特集 PR

小山田壮平の歌の旅路 奥山由之と語り合う、歌の言葉と写真の神秘

小山田壮平の歌の旅路 奥山由之と語り合う、歌の言葉と写真の神秘

小山田壮平『THE TRAVELING LIFE』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:佐藤祐紀 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

「壮平さんの歌詞からは、旅や、死、生……そういった『流動』を色濃く感じます」(奥山)

―今回、小山田さんのソロアルバム『THE TRAVELING LIFE』のジャケットやブックレットに奥山さんの写真を起用されたきっかけは?

小山田:そもそも詩集(『Sunrise&Sunset 小山田壮平詩集』)を作るにあたって、今まで親交のあった写真家や絵描きの方に、僕の詩に合う写真や絵を1~2点でいいので送っていただけませんか? ということをお願いしたんです。みなさん1~2点とか、多くて7点くらい送ってくれた方もいたんですけど、おっくんは90枚くらい送ってくれて(笑)。

奥山:前のめりがすぎる。圧がすごい(笑)。

小山田:そこでおっくんの写真を改めて見て、すごいなと思ったんです。『宇宙の果て~』のときも「色が綺麗だな」とは思ったんですけど、あれは、おっくんの純粋な作品というわけではなかった。でも、詩集のタイミングで送ってくれた写真たちは、モチーフや切り取り方がハッとするものばかりで。それで、ぜひアルバムのアートワークにも使わせていただきたいと。

小山田壮平『THE TRAVELING LIFE』ジャケット
小山田壮平『THE TRAVELING LIFE』ジャケット(Amazonで見る

小山田:『THE TRAVELING LIFE』っていうタイトルだし、最初は自分の旅先での写メを使おうと思っていたんだけど、おっくんの写真がかっこよすぎたんだよね。インドで出会ったのりちゃん(齋藤典子)という写真家の作品もブックレットに使わせていただいたんですけど、おっくんの写真もかなり使わせていただいて。おっくんの写真のなかにも、旅先で撮った写真があったんだよね。たしか、トルコだっけ?

奥山:トルコのカッパドキアですね。大学生の頃、一人旅で撮った写真です。かつての自分が、10年後の今、自分の写真が壮平さんのアルバムジャケットになっていると知ったらビックリすると思う(笑)。やっぱり、記憶を撮って残しておくことって大事ですよね。こうやって時間を超えて誰かと交差して、ひとつの作品になることもあるんだから。

―奥山さんは、小山田さんにお送りする写真を選定されたとき、どんなことを考えられていましたか?

奥山:まだアルバムのことは知らなかったので、とにかく詩集のために選んだのですが、思い返してみると、僕、旅先で壮平さんの曲を聴くことがとても多くて。“SAWASDEECLAP YOUR HANDS”とか“Transit in Thailand”とか、僕の好きな曲からは香辛料の匂いや大陸の香りが漂ってくるような感じがありました。

andymori『ファンファーレと熱狂』(2010年)を聴く(Apple Musicはこちら

奥山:大学1年生の頃、そんなアンディの曲を聴いて「とにかく旅に出たい」と思って、東南アジア各国を巡りました。人生最初の旅って、その土地の風の匂いがずっと沁みつくじゃないですか。以後どこに行っても、旅イコールその匂い、になってしまうみたいな。

小山田:うん、わかる。

奥山:僕は旅をするときいつも壮平さんの曲を聴いていたから、東南アジア特有の、香辛料やお香や土が混ざり合う匂いが、脳内で壮平さんの曲と強く結び付けられていて。今でも壮平さんの声を聴くと香辛料の匂いが漂ってくるくらい、僕のなかで旅先と言えば壮平さんの歌詞なんです。さっき話に出たトルコの写真も、まさに壮平さんの曲を聴きながら旅をしていた記憶が沁みついている。

小山田壮平『THE TRAVELING LIFE』ブックレットの“ゆうちゃん”のページより / 撮影:奥山由之
小山田壮平『THE TRAVELING LIFE』ブックレットの“ゆうちゃん”のページより / 撮影:奥山由之
小山田壮平“ゆうちゃん”を聴く(Apple Musicはこちら

