特集 PR

くるり・岸田繁と君島大空の共鳴するところ 歌と言葉とギターの話

くるり・岸田繁と君島大空の共鳴するところ 歌と言葉とギターの話

『FUJI & SUN '21』
インタビュー・テキスト
大石始
撮影:垂水佳菜 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

目の前に観客のいるライブの現場から、遠ざかることになってしまった2020年を経て

―コロナ禍で野外フェスが軒並み中止になり、くるりが京都で開催している『京都音楽博覧会』(以下、『音博』)は先ごろオンラインで開催されました。やってみていかがでしたか。

岸田:こういうときだからこそいつもと違うことをやろうと思って、すごく身になったこともありました。ただ、普通にやりたいけどね(笑)。知恵を振り絞ってやっていくしかないですよね。

―君島さんも配信ライブを何度もやってますね。

君島:そうですね。でも、ぼくはめちゃくちゃ苦手です。どうにか自分を騙してやってる感じ。お客さんがいないのは、ちょっと嘘をついてる感じがしちゃうんです。

岸田:魂のやりとりがないからね。

君島:そうですね。行き場がないものをずっと暗闇に投げ続けている感じというか。

岸田:キャッチャーがいない感じなんよね。ナックルボールとか投げているのに、そのまま誰にもキャッチされずにボールが転がっていく感じ。5Gの電波の向こう側にまで届く腕力が欲しい(笑)。

―そうやってひたすらボールを投げていくなかで、腕力が上がったような感覚もあるんでしょうか。

岸田:いやー、まったくないですね。基本、演奏って誰かに観てもらうためのものであって、配信のライブと通常のライブはやっぱり別ものなんですよ。むしろレコーディングに近いというか。

君島:そうですよね。

君島大空のバンドセットである「合奏形態」で2020年12月に実施した配信ライブの映像。バンドメンバーは石若駿(Dr)、新井和輝(Ba)、西田修大(Gt)。

―観る側もコロナ以前と以降でフェスに対する感覚が大きく違うと思うんですよ。ひとつの場所に集まること自体に喜びがあるわけで、いまフェスに行けたら、会場に到着しただけで泣いてしまいそうな気もする(笑)。

君島:お客さんを入れたライブもちょこちょこできるようになってきてますけど、そのたびに思うのは、自分でもライブの感覚を忘れているということなんです。

以前は無意識に反応できていた身体や心の、ほんの小さな挙動を忘れている。そういうものを使ってお客さんとのやりとりをもっと意識の深いところでやれていたと思う。通常のライブでさえそんな感覚だから、フェスとなったらよりそういう感覚が強くなるんじゃないかなと思います。

岸田:「この感覚、忘れている」ってときって、あとから身体が痛くなったりせえへん?

君島:しますね。普段痛くならないところが痛くなったり。神経痛みたいな感覚。

岸田:ぼくはもう2年近くお客さんを入れてライブをやってないんですよね。お客さんから最初にレスポンスがあったとき、どんな感じやった?

君島:没入感があんまり感じられなかったかもしれない。バンドで演奏するのはめちゃくちゃ楽しいんですけど、どこかに俯瞰している自分がいて、映画を見ているような感じ。

岸田:なるほどね。自分はまだやってないから想像つかないところもあるんやけど……こんなに人前で演奏していない時期が続くのは初めてのことやし、お客さんの前でどうやって演奏していたのか、完全に忘れていますね。突然やってできるのかどうかわからへんけど……変な球を投げそう(笑)。

左から:岸田繁、君島大空

―じゃあ、お客さんの前でやるのは『FUJI & SUN』が最初?

