インタビュー

綾野剛×常田大希 変化を恐れず、自らの聖域を大切に温める

綾野剛×常田大希 変化を恐れず、自らの聖域を大切に温める

インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:垂水佳菜 編集:川浦慧、久野剛士(CINRA.NET編集部)

メジャーとアンダーグラウンド。日本と海外。「越境」の表現者たち

―(笑)。先ほど、綾野さんは常田さんを「近い存在」とおっしゃっていましたけど、端から見ていても、おふたりに漂う空気感は似ているような気がして。たとえば、おふたり共、オーバーグラウンドとアンダーグラウンドを越境できる存在感がある表現者だと思うんです。そういう部分は、似ているところなのかなと。

常田:うん、うん。

綾野:そうかもしれないですね。そもそも、「天才」って創作できないんですよね。「天才」を創ることは。でも、「才能」は創作することができる。僕は、役者を始めた当初から自分には才能がないと思っているから、とにかく才能を自分で創っていくしかなかった。

そのなかで、いろんなジャンル、いろんな世界をシェアするっていうことが自分にとって生命線だった。ゴールデンタイムのドラマもやるし、深夜ドラマもやるし、メジャー映画の主役もやるし、もっと作家性の強いものや、単館系の作品もやる。ごく稀だけど、舞台もやる。

そうやって、いろんな世界をシェアしていくことを、自分がまず誰よりも実践していく。そして、そこで得たものをまた違う人とシェアしていく。そういうシェアの意識は、昔からずっとあったように思います。

左から:綾野剛、常田大希

常田:シェアって、「与える」だけじゃなくて相互的な話だと思うけど、俺にとって、特にmillennium paradeはそれに近い感覚でやっているものだと思う。俺も綾野さんも、今でこそメジャーな位置にいますけど、そこだけの価値観で生きているわけではないし、いろんなジャンルがあったり、いろんな人がいるなかで成り立っているものだから。

綾野:millennium paradeはサンクチュアリだよね、大希にとって。

常田:そうだね、聖域。数字も気にしないし、一般的にわかりやすいバンドサウンドである必要もない……そういう腹の括り方をしている場所。やっぱり、自分がやっていることを、自分が一番かっこいいと思いたいじゃない?

俺はそもそも持っている音楽的な語法がJ-POP的なアプローチとは違うし、出てきたバックボーンも違うけど、そういうなかでもmillennium paradeは、自分が一番かっこいいと思う価値観だけで形成されているかな。

常田大希
millennium parade“Philip”MV

綾野:2018年に中国で『破陣子』(ドン・ティエンイー監督、綾野剛主演)という映画に出演したのですが、中国で撮影をしていた時期に、ずっと僕を支えてくれたのがKing GnuやSrv.Vinciの音楽だったんです。『破陣子』のヒロイン役だったソン・ジアも“Vinyl”が気に入って、ずっと聴いていて。

常田:嬉しい。

King Gnu“Vinyl”MV

綾野:King Gnuが作る作品も、ちゃんと世界に届いている。日本のアーティストたちは素晴らしいものをたくさん作っているし、日本の俳優も上手い人が多いから、世界でも闘える。この先、世界で闘う勇気を持てる人がどれほど増えてくるか、そういうことをどれほど考えてサポートするかっていうことが大事だと思うんだけど。

―日本の作家や作品を世界にどう提示していくのかという話だと思うのですが、そういったことは、綾野さんはよく考えられますか?

綾野:もちろん、僕が中国の映画で主演をしたように、個人で海外に出ていくことは刺激的だし魅力的なことではあったけど、それだけでは退屈だなと思います。この先は、僕たちが出て行くのではなく、日本に海外の人たちを呼び込めるようにならないとダメですね。

綾野剛

綾野:たとえば、日本のドラマだって、中国で見られている。中国に行っても僕は「サクラ、サクラ」って言われますから(綾野が主演を務めたドラマ『コウノドリ』の主人公、鴻鳥サクラのこと)。熱心に日本の作品を見てくれているんだと考えると、もっと「国際」を意識して作品を作らないといけない。日本の作品も世界に波及しているし、それがいいものであればあるほど、海外から日本に人が入ってくるようにもなる。そういうことは起こりえると思うんです。「日本で仕事をしたい」と思うクリエイターたちを呼び込んでいくようなことが、今後は重要だなと思います。

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作品情報

『ヤクザと家族 The Family』
『ヤクザと家族 The Family』

2021年公開1月29日(金)から公開

監督・脚本:藤井道人
音楽:岩代太郎
主題歌:millennium parade“FAMILIA”
出演:
綾野剛
尾野真千子
北村有起哉
市原隼人
磯村勇斗
菅田俊
康すおん
二ノ宮隆太郎
駿河太郎
岩松了
豊原功補
寺島しのぶ
舘ひろし
配給:スターサンズ / KADOKAWA

リリース情報

millennium parade
『THE MILLENNIUM PARADE』(CD)

2021年2月10日(水)発売
価格:3,300円(税込)
BVCL-1136

1. Hyakki Yagyō
2. Fly with me(Netflix Original『攻殻機動隊 SAC_2045』主題歌)
3. Bon Dance
4. Trepanation
5. Deadbody
6. Plankton
7. lost and found(『DIOR and RIMOWA』コレクションムービーテーマ音楽)
8. matsuri no ato
9. 2992(NHKスペシャル『2030 未来への分岐点』テーマ音楽)
10. TOKYO CHAOTIC!!!
11. Philip(『adidas CASUAL Collection 2020 Fall/Winter』)
12. Fireworks and Flying Sparks
13. The Coffin
14. FAMILIA(綾野剛主演映画『ヤクザと家族 The Family』主題歌)

[Blu-ray](完全生産限定盤・初回生産限定盤のみ)
millennium parade Live 2019@新木場Studio Coastから4曲(Fly with me, Slumberland, Plankton, lost and found)&ミュージックビデオを収録。

プロフィール

綾野剛(あやの ごう)

俳優。1982年1月26日生まれ。2003年俳優デビュー。2011年NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』で人気を博す。主演映画『そこのみにて光輝く』が『第38回モントリオール世界映画祭』にて「最優秀監督賞」を受賞、『2015年米国アカデミー賞外国語部門』の日本代表作品にも選出され、『第88回キネマ旬報ベスト・テン』『第69回毎日映画コンクール』など数々の映画賞で「主演男優賞」を受賞している。2021年、主演映画『ヤクザと家族 The Family』が、1月29日に公開。そのほか、4月2日に主演作『ホムンクルス』が日本限定で劇場公開、その後、Netflixで全世界配信の予定。

常田大希(つねた だいき)

バンド「King Gnu」のメンバーとして活動するほか、音楽だけでなく映像やビジュアル、空間演出などトータルなクリエイティブを行うコレクティブであるPERIMETRON及び、海外に向けた活動を志向する音楽プロジェクトmillennium paradeとして活動。2021年2月10日、millennium paradeの1stアルバム『THE MILLENNIUM PARADE』をリリースする。

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