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君島大空、苦闘の第二作。狂騒と覚醒の狭間で、ひっつかんだ実感

君島大空、苦闘の第二作。狂騒と覚醒の狭間で、ひっつかんだ実感

君島大空『縫層』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:松永つぐみ 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)
2020/11/13

君島大空が、前作『午後の反射光』より約1年半ぶりとなる新作EP『縫層』をリリースした。「縫層(ほうそう)」というのは君島自身が生み出した造語で、彼が今、こうして自分だけの言葉を生み出さなければいけなかったということがまず、この作品に刻まれた彼の、そのヒリヒリとした実感を物語っている。日常の言葉では到底言い表すことができないものがあり、しかし、無言ではいられなかった――そんな、彼が立った「狭間」。その「狭間」の感覚があまりに生々しく表出したのが、この『縫層』という作品なのだ。

それゆえに、君島の内的世界のなかにある夢想を結晶化したような『午後の反射光』とは違った歪さを、本作は持っている。現実と幻の狭間で、時代と時代の狭間で、時間と時間の狭間で、人と人の狭間で、「そうだよ!」と「そうなの?」の狭間で、混乱し、泣き、笑う、「自分」という存在。その混沌のなかに手を突っ込み、ひっつかんだ実感を、音にして、言葉にして、編んでいく。『縫層』は、そうやって作られた作品なのだろう。君島大空は、彼自身の「生」を裏切らない。改めて、すさまじい表現者だと思う。

そしてまた、本作を聴くと思う。君島大空の音楽は純然たる音楽であると同時に、優れた詩である。そして、優れた詩が常にそうであるように、彼の音楽は、「批評」としての強度も持ちえている。だから、この音に、声に、肉体に接したとき、我々は気づくのだ――この音楽を聴く我々もまた、あらゆるものの「狭間」に在るのだと。

本作には、西田修大、新井和輝、石若駿といった「合奏形態」のメンバーも演奏で参加。他者と交わるからこそ浮き彫りになる「自分」もまた、確実にあっただろう。約1年半ぶりの単独インタビューをお送りする。君島大空は、最近愛読しているという北爪満喜の詩集『飛手の空、透ける街』を携えて、取材現場に現れた。

君島大空(きみしま おおぞら)<br>1995年生まれ、日本の音楽家。2014年から活動をはじめる。同年からSoundCloudに自身で作詞 / 作曲 / 編曲 / 演奏 / 歌唱をし、多重録音で制作した音源の公開をはじめる。2020年11月11日にEP『縫層』を発表。ギタリストとして、高井息吹、坂口喜咲、婦人倶楽部、吉澤嘉代子、adieu(上白石萌歌)などのアーティストのライブや録音に参加する一方、劇伴、楽曲提供など様々な分野で活動中。
君島大空(きみしま おおぞら)
1995年生まれ、日本の音楽家。2014年から活動をはじめる。同年からSoundCloudに自身で作詞 / 作曲 / 編曲 / 演奏 / 歌唱をし、多重録音で制作した音源の公開をはじめる。2020年11月11日にEP『縫層』を発表。ギタリストとして、高井息吹、坂口喜咲、婦人倶楽部、吉澤嘉代子、adieu(上白石萌歌)などのアーティストのライブや録音に参加する一方、劇伴、楽曲提供など様々な分野で活動中。 / 関連記事:君島大空『午後の反射光』インタビュー(ページを開く
君島大空『縫層』を聴く(Apple Musicはこちら

多くのリスナーと出会う契機になったデビュー作、『フジロック』への出演以降、君島大空が抱いた窮屈さと脳裏にこびりついた「縫層」という造語

―新作EPのタイトルである「縫層」というのは、君島さんによる造語だそうですね。言葉によって世界を作るというのは、非常に難しいことだと思うんです。言葉とは、やはり生活のものなので。音の場合、ある単音を鳴らすだけで世界を作りえると思うのですが、言葉だと、それがどうしても難しい。なので、人は詩を書いたり、欲したりするのだと思うのですが。

君島:ええ、ええ。

―君島さんが今回、作品に冠するために言葉を作らなければいけなかったのは、非常に象徴的なことだと思ったんです。日常にある言葉では到底説明できないことが君島さんのなかにあり、しかし、無言ではいられなかった。そういう「狭間」から生まれたんだろうと思ったんです、この「縫層」という言葉は。