岸田:そうですね。いままでだったらライブの期間が空いてもたかだか数か月。久々だから緊張するようなことはあっても、これだけ期間が空くことはないですからね。初めてライブをやるくらいの感覚ですよ。

「君島くんの音楽は、移動する景色と不思議と合うところがあって」(岸田)

―『FUJI & SUN』では開催地、静岡の地域性が意識されていますよね。地元の祭りのお囃子チームが出演したり、ローカルなクラブシーンを紹介するトークセッションが行われる予定です。『音博』ではそうした地域性についてどう意識されているのでしょうか。

岸田:場所を借りている以上、できるだけ地元の人たちに迷惑をかけないようにしようとは考えています。

『音博』は町おこしみたいなこととはあまり関係がないんだけど、続けているうちに、会場の周囲に水族館ができたり鉄道博物館ができたり、すごく賑わいのあるエリアになったんですよ。街の発展と一緒にいさせてもらっているような、そんな感覚があります。

―町が発展していく際、音楽が重要な要素になっているのは大切なことだと思うんですよね。

岸田:そうですね。こちらとしては「やかましくてすいません」という感覚ではあるんですけどね。

―今回はいろんなアーティストが出ますが、気になる方はいますか。

君島:気になる方ばっかりなんですよ(笑)。ぼくが音楽をはじめる前から聴いてきた人がいっぱい出るわけで、高校生の自分に教えてあげたいです。「お前、くるりと一緒にやる日が来るんだぞ」って(笑)。ちょっと不思議な感覚です。

岸田:ここにアル・ディ・メオラがいたら完璧だったのに(笑)(註:超絶技巧で知られるジャズ~フュージョンのギタリスト)。

君島:そうですね、渡辺香津美さんとのデュオで(笑)。くるりのライブでは(石若)駿さんも叩きますよね?

岸田:うん、叩く。

君島:他のバンドで叩いている駿さんを、ジャズ以外のライブであまり観たことがないんですよ。それが楽しみですね。

ドラムを石若駿が務めた、くるりのライブ映像

―先日、民謡クルセイダーズのメンバーに取材した際は「君島くんが気になる」と言ってましたね。

君島:民クルは福生(東京都)のバンドなので、地元が近いんですよ。高校生のとき福生のライブハウスのセッションに通っていたんですけど、いままで一緒になったことがないんですよね。

―岸田さんはいかがですか。

岸田:そうですねえ……好きなミュージシャンはいっぱいいるんですけど、リップサービスではなく、君島くんが一番気になってますね。ライブを観たこともないので。

君島:めちゃくちゃ緊張してきました(笑)。

岸田:ギターをどう弾いているのか、間近で観たいと思っています。あとね、さっきも言ったように君島くんの新しい歌を聴きながら新幹線に乗ってきたわけだけど、君島くんの音楽ってインドアな音楽だと思ってたのね。

君島:はい。

岸田:自分のなかの引きこもり成分にいいふりかけをかけてくれる音楽というか。でも、旅の音楽だと思ったんですよ。

音楽的な構造としては、君島くんの音楽は言葉や音が螺旋のようにつながっていると思ってて、それは移動する景色と不思議と合うところがあってね。いい空気のなかで君島くんの音に触れてほしいですよね。

『FUJI & SUN ’21』ロゴ
『FUJI & SUN ’21』ロゴ(サイトで見る
Page 4
前へ

イベント情報

『FUJI & SUN '21』
『FUJI & SUN '21』

2021年5月15日(土)、5月16日(日)
会場:静岡県 富士山こどもの国

5月15日出演:
∈Y∋(DJ)
青葉市子
悪魔の沼(DJ)
折坂悠太
君島大空
Kotsu(DJ)
寺尾紗穂
nutsman(DJ)
VIDEOTAPEMUSIC(DJ SET)
Mars89(DJ)
民謡クルセイダーズ
Ramza
吉原祇園太鼓セッションズ
くるり

5月16日出演:
Akie(DJ)
OLAibi+KOM_I
カネコアヤノ
GOMA
COMPUMA(DJ)
SUGAI KEN(DJ)
TENDRE
TOP DOCA(DJ)
ハンバート ハンバート
マヒトゥ・ザ・ピーポー
冥丁
森山直太朗
U-zhaan
林立夫 with 大貫妙子
人力チャレンジ応援部
阿部雅龍
竹内洋岳

出店:
富士市presents 富士市ご当地グルメ
Pizzeria L'alba di Napoli
竹の子
いちご実 加藤農園
PIPS ピップス
らく
藤太郎
東京・下北沢名物!ニックンロール
2-3-4SHOKUDO+オトワファーム
HUG COFFEE

参加:
STARTLE
armadillo leather works
ブンブク屋
Damassy
舎鳥木-yadorigi-

プロフィール

岸田繁(きしだ しげる)

