出したら負けでしょ。

―今、初めてカッコいいと思った。

鹿野:うるせえ(笑)。でもさ、悲壮感があるかないかで言えば悲壮感はすごくあるよ。数えるとね、大型フェスの立ち上げに参加させていただいてから今年でちょうど20年目なんですよ。

―初回の『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』から数えて。

鹿野:『ROCK IN JAPAN』と『COUNTDOWN JAPAN』、『ROCKS TOKYO』と『ビバラ』を合わせて、自分が携わった大型フェスの開催が今回でちょうど15回目になるんです。20年間、15回目のフェスで、こんな仕打ちはもちろん一度もなかったしね。まあ、ないよね、未曾有って書きにくいし読みにくい漢字を引用したくなるようなことだよね、これは本当に。その15回の中で、台風には2回も見舞われたし、割と様々な経験値はあるほうだと思うけど、これはないわ。

―想定外の天変地異というかね。

鹿野:本当に。正直、コロナの状況の臨界点がゴールデンウィークか、それ以降までズレ込んできてる実感があって。もちろん現時点では『ビバラ』を開催するつもりだけど──まず東京オリンピック・パラリンピックがどういう決断を下すかが大きなポイントになってくると思う(この後、開催延期が発表された。この時点ではまだ延期も延期日程も決まっていなかった)。「自分勝手だな」と思われるのを承知であえて言いますけど、昨日、3月19日の専門家会議の会見の時点では民間の判断に全部委ねられましたよね。「みなさんが苦しいのはわかってます。感染拡大のリスクも含めてイベントを開催するって言うのであればやればいい。やるのであれば、これは絶対的な事項NGですよ」っていうふうに僕はあの会見を捉えました。若干、梯子を外された感じ。そもそも人のハシゴに頼ってもしょうがないし、それはいいんですけどね。

でも、我々のライブ業界はそのNG事項を踏まえて完璧な形で実行するのは本質的にとても難しいし、ロックフェスはその極み。参加者の方々の自律に委ねる部分が多い『ビバラ』は特に難しいけど、僕らなりに準備をして、来てくれる人たちに問いかけて開催する可能性が今の時点ではあります。もう一度言うけど、昨日の会見で僕は「あ、委ねられたな(笑)」と思った。だから梯子を外される会見ではあったんだけど、逆に極論を言えば管理されることはない。……でも五輪は無理だよね、日本の問題ではなく世界の問題として。

―そうでしょうね。

鹿野:我々のフェスは、ざっくり言えば7億円ぐらい使って開催している、規模としては大事業ですよ。そうなると、今日申し上げている通り開催の有無に向けていろんな話し合いがあるんだけど。でも、ありがたいことに関係者やアーティストの方たちからは「やるのか、やらないのか」というヒアリングよりも、むしろエールを日々いただけていて。本当にありがたいことだと思ってます。

―それはこのフェスや鹿野さんに可愛げがあるからじゃないですか。『ビバラ』はそういうストーリーを描いてもきたと思うし。

鹿野:もっと完璧なフェスでありたいけど、愛嬌と好奇心が、時に完璧を求めることの最大の邪魔になるよね(笑)。

アリーナ外に開かれた入場無料エリアVIVA LA GARDEN。『ビバラ』唯一の屋外エリアとなり、例年、フェス開催に先駆けてオープンする 撮影:小杉歩 ©VIVA LA ROCK 2019 All Rights Reserved
アリーナ外に開かれた入場無料エリアVIVA LA GARDEN。『ビバラ』唯一の屋外エリアとなり、例年、フェス開催に先駆けてオープンする 撮影:小杉歩 ©VIVA LA ROCK 2019 All Rights Reserved
アリーナ外に開かれた入場無料エリアVIVA LA GARDEN。『ビバラ』唯一の屋外エリアとなり、例年、フェス開催に先駆けてオープンする 撮影:小杉歩 ©VIVA LA ROCK 2019 All Rights Reserved