君島:そうですね、いろんなものの狭間に自分がいるような感覚が、去年の夏の終わり頃からありました。ファースト(『午後の反射光』)を出して、『フジロック』に出たりしたあとくらいから、この「縫層」という言葉がずっと自分のなかにあって。まず響きがあり、そこから言葉になっていったんですけど。

君島大空

君島:縫われた層……人の手によって作られた層のようなものがいろんなところにありすぎて、すごく窮屈だなっていう感覚が、その頃の自分にはあったんです。なにかを作りたい、作らなければいけないと思いながらも、去年の夏や秋あたりは、時間的にもそれができなくて。そういうときに降ってきたというか、こびりついてきた言葉でした。自分でも知らなかった言葉だけど、自分のなかにたしかにある言葉だったというか。

―どんなところに「層」の存在を感じていたのですか?

君島:たとえばSNSにも言葉は氾濫しているなと思うんですけど、ネットを介していろんなものと繋がっている、それだけで、現実にはありえない次元が複雑なレイヤーを作りながら、普通に、自分のすぐそばにあったりする。そういうことを無意識に受け入れながら生きていることの不自然さが、際立って見えすぎてしまったんだと思います。そのときはそこに対して、自分はなにもアクションができなかったんです。ただ、やられていくだけ……そんな感覚があったんです。

「縫層」というのは、低気圧のようなイメージです。ずっと瞼の上から上空までの余白を覆っている雲があって、暴れながらも上に進んで、その雲をやっと突き抜けたと思ったら、まだ空は全然晴れていなくて、むしろ、よりすごい厚さの暗雲がそこにはあった。それは人の手には負えないほどの層なんだけど、でも、多分それは人が内省で作り上げてしまう層でもあって。

君島:ひとりの人間の思い込みや不安、そういうものが大きくさせてしまった雲のようなもの。それが、「縫層」なんじゃないか? 今言ったことは、このEPを作りながら段々と言葉になっていったことなんですけど。ずっと、「これは一体なんだろう?」と思いながら、作っていったような気がします。

―作る前から見えていたものというよりは、作りながらわかっていったことなんですね。

君島:最初は、「ファーストの続きを作ろう」という気持ちがあって。改めて振り返ったとき、『午後の反射光』という作品は、作品を通してずっとひと続きの光景が鳴っているような感じがするんですよね。そういうものが、僕は一番好きなんです。

この間、夢を見たんですけど、日本とは思えないような荒野で、ずっと遠くまで一本道が続いていて、だけど、50メートルごとに季節が違うっていう夢で。『午後の反射光』も、その長い一本道のようなものが貫いている作品だったと思うんです。あそこに入っていた“午後の反射光”という曲は、本当はもっと長かったんですけど、それをまとめて、あの長さになったんです。

君島大空『午後の反射光』を聴く(Apple Musicはこちら

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リリース情報

君島大空『縫層』
君島大空
『縫層』(CD)

2020年11月11日(水)発売
価格:2,200円(税込)
APLS-2010

1. 旅
2. 傘の中の手
3. 笑止
4. 散瞳
5. 火傷に雨
6. 縫層
7. 花曇

プロフィール

君島大空(きみしま おおぞら)

1995年生まれ、日本の音楽家。2014年から活動をはじめる。同年からSoundCloudに自身で作詞 / 作曲 / 編曲 / 演奏 / 歌唱をし、多重録音で制作した音源の公開をはじめる。2019年3月13日、1st EP『午後の反射光』を発表。4月には初の合奏形態でのライブを敢行。2019年7月5日、1stシングル『散瞳/花曇』を発表。2019年7月27日、『FUJI ROCK FESTIVAL'19』 ROOKIE A GO-GOに合奏形態で出演。同年11月には合奏形態で初のツアーを敢行。2020年1月、Eテレ・NHKドキュメンタリー『no art, no life』の主題曲に起用。2020年7月24日、2ndシングル『火傷に雨』を、同年11月11日にはEP『縫層』を発表。ギタリストとして、高井息吹、坂口喜咲、婦人倶楽部、吉澤嘉代子、adieu(上白石萌歌)などのアーティストのライブや録音に参加する一方、劇伴、楽曲提供など様々な分野で活動中。

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