奥山:壮平さんの歌詞からは、旅や、死、生……そういった「流動」を色濃く感じます。常に「どこかに行こうとしている人」ですよね。自分のまだ知らない場所や、知らない世界に行こうとしているし、それこそ、壮平さんは死後の世界を想像しているんじゃないかと思わされるような歌詞もある。死も「流動」という意味では、旅のひとつだと言えなくもない。ただ、それは僕が壮平さんのお姉さんの本も読んでいるので、勝手にリンクさせて考えているのかもしれないですけど……。

小山田:『えいやっ!』だね(2007年に出版された、小山田の姉、小山田咲子のブログを編纂した書籍『えいやっ! と飛び出すあの一瞬を愛してる』)。

奥山:そうです。聴いている側からすると「なんで、ここに居続けないんだろう?」と思ってしまうような感覚が、壮平さんの歌詞にはある。なので、お送りした写真には、まさに壮平さんの曲を聴きながら旅をしていたときに撮った写真がたくさんあります。

それに旅は、海外に行ったりすることだけじゃないと思うんです。生活のなかであっても、普段とは少し違う感覚に出会える一瞬も、ある種の「旅」だと思う。そういったイメージで、普段の生活のなかで撮った写真でも、自分のなかで「旅」の感覚があるもの、日常なんだけど、ちょっと違う次元に行けた感覚があるような写真も選びました。

小山田壮平『THE TRAVELING LIFE』ブックレットの“君の愛する歌”のページより / 撮影:奥山由之
小山田壮平『THE TRAVELING LIFE』ブックレットの“君の愛する歌”のページより / 撮影:奥山由之

小山田:今回、自分の写メも含めてどれをアルバムのジャケットにしようかなと考えていたときに、このおっくんの写真は、旅のなかの瞬間の煌めきを捉えているような感じがしたんですよね。光の粒に旅の自由さも感じたし、すごくグッときて。

奥山:この写真は、自宅の窓ガラスにカメラを接着させてフラッシュを焚いて撮ったんですけど、左下の部分は、そのフラッシュの反射が映っているんです。

小山田:あぁ、そうだったんだ! 僕は、この光は今の今まで街灯かと思ってた。素敵だな、これはフラッシュの跳ね返りなんだ。

奥山:そうなんです。窓からの実際の眺めと、この写真の写りは、違った景色になっていて、こういう感じで、普段、目には入っているけど可視化されていないものたちってあると思うんです。だからこそ、写真で撮ることによって、普段見知っている景色なのに全然違うものに見えることがある。それは、写真にしかできない「旅」なのかなと思います。

Page 2
前へ 次へ

リリース情報

小山田壮平『THE TRAVELING LIFE』
小山田壮平
『THE TRAVELING LIFE』初回限定盤(CD+DVD)

2020年8月26日(水)発売
価格:4,180円(税込)
VIZL-1786

[CD]
1. HIGH WAY
2. 旅に出るならどこまでも
3. OH MY GOD
4. 雨の散歩道
5. ゆうちゃん
6. あの日の約束通りに
7. ベロベロックンローラー
8. スランブは底なし
9. Kapachino
10. 君の愛する歌
11. ローヌの岸辺
12. 夕暮れのハイ

[DVD]
『THE TRAVELING LIFE DVD』
・あの日の約束通りに(なんば Hatch 2019.9.19)
・革命(中野サンブラザ 2018.10.30)
・16(中野サンブラザ 2018.10.30)
『Music Video』
・OH MY GOD
・HIGH WAY

小山田壮平
『THE TRAVELING LIFE』通常盤(CD)

2020年8月26日(水)発売
価格:3,080円(税込)
VICL-65411

1. HIGH WAY
2. 旅に出るならどこまでも
3. OH MY GOD
4. 雨の散歩道
5. ゆうちゃん
6. あの日の約束通りに
7. ベロベロックンローラー
8. スランブは底なし
9. Kapachino
10. 君の愛する歌
11. ローヌの岸辺
12. 夕暮れのハイ

