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松本穂香は言葉にならない感情に挑む。時代を超える作品のために

松本穂香は言葉にならない感情に挑む。時代を超える作品のために

『Old To The New』by LINE RECORDS
インタビュー・テキスト・編集
飯嶋藍子
撮影:タケシタトモヒロ

出会えば出会うほどいろんな刺激をもらって、変化できるんです。

―以前、カネコアヤノさんと対談した際に「1年前の演技を思い出して、今だったらもっとできたかもって思う」とおっしゃっていましたが、今の自分が歌った“守ってあげたい”を30年後の自分が聴いたらどういう気持ちになると思いますか?

松本:今でも「あの時もっとこうできたんじゃないか」みたいなことは思いますし、不安はずっとあるんですけど、ただあんまりそこに意識を向けないようにしたいなって思っているところです。“守ってあげたい”を50歳くらいの私が聴いたら……若いなあって思うんじゃないですかね(笑)。いい思い出だなってなるんじゃないかな。その時、何があったかとか、プライベートのことも思い出すかもしれないです。

松本穂香

―共感についてのお話もありましたけど、思い出も時代を超えて愛されるものと密接に関わっていますよね。こと音楽や映画になると、いろんな思い出を乗せたり共感したりしやすいと思います。

松本:そうですね。私が出演した作品も、せっかくならいろんな方に愛されるものになればいいなと思っています。監督や制作に携わる方の思いも、近くにいればいるほど、主要な役であればあるほど受け取ることも多いですし、いろんな方に見てもらいたいです。

―役者として作品に参加して一緒にもの作りをしていく中で、監督をはじめ自分以外の誰かから受け取った思いもひっくるめて、演技としてアウトプットしている感覚があるのでしょうか?

松本:監督から「この役は私のこういう部分を投影していて」みたいなお話を聞けたりする時もあるんです。作品によるのかもしれないし、本番が始まった時にはそんなに意識しているわけではないんですけど、その思いを知れたかどうかで違いがある気がします。いろんな人の気持ちを受け取ったあとは、その前より全然違うものができるんじゃないかなと。

―歌に関しても、技術的なことはわからないけど、まずはたくさん歌ったとおっしゃっていましたし、人の気持ちを受け取ることも含め、松本さんはとにかく最初に「動くこと」を大事にされている気がしました。その動きによって、いろんなものを引き寄せていっているというか。

松本:最初の動きが大事だと監督にも言われた気がします(笑)。「芝居はスタートの時からいいか悪いか決まってる」って。ただ、動く時はやっぱり周りの方の存在やセリフがあることが大きいかもしれないです。

このあいだ、映画で歌を歌う機会がありまして、歌録りをしている時に、スタッフさんに「歌のメロディも、お芝居で言うところの相手のセリフだと思って、ちゃんと聴いて歌ってみて」と言われて。その言葉をもらってから、歌が少し変わった気がします。

―歌ったり演じたりしていく中で、どんどん視点が増えている感覚なんでしょうか?

松本:そうですね。本当にいろんな方と出会いますし、もともと人から影響を受けやすいので、出会えば出会うほどいろんな刺激をもらっている感じです。もちろん出会う方によっての変化もありますが、過去に自分が出演した作品から新しい発見をすることもあるんです。

その時だけの自分を残していきたい。

―1年前の演技を思い出してもっとできたと思うこともまだあるとおっしゃっていましたが、今は結構フラットに過去の演技と向き合えているというか、過去に納得して、今と切り離しながら俯瞰できているんでしょうか?

松本:そうですね。過去があったから今があると思います。逆に、デビュー当時の作品を見て、「あの時できたけど、今はもうこれはできない」と思うことも増えました。今はもっとよくなるために過去を見るべきだろうなと思うんです。

たとえば、一昨年の『世界でいちばん長い写真』(草野翔吾監督 / 2018年)という映画は、今見たら全然ダメだなって思うところもやっぱりあるんです。でも、わからないながらも、役を一生懸命生きようとしてた。その瞬間がちゃんと映画の中に残せているのは自分の中ですごい宝物になっています。

―表現者のその時だけの衝動や空気が感じられることって、まさに作品の魅力だと思います。でも、残そうと思って残せるものじゃないとは思うのですが、松本さんは今後どういうものを作品に映したり残したりしていきたいですか?

松本:なにか、全部巡り合わせみたいなもので、この作品のあとにこの流れがきたから、今こういうことができている、と感じることがたくさんあるんです。今回“守ってあげたい”を歌ったことも、本当に何かしらの意味があるんだろうなと思っています。

10月16日から公開する映画『みをつくし料理帖』(角川春樹監督)の主題歌も松任谷由実さんが作ってくださっていたり、不思議なご縁があって。このタイミングで歌うことにはきっと意味がある。きっと来年同じことをしていてもまったく別の意味が生まれていたと思うんです。それを感じながら歌いました。なので、まさに今の話のままです。その時だけの自分を残していきたいなと思います。

『みをつくし料理帖』 予告篇

松本穂香
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リリース情報

Old To The New
Old To The New

レコードやカセット、CDで発表された無数の名曲たちを 新鮮さをもって蘇らせるプロジェクト『Old To The New』。
音楽サブスクリプションサービスの登場で、 無限に広がる音楽ライブラリにアクセスできるようになった今だからこそ、 名曲たちを聴き継ぎ、語り継ぎ、歌い継いでいきたい。 そして、何よりも大切にしたいのは、 どんな時代にあっても変わりなく、 人の心を震わせ続ける、「歌」の力です。 この企画では、毎回特別な歌い手をお招きし、 感動や驚きをお届けします。

『守ってあげたい』
松本穂香
『守ってあげたい』

公開情報

『みをつくし料理帖』

2020年10月16日(金)全国一斉公開

製作・監督:角川春樹
脚本:江良至、松井香奈、角川春樹
原作:高田郁『みをつくし料理帖』(ハルキ文庫)
音楽:松任谷正隆
主題歌:手嶌葵“散りてなお”
出演:
松本穂香
奈緒
若村麻由美
浅野温子
窪塚洋介
小関裕太
藤井隆
野村宏伸
衛藤美彩
渡辺典子
村上淳
永島敏行
反町隆史
榎木孝明
鹿賀丈史
薬師丸ひろ子
石坂浩二
中村獅童

プロフィール

松本穂香(まつもと ほのか)

1997年2月5日生まれ。大阪府出身。2015年主演短編映画『MY NAME』でデビュー。その後、出演したNHK連続テレビ小説『ひよっこ』の青天目澄子役の好演が話題になる。映画『恋は雨上がりのように』『あの頃、君を追いかけた』などの映画に出演した他、日曜劇場『この世界の片隅に』(TBS)、『JOKER×FACE』(CX)などの連続ドラマの主演を務める。2019年には主演を務める映画『おいしい家族』『わたしは光をにぎっている』が公開。2020年は『病室で念仏を唱えないでください』(TBS)、『竜の道 二つの顔の復讐者』の2本の連続ドラマに出演、映画『酔うと化け物になる父がつらい』、『君が世界のはじまり』と主演作が続き、主演映画『みをつくし料理帖』が公開予定。

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