
変態紳士クラブは自らをJ-POPと謳う 根本に眠るジャンルへの敬意
変態紳士クラブ『HERO』- インタビュー・テキスト
- 高木"JET"晋一郎
- 編集:久野剛士、矢島大地(CINRA.NET編集部)
プロデューサー・トラックメイカーのGeG、ラッパーのWILYWNKA、DEEJAYのVIGORMANで構成されるユニット、変態紳士クラブ。昨年リリースされたそれぞれのソロ作品も含め、ニューカマーとしてシーンを切り拓き、先導する存在である三者(特にWILYWNKAは、韻踏合組合のHIDADDYをして『いまの大阪のヒップホップとはWILYWNKAです』とまでいわしめている)。その注目度の高さは、2年半前にリリースされた『ZIP ROCK STAR』収録曲のYouTube再生数や、東名阪CLUB QUATTROツアーなどで、実数として証明してきた。
そして新作となる『HERO』では、『ZIP ROCK STAR』でも表現されていた「ポップネス」の部分をさらに強化し、ポップミュージックとしての強さを落とし込んだ作品となった。
それぞれのアーティストのソロ、そしてキャリアを追えば、彼らが歌謡曲から繋がる「日本的なポップミュージック」「J-POP」サイドにいないことは明白であり、むしろアンダーグラウンド、ストリート的なアプローチを活動の中心にしている。しかし「ポップミュージック」という概念が拡充され、ストリートミュージックの方法論や感性が自然な形でポップスの中に受容されるようになった現在。彼らの作品においても、ソロではなくユニットとして「組み合う」、つまり作品の中に必然的に「社会」が生まれたことによって、そこには自然に「ポップネス」が立ち表れたのだろうし、それゆえに生まれた現代的なポップス性が、この『HERO』には通底している。その彼らの音楽が、「J-POP」として求められ、称賛を浴びるのならば、これほど痛快なことはないだろう。「リアルなポップス」だ。
この3人でどこまでいけるのかを試してる部分はあります。(VIGORMAN)
―1stEPとなる『ZIP ROCK STAR』から今作の『HERO』まで、約2年半が経ちました。昨年のそれぞれのソロ作品リリースや、東名阪CLUB QUATTROツアー『変態紳士舞踏会 TOUR 2019』などの精力的な活動があったので、そんなに経ってたのかと意外に思える感触もあって。
GeG:変態紳士クラブとしてはEPしか出してないのに、各地CLUB QUATTROのツアーと新木場Studio Coastでワンマンライブをやってたというのは、よく考えたら無茶苦茶やなという感じもしますよね(笑)。活動の最初の頃とかは、全然人がいなくてヤバかったのになあ。
VIGORMAN:初ライブは20人やったし。
GeG:20人もおらへんかったんちゃう?
WILYWNKA:ステージに出ていって、「あれ……?」っていう(笑)。
VIGORMAN:「あ、変態紳士クラブ、あかんかったんや……」って(笑)。

変態紳士クラブ(へんたいしんしくらぶ)
左から、GeG(ジージ)、WILYWNKA(ウィリーウォンカ)、VIGORMAN(ヴィガーマン)。2017年結成。昨今ヒップホップ、レゲエ両シーンにおいて若手最高峰との呼び名も高いラッパーWILYWNKAと、レゲエ・ディージェイVIGORMAN、共に1997年生まれの2人が、プロデューサー / トラックメーカーのGeGを介して結成した3人組ジャンルレスユニット(3人ともに大阪在住)。
―ははははは。その状況から全国ツアーを成功させるまでに、注目度と3人の体力が上がっていったということですね。
WILYWNKA:お客さんの入りは、如実に変化として感じますよね。目に見える実感としてもそうやし、人数が増えればやっぱり僕らもワクワクするんで。
VIGORMAN:それに、もともと遊びから始まったユニットがそうなれたのは嬉しいですね。最初に“UGHHHHH”を作った時は、もともと友達やった3人が「ちょっと1曲作ってみようか」ぐらいの感じだったんで。
WILYWNKA:でも、1曲作ったらもう1曲いけんなと思って、それでまた1曲作ったら……って手応えがどんどん強くなっていったんですよ。
GeG:最初に“WAVY”をリリースした時にはもう、このままいけるんちゃうかな、っていう感触はありましたね。ただ、最初に『ZIP ROCK STAR』を出した時はーー。
VIGORMAN:自分らでCD出すのってこんな大変なんや、って。いったら出せるぐらいに思ってたのに(笑)。
WILYWNKA:だから今回はメジャー流通でよかったです(笑)。
変態紳士クラブの1stEP『ZIP ROCK STAR』を聴く(Spotifyを開く)
―昨年、GeGさんは『Mellow Mellow~GeG's PLAYLIST~』、VIGORMANさんは『SOLIPSISM』、WILYWNKAさんは『PAUSE』とソロ作品をリリースされて、それぞれのアルバムで変態紳士クラブ名義やフィーチャリング楽曲を制作されました。ただ、外部での変態紳士クラブとしての客演などはなかったですし、今回の『HERO』にも客演を迎えた作品はない。その意味では、変態紳士クラブとしてドメスティックな方向性を感じるのですが、これは意図的なものですか?
WILYWNKA:いや、別に客演をやらんというわけではなくて。
VIGORMAN:うん、かたくなに断ってるわけでもなくて。
GeG:ひとまず今はっていう感じですね。
VIGORMAN:ただ、この3人でどこまでいけるのかを試してる部分はありますね。自分たちのやりたいことを、今はこの3人の形で押し出してみようと。
―実際、楽曲はYouTubeでも高い再生数を誇っています。
VIGORMAN:嬉しいですね。でも、前作EPの曲を楽しんでくれるのは嬉しいんだけど、正直2年半前の曲なんで、新曲ではないし、自分たちにとっても「前の曲」なんですよ。だから早く『HERO』をリリースして、それを聴いてほしい。2年半で何も変わってない奴はいないと思うし、自分たちとしても変わっているっていう自覚があるんで。
WILYWNKA:そうそう。やっぱり成長を見せたいっていう部分が大きかったですね。
WILYWNKA『PAUSE』を聴く(Apple Musicはこちら)VIGORMAN『SOLIPSISM』を聴く(Apple Musicはこちら)
GeG『Mellow Mellow~GeG's PLAYLIST~』を聴く(Apple Musicはこちら)
リリース情報

- 変態紳士クラブ
『HERO』 -
2020年4月30日(木)配信
1. Do It
2. HERO
3. No Reason
4. DOWN
5. YOKAZE
プロフィール

- 変態紳士クラブ(へんたいしんしくらぶ)
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2017年結成。昨今ヒップホップ、レゲエ両シーンにおいて若手最高峰との呼び名も高いラッパーWILYWNKA(ウィリーウォンカ)と、レゲエ・ディージェイVIGORMAN(ヴィガーマン)、共に1997年生まれの2人が、プロデューサー / トラックメーカーのGeG(ジージ)を介して結成した3人組ジャンルレスユニット、「変態紳士クラブ」(3人ともに大阪在住)。2017年11月にリリースされた1st EP『ZIP ROCK STAR』に収録された“好きにやる”はMusic Videoが約710万回再生、ストリーミングは約1000万回再生を記録。(全7曲収録の1st EPのストリーミング数は脅威の2500万回再生オーバーを記録)2019年春に初ツアーとなる東名阪クアトロツアー『変態紳士舞踏会TOUR 2019』を成功させる。最新作は、2020年4月30日にリリースする2ndEP『HERO』。