小山田壮平
『THE TRAVELING LIFE』(LP)

2020年9月4日(金)発売
価格:3,850円(税込)
VIJL-60226~60227

プロフィール

小山田壮平
小山田壮平(おやまだ そうへい)

1984年、福岡県飯塚市で生まれる。2007年、andymoriを結成。2014年10月解散。ALのギターボーカル。自主制作音盤『2018』を自身の弾き語りツアーにて会場販売。2016年より自身のソロ弾き語り全国ツアー等も精力的に行なっている。2020年8月、1stソロアルバム『THE TRAVELING LIFE』を発表した。

奥山由之(おくやま よしゆき)

写真家・映像監督。1991年東京生まれ。2011年『Girl』で第34回写真新世紀優秀賞受賞。2016年『BACON ICE CREAM』で第47回講談社出版文化賞写真賞受賞。映像監督としてTVCM・MVなどを多数手がけている他、広告・CDジャケットなどのアートディレクションも行う。新作写真集『The Good Side』がフランスの出版社・Editions Bessardより発売中。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

岩井勇気(ハライチ)『ひねくれとか言われても俺はただ自分が進みたい道を選んでるだけ』

ドリームマッチでの『醤油の魔人 塩の魔人』、ラジオで突如披露した推しキャラケロッピをテーマにしたEDM調楽曲『ダメダメケロッピ』など、音楽的な才能に注目が集まる岩井勇気。今回はミツカン「こなべっち」とタッグを組み、自らがマイクを取ってラップに挑戦。しかもこの動画、岩井がこれまでラジオや書籍の中で言及してきた、珪藻土のバスマットや、海苔、メゾネットタイプの部屋、クラウス・ノミなどのネタが詰まっていて、まさか岩井さんの自宅なのでは……? と隅々まで見てしまう。つぎはぜひ、自作のトラックとリリックによる曲が披露されることを待っています。(川浦)

  1. 荘子itが執筆 『スパイの妻』の「軽さ」が持つ倫理的な意味とは 1

    荘子itが執筆 『スパイの妻』の「軽さ」が持つ倫理的な意味とは

  2. あがた森魚が引退を発表、渋谷CLUB QUATTROで100人限定ワンマンライブ開催 2

    あがた森魚が引退を発表、渋谷CLUB QUATTROで100人限定ワンマンライブ開催

  3. 曽我部恵一と語る、個に還れない時代のリアル 人はなぜ踊るのか? 3

    曽我部恵一と語る、個に還れない時代のリアル 人はなぜ踊るのか?

  4. 山崎賢人&土屋太鳳W主演 Netflix『今際の国のアリス』場面写真公開 4

    山崎賢人&土屋太鳳W主演 Netflix『今際の国のアリス』場面写真公開

  5. 『ハリー・ポッターと賢者の石』初の3D上映が全国の4D劇場82館で実施 5

    『ハリー・ポッターと賢者の石』初の3D上映が全国の4D劇場82館で実施

  6. 星野源、長谷川博己、新田真剣佑、橋本環奈、浜辺美波が先生役 ドコモ新CM 6

    星野源、長谷川博己、新田真剣佑、橋本環奈、浜辺美波が先生役 ドコモ新CM

  7. のん×橋本愛が7年ぶり共演『私をくいとめて』予告編&ビジュアル公開 7

    のん×橋本愛が7年ぶり共演『私をくいとめて』予告編&ビジュアル公開

  8. 表層的なのは嫌。市川渚が重んじる本質と、こだわり抜かれた生活 8

    表層的なのは嫌。市川渚が重んじる本質と、こだわり抜かれた生活

  9. シム・ウンギョンが日本映画に挑戦したわけ。韓国人気女優の素顔 9

    シム・ウンギョンが日本映画に挑戦したわけ。韓国人気女優の素顔

  10. 『アングスト/不安』の怖さ。殺人が論理的答えとして導き出される 10

    『アングスト/不安』の怖さ。殺人が論理的答えとして導き出される