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ノスタルジーを胸に前に進む。音楽家HANCEが迎えた40代の現在地

ノスタルジーを胸に前に進む。音楽家HANCEが迎えた40代の現在地

HANCE
インタビュー・テキスト
飯嶋藍子
編集:後藤美波(CINRA.NET編集部)
2021/05/26

HANCEの活動は「終活」。欲張っていいし、やりたいことは全部選んでいい

―HANCEさんがこのアルバムでつくられているのは、いろんな感情や思いがあるという現実を受け止めたうえで、先に進むための音楽という感じですね。

HANCE:そうですね。大人になるって言っても、図体が大きくなるだけだったりするじゃないですか(笑)。子どものときと比べて本質的なことは何も変わっていない。

でも大人であるがゆえの大変さ、子どもにはない辛さ、人に言えない思いを抱えていて。日常でそれを全部解き放つことはできなくても、ぼくの音楽を聴いていただくときに一瞬でもそういうものから解放されたり、共感できる気持ちが芽生えたりしたら、やっていてよかったなと思います。

HANCE “マーブルの旅人“MV

―だから「大人のための」っていうことなんですね。

HANCE:はい。昔の曲を聴き直すと、若かったからこそ言い切れた言葉や、できた表現があると思います。いまは歳を重ねて感覚が変わって、そういうものはつくれないと思うし、そもそもつくりたいと思わなくなった。やっぱりいまは、いまの感覚でつくりたいという気持ちが強いです。

HANCE

―そう考えてみると、HANCEさんのいまの感覚、つまりHANCEさんと同年代の方が共感するような曲を歌う「新人」ってたしかに思い浮かばないかもしれないです。

HANCE:なんでいないんだろう? って思うんですよ。料理人の世界だと、20代、30代で修行して、やりたいことがだんだんわかってきて、40代で独立する方っていっぱいいらっしゃるじゃないですか。その料理人に「なんで40代になってお店を開いたんですか?」とは誰も聞かないですよね。

音楽業界って、構造上若くないと投資を回収しづらいのかもしれないですが、だからといって、歳をとっているからいい音楽をつくれないとか、若い人よりも劣っているっていうことではなくて。

ぼく自身は20代の頃よりもいろんなことを経験して感覚が研ぎ澄まされたぶん、いいものを出せるという気持ちが強くなってきているんです。いまは人間100歳まで生きると言われているから、30代でも40代でも全然若いと思うし、チャレンジできる世の中になったほうが、若い人から見ても希望があるんじゃないかと思います。

HANCE

―でも、20代の頃は事務所をやめたあとも音楽活動を続けていたとはいえ、音楽業界には戻らなかったわけですよね。それはなぜでしょう?

HANCE:当時は、音楽を諦めたというより、ビジネスもやってみたかったという感じです。欲張っていいし、やりたいことは全部選んでいいと思っていて。いまも仕事が楽しいですし、やめるつもりはないので仕事もやります。でも音楽も一生懸命やりたい。海外旅行も好きなので、全部同じ比率でやっていきたいです。

HANCE

―なぜだかわからないですけど、あまり欲張ってはいけないという感覚を持っている人って少なくないと思います。

HANCE:たしかに。どう生きていくかということにつながるのかもしれないですけど、周りがどうかではなく、自分がどうしている状態がいちばん心地いいか、わくわくするかが大事だと思います。ぼくの心地いい状態というのは、少なくとも音楽だけをやっていくことではなかった。

多くの方が欲張れない理由って、失敗したときに人生がダメになってしまうんじゃないかというリスクとの天秤だと思うんですよ。こういう言い方するのはよくないかもしれないけど、ぼくは本業があるので、音楽で売れなければならないというプレッシャーはあまり意識していません。仕事も音楽も全部楽しんで、一生懸命取り組みながら、それぞれの活動が互いにいい影響を与えている気がしています。ぼく、仕事って「蚊」みたいなものだと思ってるんですよ。

―蚊ですか?

HANCE:そう、飛んでる蚊。蚊って明るいところに集まるじゃないですか。人も同じで、楽しいことをやっている人のところに人が集まって、人がいるからお金が集まる、つまり仕事になっていくと思います。そうなると、自分がいちばんいい状態でいることが、生活の安定にもつながるんじゃないかなと。そういう意味でも、自分のバランスを取るためにはぼくにとっては全部が大事なものですね。

HANCE

―HANCEさんは、すごく自由に40代を謳歌されているなと感じたのですが、歳を重ねることは怖くはなかったですか?

HANCE:若いときはものすごく怖かったです。ぼくの母は40代で亡くなっていて、がん家系でわりと早くに親戚が亡くなったりもしているので、40超えたらいつどこで死んでもおかしくないという感覚があって。

死に対しての怖さと、それでも生きていかないといけないという恐怖心がありました。それに昔は40歳なんておじさんだし、もう何もやることないんだろうなと思っていましたよ。

―実際なってみるとどうですか?

HANCE:20代の頃に描いたようなネガティブな感覚を持って暮らしてはいないです。歳を重ねていくなかで、だんだんと感情や感覚に対して素直だった子どもの頃のような状態に戻っていっているんじゃないかとも思うんです。

だから楽観的すぎるのかもしれないですが、いまは歳を重ねていくことで、この先もっと楽になるんだろうなと思っています。ぼくにとってHANCEの活動って終活なんですよ。仮に明日死ぬとして、何をやっておきたかったか考えて、それをやっていく。だからすごく自由なんです。

HANCE“SMOKE”MV

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リリース情報

HANCE『between the night』
HANCE
『between the night』

2021年5月26日(水)配信

1. 序章
2. 夜と嘘
3. SMOKE
4. マーブルの旅人
5. Suzy
6. COLOR
7. escape
8. SUNNY
9. Making Shadow
10. バレンシアの空
11. ミッドナイト・イン・カフェ
12. Rain

プロフィール

HANCE(はんす)

2020年9月、1stシングル『夜と嘘』でデビュー。デビュー曲『夜と嘘』は3ヶ月でYouTubeで100万再生を記録。台湾のiTunes Store・R&Bソウルトップソングで6位。Apple Music R&B/ソウルトップミュージックビデオランキングで、モンゴルで2位、ボリビアで5位にチャートイン。2ndシングル『バレンシアの空』はキルギスタンのJ-POPチャートで1位、マカオ、アルメニアで4位。4thシングル『Rain』はボリビア、アルメニアのJ-POPチャートで2位、4位を記録。その他、カザフスタン、ウクライナ、香港なども続き、急速に海外リスナーを獲得している。サウンドプロデュースは、元ピチカートファイブの野宮真貴のツアーサポート、中島美嘉、青木カレン等、レコーディング参加で活躍する石垣健太郎が担当。ソウル、フォーク、ラテン、ジャズなど、グローバルな質感をミニマルなアコースティックサウンドにブレンド。今後の活躍が注目されるシンガーソングライター。2021年5月26日、待望のファーストアルバム『between the night』をリリース。

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