鹿野:たとえばウチのフェスは非常にNG事項が少ないこともそう。腹を括って、責任を持って開催しているので。

―モッシュやダイブの容認とかもそうだし。

鹿野:容認というか禁止していないだけだけどね。推奨しているわけじゃないし、何しろロックフェスなんだから、個々に降りかかってくる面倒な不自由は掲げたくないんです。……でも、それも今回に限ってはイチから考えなくちゃいけない。密室空間での濃厚接触という意味で、なんらかの、むしろたくさんのルールを持ち込まないといけないよね。その上でやるべきか否か…………難しいです。

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イベント情報

『VIVA LA ROCK 2020』
『VIVA LA ROCK 2020』

2019年5月2日(土)~5月5日(火・祝)
会場:埼玉県 さいたまスーパーアリーナ

5月2日(土)出演:
赤い公園
ANTENA
おかもとえみ
カネコアヤノ
Karin.
KEYTALK
キュウソネコカミ
Saucy Dog
SHISHAMO
SUPER BEAVER
そこに鳴る
the telephones
ニガミ17才
ネクライトーキー
Hakubi
Hump Back
ハンブレッダーズ
BIGMAMA
FOMARE
flumpool
popoq
UNISON SQUARE GARDEN
緑黄色社会
and more

5月3日(日・祝)出演:
Awesome City Club
岡崎体育
奥田民生
ORIGINAL LOVE
Creepy Nuts
ZOMBIE-CHANG
TENDRE
Tempalay
東京スカパラダイスオーケストラ
ドミコ
never young beach
Vaundy
パソコン音楽クラブ
BBHF
VIVA LA J-ROCK ANTHEMS
【Ba:亀田誠治 / Gt:加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ) / Gt:津野米咲(赤い公園) / Dr:ピエール中野(凛として時雨)】
藤井風
FLOWER FLOWER
フレデリック
フレンズ
Ryu Matsuyama
Rude-α
ravenknee
レキシ
and more

5月4日(月・祝)出演:
秋山黄色
打首獄門同好会
Age Factory
大森靖子
ORANGE RANGE
9mm Parabellum Bullet
クリープハイプ
GEZAN
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
セックスマシーン!!
chelmico
DJダイノジ
teto
XIIX
東京初期衝動
バックドロップシンデレラ
BLUE ENCOUNT
マカロニえんぴつ
マキシマム ザ ホルモン
宮本浩次
Mega Shinnosuke
ヤバイTシャツ屋さん
ユレニワ
and more

5月5日(火・祝)出演:
あっこゴリラ
WOMCADOLE
オメでたい頭でなにより
KUZIRA
kobore
さなり
Survive Said The Prophet
SiM
女王蜂
DJやついいちろう
Dizzy Sunfist
TETORA
10-FEET
とけた電球
Dragon Ash
ハルカミライ
the band apart
FAITH
HEY-SMITH
MONOEYES
LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS
ROTTENGRAFFTY
and more

プロフィール

鹿野淳(しかの あつし)

音楽ジャーナリスト。1989年に扶桑社に入社、翌1990年に株式会社ロッキング・オン(現:株式会社ロッキング・オン・ホールディングス)へ。98年より音楽専門誌『BUZZ』、邦楽月刊誌『ROCKIN'ON JAPAN』の編集長を歴任。『ROCK IN JAPAN FES』は構想から関わり、企画 / オーガナイズ / ブッキングに尽力。2003年には『COUNTDOWN JAPAN 03 / 04』を立ち上げ、国内初のカウントダウン・ロック・フェスティバルを成功させた。2004に年ロッキング・オンを退社後、有限会社FACTを設立(現在は株式会社)。2006年に月刊『STARsoccer』を(現在は休刊中)、2007年3月には『MUSICA』を創刊させた。2014年に埼玉県最大のロックフェス『VIVA LA ROCK』を立ち上げ、2020年に7回目の開催を予定している。

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