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和田彩花「わからない」から始める美術の楽しみ方、その奥深さ

和田彩花「わからない」から始める美術の楽しみ方、その奥深さ

美術検定
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊島望 編集:宮原朋之(CINRA.NET編集部) 取材協力:中村屋サロン美術館

マネとChim↑Pom。共通の感覚で見るその視線

―今日は新宿の「中村屋サロン美術館」に足を運んでいただいてますが、ここも日本の近代史に深いつながりを持つ場所です。インドカリーで有名な「中村屋」は画家や彫刻家たちが集まり、国内外の活動家の支援も行われた国際感覚を持つ文化の拠点でした。

和田:ここに来るのは今日がはじめてですけど、面白かったです。明治時代からの年表や人物相関図を見ると、この場所がいかに重要だったかわかるし、作品一つひとつをもっと深く理解するためのヒントになります。

中村屋サロン美術館、学芸員の方に作品についての話を聞く
中村屋サロン美術館、学芸員の方に作品についての話を聞く

和田:美術と向き合うことって、歴史とも向き合うことなんですよね。マネにずっと惹かれ続けているのは、彼が近代の始まる時代を生きた人だったこともあるし、それがいまの私の時代にもつながってることを教えてくれるから。

最近、現代アートにはまって熱心に追いかけるようになったのも、その影響が大きいです。時代背景を知り、ちょっと先に一歩を踏み出してみることで、自分の生き方もずいぶん変わったって気がしていますね。

―現代アートだと最近はどんな展覧会を見ましたか? それと、とくに好きな作家は?

和田:森美術館の『STARS展:現代美術のスターたち ー 日本から世界へ』、アーティゾン美術館の『鴻池朋子 ちゅうがえり』を見ました。どちらも素敵な展示。それからずっと好きなのはChim↑Pomです!

―めちゃくちゃ破天荒なチームじゃないですか!

和田:そこが好きなんです。表現されたものは直裁的で、受け取り方によっては過激に見られるかもしれないけれど、1つの作品を作るために、地域や社会のあり方や、いま何が起きているかを徹底的に調査していて、真剣に歴史と向かってますよね。

だから説得力があるし、作品を通して「じゃあ自分はどうなんだろう?」って考えさせられる。その感覚が常にあって好きです。

―マネとChim↑Pomでは時代も性質もだいぶ違いますが、作品が投げかけている問いを受け止める和田さんの感覚は一貫していますね。

和田:やっぱり歴史が連続してるからですよね。現代の生活の便利さは、近代にできた基礎によって転換、発展してきたから、マネもChim↑Pomも共通した感覚で接することができる気がします。

そしてこれも大事なポイントなんですけど、近代からの発展と同時に、そのなかで抜け落ちてしまったものが両者の作品から感じられるんですよね。例えば……私は女性なので、とくにフェミニズムの視点から気になることがたくさんあります。

和田彩花

―現在のように「Me Too」や「Black Lives Matter」の議論が進むなかで、近代美術も現代アートを単に楽しいものとしてだけ見ることには難しさがありますね。

和田:2018年に横浜美術館で開催された『ヌード 英国テイトコレクション』という展覧会で、さまざまな時代の女性の表象についてけっこう鋭く突っ込んでましたよね。私自身アイドルをしているので、すごく関心があります。

―男性と女性のあいだに起こりがちな「見る / 見られる」の問題だとか。

和田:そうですね。大学院時代から、フェミニズムの視点から美術史を見直すことにも関心がありました。例えばグリゼルダ・ポロックの『視線と差異 フェミニズムで読む美術史』(1998年、新水社)、ロジカ・パーカーとの共著『女・アート・イデオロギー』(1992年、新水社)、ケイト・ミレットの『性の政治学』(1985年、ドメス出版)は、学生時代に読んだ代表的な本です。

それを踏まえると、ルノワールとかピカソはやっぱり「見られる側」として受け身の女性像を描いてきた画家だと感じます。しかし、それに対してマネのモリゾ像(女性印象派画家ベルト・モリゾ。モリゾをモチーフにしたマネの作品が複数存在する)を見ると、ちょっと違うのが面白い。「女性」として一元化されない個性を感じるし、絵を見る側を力強く見返すような意志の強さが込められている。

荻原守衛『女』1978年 中村屋サロン美術館所蔵
荻原守衛『女』1978年 中村屋サロン美術館所蔵

―鑑賞者に没入をうながす絵画の典型として、例えば人物が読書や手仕事に没頭しているような構図があります。それによって鑑賞者の側は盗み見してるような気分(と、それを和らげる効果)を覚えたりします。

和田:だからマネの絵には「見る」と「見られる」の両方が意識されてるんですよね。鑑賞者が一方的に盗み見するような関係が生じにくい。フェミニズムについて学ぶことで、そういう絵を描こうとしたマネにもっと興味が湧いている、というのが最近の私ですね。

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サービス情報

美術検定 ― 知るほど、みえてくる。
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美術は、「つくる力」だけで生み出されてきたのではなく、「みる力」によって育まれ、伝えられてきた。作品を知り、作家やその時代・社会を知れば、作品からもっとたくさんのことがみえてくる。美術検定は、「知るほど、みえてくる」の体験を通じて、「みる力」のステップアップの機会を提供しています。

試験開催情報

2020年美術検定
2020年美術検定

1~3級オンライン試験:
2020年11月7日(土)・8日(日)開催
申込期間:9月15日(火)~11月2日(月)

4級オンライン試験:通年開催中

対象
・作品や作家、美術史の基本的な流れを知って、美術鑑賞をもっと楽しみたい方
・美術の知識に関する資格として、進学や就職に活かしたい方
・ビジネスシーンでも役立つ教養として、美術の基礎知識を身に付けたい方

合格特典
美術検定を応援する美術館・施設では、合格認定証の提示で特典を提供中
※中村屋サロン美術館では、ポストカード進呈の特典が受けられる

イベント情報

中村屋サロン美術館『コレクション展示』
中村屋サロン美術館
『コレクション展示』

会期:2020年9月12日(土)~12月6日(日)
開館時間:10:30~19:00(最終入館18:40まで)
※2020年10月現在、開館時間変更 10:30~18:00(最終入館17:40まで)
休館日:毎週火曜日
※10/28(水)は展示替えのため休館。但し11/3(火・祝)は開館し翌11/4(水)休館。
入館料:300円
所在地:東京都新宿区新宿3丁目26番13号新宿中村屋ビル3階

プロフィール

和田彩花(わだ あやか)

1994年8月1日生まれ。群馬県出身。アイドル。2009年4月アイドルグループ「スマイレージ」(後に「アンジュルム」に改名)の初期メンバーに選出。リーダーに就任。2010年5月『夢見る15歳』でメジャーデビューを果たし、同年『第52回日本レコード大賞』最優秀新人賞を受賞。2019年6月18日をもって、アンジュルム、およびHello! Projectを卒業。アイドル活動を続ける傍ら、大学院でも学んだ美術にも強い関心を寄せる。特技は美術について話すこと。特に好きな画家は、エドゥアール・マネ。好きな作品は『菫の花束をつけたベルト・モリゾ』。特に好きな(得意な)美術の分野は、西洋近代絵画、現代美術、仏像。趣味は美術に触れること。

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