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名曲に新たな息吹を。一味違うカバー企画の仕掛け人たちが語る

名曲に新たな息吹を。一味違うカバー企画の仕掛け人たちが語る

Old To The New
インタビュー・テキスト・編集
飯嶋藍子
撮影:西あかり

今、<守ってあげたい>っていうメッセージを投げかける側も、投げかけられる側も心強くなる。(田中)

―映像的におもしろい仕掛けですし、もっとエフェクティブにしたりもできたと思うんです。でも、松本さんやバンドメンバーの思いやエネルギーを映像に詰め込むというところに帰結したのはなぜだったのでしょうか?

野村:この仕掛け自体はもちろん好きなんですけど、仕掛けに溺れてはいけないと思っていて。最高の曲があって、歌い手がそこにめちゃくちゃ気持ちを込めて歌ってる。ここはどう考えても今回いちばん伝えるべきメッセージなんですよ。そこから世代を繋いだり、さらにそれを楽しむための新しい仕掛けとして、side A、side Bのかたちがあって。

野村志郎

柏井:カバー企画って基本的に曲と歌い手が注目されちゃうけど、今回の映像は歌・歌い手とミュージシャンたちがフィフティーフィフティーに見えるのが僕はすごく好きです。音楽ってやっぱり両方の音が鳴って生まれるものだと思うから、それがスマホの表現ひとつで理解してもらえるのは音楽好きとしても嬉しいです。

それに、曲は松任谷さんだから、1970年代、1980年代の音楽を聴いている人にハマるし、参加してくれたミュージシャンの方々は1990年代からのスーパーマンたちだし、それくらいの人たちにも楽しんでもらえると思う。そして松本さんは今の時代の人だから3世代繋がっている感じがしますよね。

―“守ってあげたい”のように、世代を超えて継がれたり、愛されたりするものの理由ってなんだと思いますか?

柏井:共感性と普遍性かな。音楽ってもともと労働歌としてずっとみんなで共有してきたり、楽しい時にみんなでそれを共有するためのものとしてあったり、常に人に寄り添いながら、人を救っているものでもあるのかなっていう感覚がすごくあって。

非日常的な場所にも音楽はあるけど、自分に寄り添いながら助け続けてくれる存在でもある。そこで言葉にならない何かを常に共有できるもののひとつとして音楽があるなって。それが強いものはやっぱり受け継がれてきているんだろうなと思います。

松本穂香“守ってあげたい”
LINE MUSICで松本穂香“守ってあげたい”を聴く(LINE MUSICを開く

―しかもその曲がそのまま継がれていくことに加えて、今回のようにカバーされて変化しながら継がれていきますよね。

柏井:その時代の空気感のあるものっていうのも大事だと思う。そういうものは、人が集まってきて、その空気感を共有して、その時代にいた自分の大切なものが染みつきながら歌い継がれていくというか。人それぞれの中に、「自分にとってはこれ」っていうものがあるんじゃないかな。自分の物語になっているかどうかっていうのも重要だと思うし、それが思い出とか言葉にならない何かになっていくんだと思います。

田中:僕も普遍性かなって思う。松任谷さんの名曲“守ってあげたい”をカバーさせていただくにあたり、松本さんが今この時代に“守ってあげたい”を歌う理由を、制作サイドとしては考えていて。今ってやっぱりコロナ禍で不安だし、心配だし、ひとりでいることも多くて、世の中もそういうムードになっているじゃないですか。そういう時に<守ってあげたい>とか<You don't have to worry>っていうメッセージを投げかける側も、投げかけられる側も心強くなるんじゃないかなと思っていて。

田中大輔

―時代に合わせて解釈が変わっていくというか。

田中:そうですね。聴く時代や聴く状況によって、時代時代の解釈はありながらも、普遍性のある歌詞に勇気をもらえたり、背中を押してもらえたりすることってあると思うんです。僕はヒップホップミュージックをよく聴くんですけど、今回の「Old To The New」ってまさにブラックミュージックカルチャーにも深く関わっているキーワードで。

―サンプリングの文化はまさに「Old To The New」ですよね。

田中:僕は高校生当時、1960~80年代の古きよきソウル、ジャズ、ありとあらゆる音楽をサンプリングして現代解釈したヒップホップミュージックを聴きながら、自分の知らない年代の音楽を掘って、また新しい音楽知識を得ていっていたのですが、その中にはリスペクトが感じられるものが多かった。カルチャーに温故知新や「Old To The New」をもたらし、時代を超えていく原動力になるものって、普遍性はもちろん、リスペクトだと思います。

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リリース情報

Old To The New
Old To The New

レコードやカセット、CDで発表された無数の名曲たちを 新鮮さをもって蘇らせるプロジェクト『Old To The New』。
音楽サブスクリプションサービスの登場で、 無限に広がる音楽ライブラリにアクセスできるようになった今だからこそ、 名曲たちを聴き継ぎ、語り継ぎ、歌い継いでいきたい。 そして、何よりも大切にしたいのは、 どんな時代にあっても変わりなく、 人の心を震わせ続ける、「歌」の力です。 この企画では、毎回特別な歌い手をお招きし、 感動や驚きをお届けします。

松本穂香『守ってあげたい』
松本穂香
『守ってあげたい』

プロフィール

田中大輔(たなか だいすけ)

LINE RECORDS事業プロデューサー。1976年神奈川県生まれ。大学卒業後、CD・レコードショップのバイヤーを経て、2002年ユニバーサル ミュージック合同会社に入社。数々のアーティストのマーケティング・メディアプランナーを担当し、2015年LINE株式会社に入社。音楽ストリーミングサービス「LINE MUSIC」に従事、2017年3月に「LINE RECORDS」を発足。

柏井万作(かしわい まんさく)

1981年、東京都生まれ。2006年に取締役として株式会社CINRA立ち上げに参加。創業時から現在までカルチャー情報サイト『CINRA.NET』の編集長としてサイトの運営を行っている。入場無料の音楽イベント『exPoP!!!!!』、カルチャーフェス『NEWTOWN』などの立ち上げ&運営責任者を務める。

野村志郎(のむら しろう)

クリエイティブディレクター、映像監督。クリエイティブエージェンシー猿人 ENJIN TOKYO所属。これまで日本政府観光局、ANA、Google、Adobe、CROCS、SEIYU、Francfranc、野村証券、京都大学、沖縄県など数多くのブランディングやプロモーションを手がけている。自動制御のドローンが客のオーダーに従ってシューズを運んでくる世界初の「空中ストア」や、累計3,000万再生回数を超えた日本政府観光局のブランディング動画「JAPAN - Where tradition meets the future」、日本カルチャーを世界に発信するANAのグローバルプロモーション「IS JAPAN COOL?」などで、世界三大広告賞のONE SHOW、アジア最大級の広告賞SPIKES ASIAグランプリ、ADFEST、AD STARS、CODE AWARDベストクラフト賞、メディア芸術祭などを受賞。

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