インタビュー

dodoは名もなき人生をラップする もうゲームの勝ち方に興味はない

dodoは名もなき人生をラップする もうゲームの勝ち方に興味はない

インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:廣田達也 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)
2020/08/13

7月17日に、2ndアルバム『normal』をリリースした、ラッパー / トラックメイカーのdodo。去年、月に1曲のペースで楽曲を配信していくなかで“nothin”や“im”といった楽曲がスマッシュヒットしたことで存在感を強めた彼だが、元を辿れば、2013年『高校生ラップ選手権』に出場したことから本格的に活動をスタートさせた、決して短くないキャリアを持つアーティストでもある。

dodoは、自身のアーティストとしてのスピード感を「遅い」と語る。しかしながら、高校卒業後に洗足学園音楽大学に入学し音楽を学び、その後、正社員として働きながらも制作を続けていたという彼の、様々な紆余曲折を経てたどり着いた音楽には、彼自身の人生哲学が色濃く刻み込まれた、普遍的な輝きがある。『normal』にはその輝きが、とても優しく、深く、沁み込んでいる。

今回、僕は初めてdodoにインタビューをさせてもらったが、彼の語り口は独特だ。彼は非常に丁寧な言葉で話す。その語りのなかで彼は、音楽がビジネスであり、自身が「自営業者」であることを強調する。取材のために彼の地元を訪れた我々取材陣に対し、彼は手土産を用意してくれていた(!)。その素直で生真面目な好青年っぷりには思わず「ラッパーっぽくない」と呟きそうにもなるが、ステレオタイプなラッパー像を踏襲していないdodoの佇まいこそが、この時代の中心なのだ。彼には今、この日本という国で「自分が描くべき人間の在り様」が明確に見えている。彼のラップは非常にシンプルな日本語によって綴られているが、しかし、そのシンプルな日本語の連なりが露わにするものは、dodo曰く、「未だ描かれていなかったもの」なのだ。

※本記事の公開と併せて、dodo“era it”のミュージックビデオが解禁されました。ぜひインタビューと一緒にお楽しみください

dodo(どど)<br>神奈川県川崎市中原区在住の24歳、高校生ラップ選手権出場をきっかけに活動を本格化させるも、一時期活動を休止。2017年から再度本格化させ、2019年にはアルバム『importance』をリリースし、初のワンマン「ひんしの会」も開催。その後、夏には『FUJI ROCK FESTIVAL '19』にも出場。2020年7月17日、ニューアルバム『normal』を発表した。
dodo(どど)
神奈川県川崎市中原区在住の24歳、高校生ラップ選手権出場をきっかけに活動を本格化させるも、一時期活動を休止。2017年から再度本格化させ、2019年にはアルバム『importance』をリリースし、初のワンマン「ひんしの会」も開催。その後、夏には『FUJI ROCK FESTIVAL '19』にも出場。2020年7月17日、ニューアルバム『normal』を発表した。

「川崎のラッパー」という枕詞を置いて。名もなき人生とその視点に立ってラップする「この国の本当のリアル」

―今日はdodoさんの地元である、川崎の武蔵小杉駅周辺で撮影もさせていただきました。新作『normal』に入っている“nambu”という曲の歌い出しには、<俺は、旅立つよ この町から>というリリックがあって、ご自身の地元との決別を歌っているのかと思ったんです。

dodo:一度就職で離れはしたんですけど、僕は小学2年生の頃からずっとこの辺りが生活圏で。僕は別に誰に許可を取ったわけでもなく「川崎のラッパー」という冠を使用させていただいて、美味しい思いもしていたんですけど(笑)、今回のアルバムは、その終止符的な作品かなと思っているんです(関連記事:磯部涼×細倉真弓『川崎ミッドソウル』 アフター『ルポ 川崎』)。

ここで暮らしている間、犬を2匹飼っていたんですけど、1匹は2年前に死んで、もう1匹は半年前くらいに死んでしまって。犬もいなくなったし、今年から音楽家として自営業デビューもしたので、もうここにいる理由がなくなったなっていう。“nambu”は、そういうニュアンスの曲ですね。

dodo“nambu”を聴く(Spotifyで聴く / Apple Musicで聴く

―「川崎のラッパー」という枕詞は、dodoさんにとっては「使用させてもらっている」という感覚のものだったんですね。そして今は、そこから飛び出そうとしている。

dodo:「シーン」とか「界隈」から抜け出したいっていう気持ちはありますね。あと、今回のアルバムはコロナ禍に作っていたというのも大きくて。最近、また感染者数も増えていますけど、「今いる場所からエスケープしたい」と思っている人たちもいるかもしれない。そういうことも、重ねて考えていましたね。

―今、日本にはたくさんラッパーがいますけど、そのなかで、自分はなにを担っている存在なのだと、dodoさんは思いますか? “nambu”では<もう興味はないゲームの勝ち方>ともラップしていますね。

dodo:「ヒップホップとはなにか?」ということはずっと考えてきたんですけど、ヒップホップで一番重要なのは、「如何にリアルであるのか?」ということだと僕は思っています。それを日本でどうやるのか? ということは、常に意識していて。

dodo“Fo”を聴く(Spotifyで聴く / Apple Musicで聴く

―dodoさんにとっての「リアル」というのは?

dodo:話にも出ないような、映画にもならないような、誰も興味を持たないような日本の「素」の部分、日本の大衆的なもの……そういうところですね。そういう日本の「素」の部分を、ヒップホップとどう融合させようか、ということを常に考えてきました。

たとえば、どこの学校のクラスでも、「明るくて場を沸かせる人」とか、「地味で大人しい人」とか、ある程度、「層」があると思うんですけど、そこにおいても、なんて表現すればいいかわからない層の人たちがいると思うんですよ。僕自身、そういう層として存在してきたと思うんですよね。

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リリース情報

dodo『normal』
dodo
『normal』

2020年7月17日(金)配信

1. kill late it
2. era it
3. Fo
4. nambu
5. delay
6. number
7. friends
8. story

プロフィール

dodo
dodo(どど)

神奈川県川崎市中原区在住の24歳、高校生ラップ選手権出場をきっかけに活動を本格化させるも、一時期活動を休止。2017年から再度本格化させ、2019年にはアルバム『importance』をリリースし、初のワンマン「ひんしの会」も開催。その後、夏には『FUJI ROCK FESTIVAL '19』にも出場。2020年7月17日、ニューアルバム『normal』を発表した。

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