作曲家 / くるり / 京都精華大学特任准教授。1976年4月27日生まれ。1996年9月頃、立命館大学(京都市北区)の音楽サークル「ロック・コミューン」にてくるりを結成。古今東西さまざまな音楽に影響されながら、旅を続けるロックバンドとして活動する。2021年4月28日、ニューアルバム『天才の愛』をリリース。

君島大空(きみしま おおぞら)

1995年生まれ日本の音楽家。ギタリスト。2014年から活動をはじめる。同年からSoundCloudに自身で作詞 / 作曲 / 編曲 / 演奏 / 歌唱をし多重録音で制作した音源の公開をはじめる。2019年3月13日、1st EP『午後の反射光』を発表。2019年7月5日、1stシングル『散瞳/花曇』を発表。2019年7月27日『FUJI ROCK FESTIVAL '19 ROOKIE A GO-GO』に合奏形態で出演。11月には合奏形態で初のツアーを敢行。2020年1月、Eテレ NHKドキュメンタリー『no art, no life』の主題曲に起用。同年7月24日、2ndシングル『火傷に雨』を発表。2021年4月21日、3rd EP『袖の汀』を発表。ギタリストとして吉澤嘉代子、高井息吹、鬼束ちひろ、adieu(上白石萌歌)などのアーティストのライブや録音に参加する一方、楽曲提供などさまざまな分野で活動中。

関連チケット情報

2021年5月15日(土)〜5月16日(日)
FUJI & SUN’21
会場:富士山こどもの国(静岡県)

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

あらかじめ決められた恋人たちへ“日々feat.アフロ”

何かを我慢することに慣れすぎて忘れてしまいそうになっている「感情」を、たった10分でこじ開けてしまう魔法のようなミュージックビデオ。現在地を確かめながらも、徐々に感情を回転させていくアフロの言葉とあら恋の音。人を傷つけるのではなく、慈しみ輝かせるためのエモーションが天井知らずの勢いで駆け上がっていった先に待ち構えている景色が、普段とは違ったものに見える。これが芸術の力だと言わんばかりに、潔く堂々と振り切っていて気持ちがいい。柴田剛監督のもと、タイコウクニヨシの写真と佐伯龍蔵の映像にも注目。(柏井)

  1. 星野源、ドラマ『着飾る恋には理由があって』主題歌“不思議”ジャケ公開 1

    星野源、ドラマ『着飾る恋には理由があって』主題歌“不思議”ジャケ公開

  2. くるり・岸田繁と君島大空の共鳴するところ 歌と言葉とギターの話 2

    くるり・岸田繁と君島大空の共鳴するところ 歌と言葉とギターの話

  3. Honda新型VEZELのCMに井浦新、玉城ティナ、Licaxxxら 楽曲は藤井 風が担当 3

    Honda新型VEZELのCMに井浦新、玉城ティナ、Licaxxxら 楽曲は藤井 風が担当

  4. Puzzle Projectとは?YOASOBIの仕掛け人と3人の10代が語る 4

    Puzzle Projectとは?YOASOBIの仕掛け人と3人の10代が語る

  5. 君島大空が照らす、生の暗がり 明日を繋ぐよう裸の音で語りかける 5

    君島大空が照らす、生の暗がり 明日を繋ぐよう裸の音で語りかける

  6. 今泉力哉と根本宗子が決めたこと ちゃんと「面倒くさい人」になる 6

    今泉力哉と根本宗子が決めたこと ちゃんと「面倒くさい人」になる

  7. パソコン音楽クラブが語る「生活」の音 非日常下で見つめた自然 7

    パソコン音楽クラブが語る「生活」の音 非日常下で見つめた自然

  8. サブスク以降のバンド活動 97年生まれ、Subway Daydreamの場合 8

    サブスク以降のバンド活動 97年生まれ、Subway Daydreamの場合

  9. Huluの映像クリエイター発掘&育成企画『HU35』発足の理由とは? Pが語る 9

    Huluの映像クリエイター発掘&育成企画『HU35』発足の理由とは? Pが語る

  10. 「日本が滅びても残る芸術を作りたい」平田オリザ×金森穣対談 10

    「日本が滅びても残る芸術を作りたい」平田オリザ×金森穣対談