インタビュー

GEZANマヒト×Essential Store田上 人を繋ぐ「モノ」の力

GEZANマヒト×Essential Store田上 人を繋ぐ「モノ」の力

テキスト・編集
矢島大地
撮影:水谷太郎

いろんな人がいろんな時代に生きていたこと、いろんな人がいろんな営みをしてたこと……人の存在に思いを馳せる想像力は、モノが受け継いできた記憶から受け取ることができると思ってるんですよね。(田上)

田上:買い付けを10年以上やってきて、「何かわからないけど」っていう感覚の中に宿るパワーに対する確信が芽生えてきて。

これは少し話が大きくなるけど、人間の可能性って何やろなって考えた時に——たとえば僕が意識だけを上に飛ばして、自分がマヒトくんと話している様子を水槽を眺めるように見ることが可能やと思ってて。で、アンティークとかを通して、人にもその感覚を生むことができるんじゃないかと思うんですよ。たとえばどこの誰のものかもわからない古い写真を見て「この景色すごいな!」って思った瞬間、意識は景色の中に飛ばすことができるじゃないですか。そういう意味での想像とか、モノを通じて自分の感覚を震わせるっていうことが今こそ大事なんじゃないかなと思ってて。

「Silent Auction」展示物
「Silent Auction」展示物

マヒト:そうですよね。

田上:実感が薄れていく今こそ、より具体的な想像力が人の可能性になっていく。アンティークとかを通して、普段見ているものを違う角度で見られるようになったら、さっき言ってた幽体離脱の感覚みたいな感覚も生まれてくるはずで。いろんな人がいろんな時代に生きて、いろんな営みがあったこと……人の存在に思いを馳せる想像力は、モノが受け継いできた記憶から受け取ることができるんですよね。

マヒト:一般の会社員の10年分の小遣いを1か月で使って買い付けしてるって言ってたじゃないですか。それって、一生かかって一度出会えるかどうかの宝物に連続して出会っているトランスな状態だと思うんです。で、その旅の中で出会えるモノにもいろんな人の生きた跡が残ってるわけですよね。だから拓哉くんは、ある意味で「記憶を売ってる」というか、媒介者っぽい感覚があるんでしょうね。

俺も、モノ自体が持ってる記憶が絶対あると思うんですよ。たとえば墓石も言ってみればただの石ですよね。だけど、いろんな人が石の前で祈ってきた分、多くの想いが石に宿っていって、ただの石じゃない存在として概念が変わっていく。じゃあ石以上のモノになった存在の前を誰かが歩いたら、違う波動と違う波動がフィーチャリングしてオバケみたいなものを感じたり、石以上の情報を拾ったりっていうことが起こり得ると思うんですよ。それと同じで、骨董も「人が生きていたことの記憶」なわけじゃないですか。

田上:まさにそう。17歳くらいの時に西成の泥棒市に行ったら、スキンヘッドで作務衣を着た仙人みたいなおっちゃんが話しかけてきて。「兄ちゃん、ええ目してるから骨董やったらええわ」って言われたのよ。「モノには湯気があるから、その湯気を感じながら骨董やったらええわ」って言われたのが心にバシーンときたんですよ。モノに湯気があるとか、何かが宿ってるとか、そういう概念自体が衝撃で。

マヒト:目に見えないものの存在を認めてもいいんだっていう話ですよね。

マヒトゥ・ザ・ピーポー

田上:そうそう。価値観とか感覚への概念が変われば、感じることと見えることの間に線がなくなっていくというか。……で、買い物が終わってから仙人のおっちゃんに会った場所に戻っても、どこを見渡してもおらんようになってて。

マヒト:妖精じゃん(笑)。モノの湯気の話は、俺が音楽をやってる時に感じてることと近くて。自分が声とかギターとかベースにこだわって、それを生で感じることをライブと呼んでるのは、ちゃんと存在していることを感じたいからなんですよね。もっと言えば、音楽っていうのは俺が集めてきたメロディや言葉が持ってる記憶を残してるっていうことで。そしたら今度は、歌が人の記憶になって、人それぞれのストーリーになっていくわけだよね。そういう出会いの連鎖とか繋がりに俺は救われてきたなあって改めて思うんですよ。

たとえばパソコン上で作られた音楽は、音を限りなく情報として捉えているもので。打ち込みでギターを鳴らす音楽も、情報としてなら精密なんだろうけど、情報以上に、その場で呼吸して同じ振動の中で存在しているっていうことを感じられるから俺は音楽をやってるんです。

田上:それはやっぱり、コロナ禍で人と人の距離が変化したからこそハッキリしたこと?

マヒト:それはあると思う。きっと、一生パソコンの前でバーチャルな世界を生きる人もいるとは思うんですよ。自粛期間中に、パソコンの前だけで何でもできるじゃんって感じた人も多いだろうし。

だけどさ、どんなにテレワーク最高だって感じてる人でも、人が呼吸して存在してるっていう圧倒的な事実に触れられない違和感には気づいたと思うんだよね。で、その違和感こそが次の時代へのヒントな気がしていて。もしかしたら1年後には世の中が元通りになるかもしれないし、あるいは科学ばかり進歩して、それが未来だよねってことになるかもしれないけど……でも、「情報だけが加速すること」と「確かな体温への実感」の間にある違和感をヒントにしないと前には進めないと思う。

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プロフィール

マヒトゥ・ザ・ピーポー

2009年、GEZANを大阪にて結成。バンドのボーカル・作詞作曲を担う。自主レーベル「十三月」を主宰し、野外フェス『全感覚祭』も開催。2018年に『Silence Will Speak』をリリースし、2019年6月には、同作のレコーディングのために訪れたアメリカでのツアーを追ったドキュメンタリー映画『Tribe Called Discord:Documentary of GEZAN』が公開された。2019年10月に開催予定だった主宰フェス『全感覚祭』東京編は台風直撃の影響で中止となったが、中止発表から3日というスピードで渋谷での開催に振り替えられた。1月29日に『狂(KLUE)』をリリース。マヒト個人もソロワークを展開し、青葉市子とのユニット・NUUAMM、文筆業など、多方面で活動中。

田上拓哉(たのうえ たくや)

大阪市福島区の「Essential Store」オーナー。本職ではアパレルメーカーを運営しながら、夏と冬の年2回、期間限定で「Essential Store」を開催する。古道具、アンティークを主として、アパレルなども取り扱う。併設ギャラリーで不定期で主催する「Silent Auction」は、入札用紙だけで価格をつけられる仕組みによって、モノの価値を再考する場所として話題を呼んでいる。

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